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Scott Henderson サウンドの秘密 (2/2)

「小さなこだわりが積み重なって最終的に出てくるトーンに大きな影響を与えるんだ」

PCI:先日、サウンドへのこだわりについておもしろい話をされていましたので、今回はその情報をPCI Friendsの皆さんにもお伝えしたいと思います。 まずシールドについてですが、モガミのケーブルを使われていますね?

Scott:Mogami #2524 をずっと使っているよ。 ノーマルなケーブルで特にどこが特別という訳ではないが、どのロットでもばらつき無く製造されている良いケーブルなんだ。 外部導体が編組シールドではなくスパイラルシールドなんで、プラグに取り付ける時の作業がすごく簡単なんだよ。 ただもっと重要なことはケーブルの長さなんだ。 ケーブルの長さがトーンに大きな影響を与えるんだ。 例えばジミ・ヘンドリックスの独自のトーンに大きな影響を与えているのは、彼の使っていたカーリーコードなんだよ。 コイル状の彼のカーリーコードは伸ばせば、おそらく30 から40 feetの長さのケーブルだったと思う。 ケーブルが長くなればなるほどキャパシタンスが大きくなり、トーンはダークでミッドレンジが強くなるんだ。 どんなケーブルを使うかより、ケーブルの長さをどうするかの方がもっと重要なんだ。 もちろんケーブルの種類でもトーンは変わるけどよほど耳が良くないとその差は分からないと思う。George L'sのケーブルはその中では大変特徴のあるケーブルだね。 このケーブルに変えると顕著にトーンは変わるよね。 ブライトでキラキラした様なハイエンドになる。 これが好きな人もいるし、ちょっとトップがブライト過ぎて僕の様にあまり好きでない人もいるだろう。 ただ、その他の多くのケーブルがトーンが変わると言ってよく宣伝されているけど、ほとんど大きな差が無いというのが僕の感想だよ。 

PCI:シールドの長さはどれだけですか?

Scott:ギターから 4 feetの長さでバッファーに繋いでいる。 一度バッファーに入れてしまえば、その後は500 feetになろうが問題無い。 バッファーがキャパシタンスを調整してくれるから。 バッファーへ入れるまでのケーブルの長さが重要なんだ。 

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)

PCI:4 feetという長さはどの様に決めたのですか?

Scott:できるだけ短い距離でギターのプレイが可能な長さという事。 短ければ短いほどいいんだけど、これ以上短くすると演奏できなくなっちゃうんで。(笑) 実はこの長さは偶然発見したんだよ。 以前は10 feetのシールドを使っていて、たまたまあるレコーディングの時にシールドを持っていくのを忘れたんだ。 仕方無くそこにあった長さが4 feet程度の短いものを使ったんだけど、その安物の短いシールドですごくサウンドが良くなったんだよ。

PCI:プラグについては如何ですか? Switchcraftの#280を使ってみえる様ですが?

Scott:プラグの種類によるトーンの差は僕には分からない。 プラグの違いやハンダの違いまで色々言う人もいるけど僕の耳ではその違いや差は分からないんだ。 プラグは使いやすい丈夫なものであればいいんじゃないかな。 

PCI:プラグについてはマイケル・ランドーも全く同じことを言ってみえました。 マイケルはケーブルはベルデンの#9778を使ってみえますが、試したことはありますか?

Scott:いや、まだ。 今度試してみるよ。 それから大きなトーンの違いが出るものと言ったらエフェクトペダルに使う電池だよ。

PCI:アルカリ電池は良くないと言ってみえましたが?

Scott:アルカリ電池をエフェクトペダルに使うとトーンは最悪になるね。 特にディストーションで使うとその差がよく分かる。 

PCI:ではどういう電池がいいんですか?

Scott:昔ながらの安物のマンガン電池とかがいいよ。 長持ちはしないかもしれないど、アルカリ電池に比べて誰もがすぐ分かるほど違うトーンになるよ。

PCI:どうしてアルカリ電池ではサウンドが悪くなるんでしょうか?

Scott:ボブ・ブラッドショーやアレキサンダー・ダンブルに聞いたけど、電力がエフェクタにどの様にリリースされるかが違うそうだよ。 ライブではあまり気にせずAC電源も使ったりするけど、レコーディングの時には違いがよく分かるんで、もっぱら最も安い古い電池を使う様にしている。 とにかくワースト1は断トツでアルカリ電池なんだよ。 AC電源使うよりトーン悪くなるよ。

PCI:他にはどうですか? 例えばスピーカーケーブルや電源コードなどは?

Scott:スピーカーケーブルは大変重要だね。 特にスピーカーケーブルの長さもサウンドへ大きく影響するよ。 今僕が気に入っているのは、Marshall Sound Runner という10ゲージ(AWG 10)の太いスピーカーケーブルだよ。 

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)

これなら少々長くなっても大丈夫。 プラグはSwitchcraft。それから、キャビネットの内部もこの10ゲージケーブルを使ってジャックからスピーカーまでを配線し直しているんだ。 

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)

最近のマーシャルのスピーカーキャビネット内部を見ると分かるけど、ジャックからスピーカーまでを大変細いケーブルで繋いでいるよね。 僕はキャビネット内部の配線を10ゲージのこのスピーカーケーブルを使ってやり直しているんだ。 こういう小さなこだわりが積み重なって、最終的に出てくるトーンに大きな影響を与えるんだよ。 あっ、それともう一つ、キャビネットの後ろの板の材質も重要なんだよ。 最近のマーシャルのキャビネットの後ろの板はプレスボードなんだ。 プレスボードは柔らか過ぎて良いトーンにならない。 そこで僕のキャビネットの後ろは本当の木、バーチの合板に変えてあるんだ。 これで随分サウンドが良くなったよ。 昔のマーシャルのキャビネットは全部本当の木でできてたんだけど、コストダウンのプレッシャーには勝てなかったんだろうね。 この事はジミー・ぺイジも同じことをやってるって聞いたんでそれだけでもう納得。(笑)

PCI:電源コードはどうですか?

Scott:重要だね。 サウンドに対してというより安全性という意味で。 100Wのアンプに小さなランプ用の電源コードでは危険だからね。 太い丈夫な電源コードを必ず使う様にしているよ。

PCI:皆さんが知っている様で知らない重要なヒントの数々有難うございます。 さて、先日ナットに潤滑油を塗って失敗された話をされてましたが、どういう事か教えて頂けますか?

Scott:あれは一生の不覚だったね。(笑) John Suhrのギターに使用されているナットはプラスティックではなく、ボーンかタスクだと思うけど、テフロン系潤滑油をナットに塗ったんだ。 そしたらトレモロを使った時のチューニングはばっちりだし、大変うまくいったんだ。 ところが1年ほどしたらナットがゴムみたいになってしまって開放弦のサウンドが死んでしまったんだよ。 フレットを押さえているうちはいいんだけどね。 本当に馬鹿なことをしたもんだ。 John Suhrの所でも笑われたよ。(笑)

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)

PCI:貴重な失敗談まで有難うございます。(笑) John Suhrの所でサウンドチェックをする際はいつもアンプ、スピーカーなど全ての機材を持ち込み、ギターをいじる前のサウンドをご自分の機材でまず確認し、ギターの調整が終わるとその場でまたそのサウンドを確認されるとお聞きし感心しました。

Scott:ギターを調整してもらった後で、家に帰って自分の機材で鳴らして気に入らないとなると、また遠くにあるJohnの所まで行かなきゃならないからね。 

PCI:結局先日はJohnの所で何を変えたんですか?

Scott:ブリッジを変えたんだ。 Wilkinsのブリッジをトライしたんだよ。 でも結局気に入らなかったんで元の#1088 Gotoh ブリッジに戻してもらったんだ。 マイケル・ランドーがWilkinsのブリッジでいい音を出してたんだけどね。 多分僕のピッキングとマイケルのピッキングの違いもブリッジとの相性に関係あるかもしれない。 

PCI:マイケル・ランドーとのサウンドの大きな違いは何でしょうか?

Scott:マイケルのトーンは大変素晴らしいんだけど、トラディッショナルなストラトのトーンではないんだ。 僕のトーンはマイケルのと比べるともっとトラディッショナルなストラトに近いと思う。 特にTRIOのBlues方では古いストラトのトーンを出そうと思っているので、結局古いタイプのブリッジにスティールのブロック、スティールのサドルというパーツに落ち着いたんだと思うよ。

PCI:マイケルとは仲がいいんですね。 よく会うんですか?

Scott:マイケルは大好きなギタリストの1人なんで、彼がBaked Potatoに出る時はできるだけ見に行く様にしてるよ。

マイケル・ランドーのライブを見に行くスコヘン(Baked Potato)

また彼も僕のライブをよく見に来てくれるんだ。 あとはダンブルの仕事場でよく会うね。 ナイスガイだよ。

PCI:マイケルにも以前インタビューさせて頂きました。 2人とも日本にファンが多いのでこの話はうちの読者にも喜んで頂けると思います。

Scott:マイケルのインタビューはいつか英語にして教えてくれる? 興味あるよ。(笑)

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)


PCI:分かりました。 今日は有難うございました。

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