アメリカで多くのギタリストが読んでいる雑誌Premier Guitarの 2008年8月号に載った"BB Plus"のレビューの和訳です。
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BB Plus は万能でギミック(仕掛け)などないペダルである
批評: エキゾティック・エフェクツ BB Plus クリス・バーガス著 <By Chris Burgess>
以前エキゾティック・エフェクツのAC Plusの批評をした際には、感銘のあまりペダルボードに足す事となった。自分はオーバードライブのかかった真空管アンプの音が好きだか、テレキャスターのシングルコイル・ピックアップが鳴らす独特の音質も好きだ。エキゾティック・エフェクツにギターを挿すまでは、ペダルボードをバイパスしない限り、両方の要素を楽しむ事が可能とは考えもしなかった。
AC Plusは間違いなく、今まで自分が使った中で最も透明で、オーガニックなサウンドのブースター/オーバードライブだ。 自分の機材から出される、苦労を重ねて設定した音を、その複雑な音調を損ねることなく増大してくれる。そしてその万能さ故に今はステージ機材の要だ。
そして、全く新たにトーンの可能性を広げた、BB Plusが発表された。BB Plusは名高いBB preampを元にしている。BB preampは、より集中したアタック、よりハーモニックが豊かなリードトーン、よりタイトで、そして「歌う」サステインを生み出す。BB Plusは更にアグレッシブで、信号に厚みを足してくれる。そして、ゲインの為に複雑な音調が犠牲になることがない。
エキゾティック・エフェクツの技術者達は、一流のエフェクト製作者というよりアルケミスト(錬金術者)に近いとさえ感じる。それは彼等が、我々バイヤーがシグナル・チェインに足す「適度な」ものを探し求める際に直面するジレンマを巧みに解決しているからだ:素晴らしいサウンドの物が欲しいのか、あるいは純粋に万能である物が欲しいのかだ。 BB Plusならば、その両方の要素を得る事が可能だ。
自分が言う「素晴らしいサウンド」とは、「心から優れている」いう意味だ。2つの独立したディストーション・エフェクターとして、あるいは一つのチャンネルはクリーンなボリュームブースト、もう一つはオーバードライブ/リードブーストとしても個別に設定することができる。あるいは一つをディストーション、もう一つをブーストとしても使える。好きなように設定することが可能な訳だ。しかも好みに合わせて2つをミックスさせることができ、ペダルボードに自分用のカスタムペダルがあるようなものだ。
AC Plusと同様にBB Plusは2つ別々のブースト/プリアンプ・チャンネルがあり、それぞれにボリュームとゲインコントロールがついている。そして2つのチャンネルをどちらの方向にスタックさせる事も可能だ:BからA、あるいはAからBだ。 ゲイン・ストラクチャーを柔軟に縦列することができる事は非常に優れている点だが、コンプレッションの設定にハードとソフトの選択肢があり、又、各チャンネルに独立したトーンコントロール(チャンネルAはシングル・トーンコントロール、チャンネルBは3段階のEQ)が追加されたことによって、このペダルで得られない特色のオーバードライブやディストーションはないのではないだろうか。 クリーンなブーストや脂ののったブルースから、顔が溶けるような叫び、あるいはファズの騒乱まで:このペダルならば、思い浮かぶものは何でも造り出せるだろう。しかも説得力のあるトーンで、ただの近似ではない。
エキゾティック・エフェクツのペダルの卓越した点は、全く仕掛けじみた、ギミック的なところがない点だ。現在市場に多くある「ヴィンテージ」のフィールを再現した製品や、特定のアンプや有名なプレーヤーの音をマネしたような製品とは違い、BB Plusの柔軟さは、自分独自のオーバードライブ・トーンを幾つも造り出す自由を与えてくれる。ヴィンテージPlexiのフィール、Vox風の焼ける様な音、なめらかブラウン・サウンド、Tweedのパリッとした音、あるいは非常に透明なボリュームのブーストまで、全てがここにある。しかも、それだけではない。
両方のチャンネルはトゥルーバイパスで、それぞれに独立したスイッチがある。チャンネルAはオリジナルのBB preampの要素を持ち、その豊かでオープンなサウンドは、複雑さや透明感を失うことなく、クリーンから激しい音にと変える事ができる。シングル・トーンコントロールは主にミッドとトレブルに対応しており、もう一方のチャンネルほどトーンの多彩さはないが、どのゲイン設定でも驚く程の透明感がある。コンプレッションのハード設定(ボタンは下)のカットオフ周波数は500hzで、より深い低音が得られる。ソフト設定(ボタンは上)のカットオフ周波数は1khzで、よりタイトで鮮明なサステインのあるディストーションが得られる。コンプレッションの設定の違いは、ゲイン設定が大きい程はっきりとする。
チャンネルBには3段階のEQがあり、特に低音域ではより優れたトーンコントロールが可能だ。コントロールの反応は敏感で、あらゆる特色のあるトーンを提供してくれる。自分特有のトーンを造ることも可能であるし、お気に入りのカバーバンドで演奏する機会がある時は、誰もが知るお馴染みのトーンを再現する事も可能だ。また、自分は普段使わないが、中々良い「えぐれた」トーンも得られる。このチャンネルのコンプレッションの選択肢はチャンネルAとほぼ同じだが、ゲインが更にあり、またカットオフ周波数も異なる(ハードでは350hz、ソフトでは500hz)。
演奏の現場でBB Plusの多様性に助けられた例を2つ出そう。トリオでの演奏の時は、一つのチャンネルはリズム演奏用に低音をより深く、ミッドを持ち上げた設定にした。そしてもう一方のチャンネルは、より集中した低音とパリッとした高音にし、リードブーストとして使った。これによってリズム演奏では、より幅広いレンジの周波数をカバーすることができ、トリオのサウンドに厚みを足せ、又、リードをブーストした時に劇的にトーンが変わってしまうこともない。 アコースティック・ギターとキーボードとの演奏の時は低音を引き締め、ミッドをコントロールすることで全体的に「低音があり過ぎる」音にならないようにできた。そしてもう一方のチェンネルは、非常にクリーンなブーストとして、オーバードライブさせずに音が抜けるようにしたい時に使う事ができた。
AC Plusと同様にBB Plusにも幾つかの設定の例が書面で紹介されており、その中には説得力ある60年代の英国ブルースロック・トーンも2つ含まれている。だが正直なところ、自分の機材に合ったスイートスポットを探し出す方がもっと楽しいだろう。しかも非常に簡単に探せるはずだ。そして他のエキゾティックのラインアップの商品と同じように、BB Plusは、ぼんやりとしたアンプのサウンドを暖かくし、命を吹き込んでくれる。また各ピックアップ設定が持つ特有の音色をマスクすることなく、ピックアップのセレクションをより引き立ててくれる 。
非常に透明なAC Plusを使い続けることを推薦すると同時に、シングル・コイルがメインのプレーヤーなら、BB Plusを手に入れれば間違いなく、味わいよく豊かで複雑なトーンの選択を可能にする色彩パレットを、赤面することない出費で足元に置く事ができるだろう。この先、他のブースト/オーバードライブペダルを買い足すことはあるだろうが、どれを手放すが考えた時、間違いなく最後まで手元に残るペダルだろう。
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