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Bob Bradshawインタビュー (1/3)

Photo by Taro Yoshida (Copyright 2002 Taro Yoshida)  

Custom Audio Electronicsの Robert C. Bradshaw(Bob Bradshaw/ボブ・ブラッドショー)という名前は、マイケル・ランドー、スティーブ・ルカサーなどロサンゼルスの著名ギタリストに会うと必ず出てきます。 ミュージシャンと一緒にサウンドを作ってきた重要人物であるにもかかわらず、意外とその素顔は知られておらず、アメリカでも日本でも色々な噂が飛び交う謎の人物です。 今回彼に直接会って色んな話を聞くことができました。 素顔は率直で本当に音楽が好きなナイスガイです。 予定を超過して長い時間話し込んでしまいましたが、なぜ多くのプロミュージシャンに慕われているのか判る様な気がしました。(2/13/2002)

スイッチング・システムの開発とミュージシャンとの付き合い

PCI:日本ではあなたの製品はかなり有名なのですが、あなた自身の事は意外と知られていないのです。 あなたにインタビューするという事で、日本の読者からすでにいくつか質問を頂いているんですよ。 

Bob:有り難いですね。 何でも聞いて下さい。 

PCI:生まれ育ちと、今の仕事をする事になったきっかけを聞かせて下さい。

Bob:僕は今年45才で、他の皆と同じ様にとにかく音楽が好きだったんです。 自分ではギターは弾かないんですが、音楽のエンジニアの仕事に魅せられました。 音楽は好きなんですが、ミュージシャンとしての才能は全くないので。(笑) それでまず電気知識を勉強する学校に行く事にしたんです。

PCI:ロサンゼルスで生まれたんですか?

Bob:いいえ、フロリダです。 フロリダのセント・ピーターズバーグで生まれ、同じくフロリダのヴェニスという町で育ちました。 そしてハイスクール時代にジョージア州アトランタに引っ越し、電気の専門学校に入ったんです。 エンジニアの勉強をする前にまず電気の基礎を勉強したかったんで。 

PCI:電気の勉強をする為にアトランタへ行かれたんですか?

Bob:そうです。 1976年から2年間そこで電気の基本を勉強しました。 その後、音楽関係の業界に入りたかったんですが、どうすれば音楽関係の仕事に付けるか全く判りませんでした。 それで、とにかくロサンゼルスに来れば何とかなるんじゃないかと思ってこちらに来たんです。

PCI:ロサンゼルスに来られたのはいつですか?

Bob:1978年の終わり頃でした。 僕が居たアトランタの電気の専門学校へロサンゼルスの企業からリクルートの話があり、その企業にまず就職したんです。 有名な軍需産業のヒューズ・エアクラフト社です。 ヒューズ社で1年間軍事関係の機器のテストをする仕事をしました。 一方その間に音楽関係の仕事を探しました。 そして1年後に、サンタモニカにあるミュージシャンズ・サービスセンターという楽器関係の修理屋に就職できました。 そこで始めてアンプとか音楽機材の修理をやりました。 それまでは、楽器や音楽機材の修理などはやったことは無かったんですよ。

PCI:そこに就職されたのはいつでしたか?

Bob:多分1980年だったと思います。 そこに勤めて6〜8カ月たった頃、お客の要望に応じてペダルボードを作っていた人が同じ店に居たんですが、あまりできが良くない事に気づき、僕ならもっとこうするのにとか思っていました。 その頃、良いペダルボードを作ることができるのはロサンゼルスでポール・リベラだけだったと思います。 たくさんのミュージシャンが色んなペダルを持って店に来るのを見ているうちに、「ちょっと待てよ。足元には個々のエフェクターごとにコントロールできるスイッチが付いたメインボードを置き、色んなペダルはステージ後ろの見えない所に置いてしまえば便利じゃないかな。」と思いついたんです。 足元にたくさんの種類のペダルを置いて、それぞれの操作を気にしながらプレイしていると音楽に没頭できないじゃないですか。 何とかプレイヤーの助けになる良い方法はないかと考える様になったんです。 それで、現在多くのミュージシャンに使ってもらっているスイッチングシステムを開発したんです。 幾つかサンプルを作って、その頃知り合いだったミュージシャンにまず使ってもらいました。 そうしているうちに、あるクラブで僕の大好きなギタリストの一人であるバジー・フェイトンに出会ったんです。 そして彼に言ったんです。 「あなたの足元のごちゃごちゃになっているペダルをきれいにできますよ。」って。(笑) バジーはとてもオープンで、「OK、どうやってくれるんだい?」って任せてくれたんです。 それで彼の為にシステムを作った訳です。 彼が僕のスイッチングシステムの最初のお客さんになりました。

Photo by Taro Yoshida (Copyright 2002 Taro Yoshida)  

PCI:それはいつの事でしたか?

Bob:確か1981年でした。 バジーに作ったシステムは、基本的には今僕が作っているものと全く同じです。 フット・コントローラーが足元にあり、ペダルやラックタイプの機器類は全部ステージの後ろにあるものです。 その写真やヒストリーについては僕のウエッブサイトを見て下さい。 http://www.customaudioelectronics.com/
リンクしていいですよ。 

PCI:有り難うございます。 バジーの次に会ったプロミュージシャンは誰でしたか?

Bob:1982年7月にバジーのツアーについて行った時、マイケル・ランドーに会いました。 その時からマイケルとの長い友達付き合いが始まりました。 そしてマイケルにもスイッチング・システムを作ったんです。 1983年にマイケルはジョニ・ミッチェルのツアーに参加する事になり、システムをちゃんとキープする為に僕を連れて行ったんです。 8カ月のツアーでした。 1983年はほとんどマイケルとツアーに出ていた様なものです。 ツアーの最中に彼のシステムを作り、改良していったんです。 毎日ショーが終わるとスイッチャーをホテルの部屋に持ち帰り、部品を替えたりハンダ付けをしたりして、次の日にはもっと良いシステムにしていったんです

PCI:1983年のツアーであなたのシステムがマイケルと共に進化していった訳ですね?

Bob:そうですね。 その頃まだMIDIはありませんでした。 個々のON/OFFのスイッチをループさせるシステムをまず作りました。 僕はそこに独自の回路を設計して、プリセットのスキームを加えたんです。 これは現在も売れているRS10 MIDIフット・コントローラーと全く同じコンセプトのものです。 最初にプリセットのコンセプトを取り入れたシステムが作られ、それにMIDIのプログラムチェンジなどの機能が追加されていったんです。 MIDIが最初のベースになってできたシステムではないんです。 

PCI:まずダイレクト・アクセスのシステムができ、プリセットが加わり、そしてMIDIが追加されたという事ですね?

Bob:その通りです。 このボードを見て下さい。 

Photo by Taro Yoshida (Copyright 2002 Taro Yoshida)

個々のエフェクターをコントロールするスイッチがあります。個々のエフェクターのプリセットも設定できますが、一方でいつも個々のエフェクターのコントロール、ON/OFFもできるんです

PCI:ユーザーにとっては大変使い勝手がいいですね。 

Bob:そうです。 それが一番大切なことです。 シンプルでロジカルでしょ? 個々のエフェクターへのアクセスができ、プリセットが設定でき、そしてもっと設定したければプログラムチェンジの信号もMIDIで送れるんです。 それが丈夫なボックスに入っていて、頑丈なスイッチとコネクターで長期間の過酷なツァーなどの使用にも耐えられます。 この基本デザインは既に20年前にできてたんです。 

PCI:なぜ20年前にこれができたんでしょう? いつもミュージシャンと一緒にいたからでしょうか? 

Bob:そうですね。 ミュージシャンの必要としている事が察知できたんです。 ミュージシャンがプレイしている現場を見て、音楽以外の所に気を取られているところを見て、改善できる所を改善した訳です。 「ミュージシャンをエフェクターや機材に煩らわせずに、音楽に集中させる。」 これが僕の製品開発の哲学です。

PCI:あなた自身はギターを弾かないんですよね。

Bob:弾きません。 僕のシステムを使ってどういう音楽ができるのかは全く判りませんし良い音楽ができるという保証もありませんよ。(笑) 僕はただミュージシャンのニーズを察知して便利なシステムを作るだけです。  

PCI:そしてあなたのシステムが本当に多くの人に使われる様になりました。 どうやって普及させたんですか?

Bob:スタジオミュージシャン達の力で口コミで僕のシステムの良さが伝わって行った様です。 ロックギタリストに普及するのはその後です。 バジー・フェイトンがまず使い、それからマイケル・ランドーが使ってくれました。 マイケルはセッションで僕のシステムをいつも使ってくれました。 これはもう20年前の話なんですよ。 そしてマイケルのベストフレンドの一人がスティーブ・ルカサーで、マイケルがスティーブを紹介してくれました。 そして僕の家でスティーブにダン・ハフの為に作ったシステムのデモをやったところ大変気に入ってくれたんです。 その他にポール・ジャクソン・ジュニアも口コミで僕のシステムを知り、使ってくれる様になりました。 彼もすごいギタリストですから一度インタビューするといいですよ。 それからもちろんディーン・パークスも使ってくれています。 驚くことに、1984年にディーンのために作ったシステムを彼はまだ現在も使ってくれているんですよ。 何度もここへ来てもらってスイッチを替えたり、修理をしたりしてもう18年間彼とはずっと付き合っています。

PCI:ディーン・パークスとは何度もお会いしましたが、素晴らしいギタリストで他の多くのプロミュージシャンに大変尊敬されていますよね。

Photo by Taro Yoshida (Copyright 2002 Taro Yoshida)

Bob:彼は本当に素晴らしいミュージシャンです。 こういう著名なスタジオミュージシャンの人達がまず僕のシステムを気に入ってくれました。 後で聞いた話ですが、もっとも気に入られた理由は、ギターの音を瞬時に変える事ができるからだそうです。 例えば、オーケストラと一緒に映画音楽なんかをレコーディングする時、キューが出た時、こうしてスイッチを一回踏むだけですぐ必要な音が出せるんです。これは当時のスタジオミュージシャンの人達にとって画期的な事だったそうです。