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Steve Lukatherインタビュー (1/5)

Photo by Taro Yoshida (Copyright 2002 Taro Yoshida)  

 

サイモン・フィリップスが声を掛けてくれ、遂にスティーブ・ルカサーとのインタビューが実現しました。 いまさら多くの説明は必要無いほど、彼を応援するファンが世界中にいます。特に日本、ヨーロッパでのTOTOの人気は大変根強いものだと実感しました。 ルークのインタビューの事を日本の仲間達に話をすると、山ほどの質問が届き、限られた時間の中で何を聞くか随分迷いました。 ところがインタビューを始めると何を聞くかなんてシナリオ通りには行きません。ルークは思いのまま、感じるままを率直に語ってくれました。時には自問自答のルーク節が延々と続き、彼の世界にすっぽりと引き込まれてしまいました。彼は本当にギターが好きな「VERY NICE GUY」です。 そんな彼の人柄や凄さが少しでも伝われば嬉しいです。
(1/11/2002 ルークの自宅にて)

Doves of Fireについて

PCI:では、まず最初に話題のバンドDoves of Fireについて結成のいきさつから教えて頂きたいんですが? 2月にこのバンドで来日されるという事で多くのファンが楽しみにしていますので。

LUKE:このバンドは皆楽しみでやってるんだ。 仕事というよりも趣味っていう感じだね。 最初サイモンに誘われた。 サイモンとオレは兄弟みたいなもんで、サイモンはミュージシャンの中のミュージシャンなんだよ。 

PCI:はい。 サイモン・フィリップスとのインタビューも感動ものでした。 

LUKE:サイモンから、「とにかく楽しんでライブ演ろう、ベイクドポテトかどこかのクラブで。」って誘われたんだ。 オレ達が聴いて育った70年代のフュージョンをもう一回やろうということになったんだ。 もう最近誰もやってないからね。 ただ楽しむ為だけにやったんだよ。 そしてジェフ・バブコとプレイすることになった。 今まで会った若手ミュージシャンの中では彼は世界一だね。 それから、メルビン・デイビスとも初めてプレイすることになった。 彼も信じられないくらい凄い。 こんな太いネックのベースで。(笑)そしてメルビンは、ほんとにナイスガイなんだ。 4人でサイモンの家で一回だけリハを演った。 とにかく迫力あるリハだったよ。 だってやる音楽はマハビシュヌ・オーケストラ、ジェフ・ベック、ビリー・コブハム、リターン・トゥ・フォーエバーなど、70年代のフュージョンなんだ。 そこにTOTOとしてのアイデンティティーは全くないんだよ。 

PCI:ハリウッドのベイクドポテトキークラブで2度見ましたが本当に感動しました。

LUKE:ライブを演ってくうちにオーディエンスが本当に喜んでくれることが判ってきた。リハーサルは一切やらないんだ。

PCI:全くリハなしですか?

LUKE:そう、その分緊張感もあるし楽しいんだ。 

Photo by Taro Yoshida (Copyright 2002 Taro Yoshida)  

PCI:Doves of Fireの由来は何でしょうか?

LUKE:Doves of Fireはマハビシュヌ・オーケストラのアルバム、Birds of Fireから取ったんだ。 サイモンとオレのジョークさ。昔マイク・ポーカロがBirdsの事をDovesと言って大笑いしたのを思い出したんでね。 まあ、あんまり深い意味はないってことさ。(笑) Doves of Fireはミュージシャンの為のミュージックとも言えるね。 

PCI:Birds of Fireは確か1973年の作品でしたね?

LUKE:そう。 もう30年近く前になるね。 若い頃最初にこの音楽を聴いた時は、本当に恐れおののいたよ。 「What is that?」って。(笑) そんな音楽聴いたことなかったからねえ。 でも、その後音楽を勉強していくうちに、彼らの創り出したサウンドは音楽的にも理論的にも全て正しいってことが判ったんだ。 一生懸命コピーして練習したもんだよ。 オレはもう44才だけどまだ毎朝ギターの練習をするんだよ。 まだ自分のプレイ、実力が気になるんだ。 成長しなきゃダメだからね。

PCI:そういう意味で、あなたにとってDoves of Fireは、ギタリストとしてより成長できるバンドなんですね?

LUKE:そうだね。 凄いバンドだよ。 どんどん良くなるんだ。24回のショーが終わったらどれだけ凄いバンドになってるか楽しみだよ。 日本では福岡と大阪と東京のブルーノートで12日間演るんだ。 1日2回だから合計24回のショーになるんだ。 リハなしだぜ。 想像しただけでエキサイティングで恐ろしくなるよ。(笑) ミュージシャンが好きなら絶対このバンドが好きになるはずさ。 ヒット曲を演奏するというショーではないからね。 

PCI:ということは、TOTOのライブとは全く違うライブになりますね? 

LUKE:TOTOの商業的な成功をもとにしたライブとは全く対極のライブになるね。 ただTOTOでの成功は本当に誇りに思うよ。 今年はTOTOの25周年記念なんだ、信じられる? 今TOTOの新アルバム製作中で、インタビューが終わったらすぐスタジオへ行かなきゃならないんだ。 

PCI:それは楽しみです。 Doves of FireでのCD製作は考えてないんですか?

LUKE:日本でのライブを録音するんだよ。 サイモンが録音機材を全部持って行くんだ。 知ってるだろエンジニアとしてのサイモンの事。 日本での24回のショーを全て録音して、そこからいいのをピックアップしてCDリリースすることになると思うよ。 いつになるかは判んないけど。 多分スティーブ・ヴァイのレーベルから出す事になるんじゃないかな。

PCI:それは楽しみですね。 ラリー・カールトンとのツアーもスティーブ・ヴァイのレーベルでしたね? グラミーでの2部門のノミネートおめでとうございます。 

LUKE:有り難う。 ほんとに嬉しかったよ。 全く予想してなかったんでビックリしたね。 

PCI:Doves of FireのCDはスティーブ・ヴァイのレーベルが合ってるかもしれませんね。 

LUKE:そうだね。 こういう音楽のマーケットもあると思うよ。 ミリオンヒットにはならないと思うけど。 MTVやラジオでは決して聴くことが出来ない音楽を求めている人が必ずいると思うんだ。 今ちまたで氾濫している音楽は、Easy to listen でEasy to playなものばかりだ。 もっとアグレッシブで激しい音楽を望む人達がいるんだよ。 でもそんな演奏をしてくれるバンドってないだろ? うちの娘はもう17才だけど気に入ってくれてるし、息子は15才でヘビーメタルギタリストでなかなか上手いんだけど、彼も気に入ってくれてる。 

PCI:息子さんと言えば、ジェフ・バブコのインタビューの時に聞きましたが、息子さんの学校のPTAの集まりでTOTOがボランティアで演奏されたそうですね? 

LUKE:そうそう、これは面白い話なんだ。 うちの息子が行ってるハイスクールには、マイク・ポーカロやビリー・アイドルの息子などたくさんのミュージシャンの子供たちが通ってるんだ。 とにかくアメリカの高校では、毎年父兄がボランティアで学校の為に何かしなきゃいけない。 オレ達ミュージシャンの親は、学校をヘルプする為に何が出来るかって言ったらやっぱりライブだなって事になったんだよ。 それで学校でコンサートをすることにしたんだ。 

PCI:凄い豪華メンバーのコンサートになりましたね。 

LUKE:ビリー・アイドルとTOTOとトレバー・レビンなどが合同でハイスクールでライブをやった訳さ。 見に来てた父兄はビックリしてたよ。(笑) 

PCI:突然学校の校庭でそんなコンサートが始まったらそりゃビックリしますよ。(笑) 息子さん達も一緒にプレーしたんですか?

LUKE:ああ、オレの息子も一緒にステージで弾いたよ。 彼はTOTOのツアーにも連れて行って、ヨーロッパでは毎晩弾いていたんだよ。 もう2年前だから13才の時だ。  毎晩きれいな女の子も捕まえていたようだよ。(笑) 

PCI:さすが親譲りですね。(笑) Doves of Fireの話に戻りますが、先日のキークラブでの演奏は素晴らしいものでした。特にジェフ・バブコとのプレイはジェフ・ベックとヤン・ハマーを彷彿させるものでした。 ジェフ・バブコのプレイはデビット・ペイチとかなり違うものでしょうか?

LUKE:両方共グレイトプレイヤーだね。 デビットはソウルフルなビッグMIDIプレイヤーだ。 彼は見たとおり豪快なプレイをするんだ。 判る? ビッグマンでビッグサウンドでビッグコマンドだ。 ジェフは若くてスーパージャズフィールを持ったプレイヤーだ。 ジェフはオレに全く違うプレイをさせるんだ。 彼との掛け合いは本当にエキサイティングだよ。 

PCI:文字通りジェフとはインタラクティブなプレイになるんですね。

LUKE:そうだね。 でも正直言って、今まで一度もちゃんとしたバンド活動はしてないんだ。 2月に日本のブルーノートでやるのが最初のバンド活動と言っていいね。 今までは、「一カ月後の土曜日にやるよ。」って言われるとOKって言って、当日は簡単なサウンドチェックだけしていつもぶっつけ本番だったんだよ。 音楽は凄いハードだからちょっと気を抜くとすぐ置いてきぼりを食らっちゃうんだよ。 

PCI:いつも緊張してなきゃいけないって事ですね?  

LUKE:ちょっと気を抜くと「Where am I?」さ。(笑)

PCI:そういう緊張感が伝わってくるんでエキサイティングなショーになるんですね。

LUKE:楽しいよ。 演奏は難しいけどね。 他にこんな演奏をするバンドがどこにいる?  ほとんどいないだろ? たくさんの子供たちがロックスターやミュージシャンになりたいと思ってるよね。 息子にいつも言い聞かせてるんだ、「もっと練習しろよ。」って。 練習なんかしなくても今はロックスターになろうと思えばなれない事はない。 プロトゥールがあるから実際その場でプレイしなくてもいいし。 別に悪い事じゃないけど、じゃぁどこに若いミュージシャンで本当のプレイが出来る奴がいるんだ。 ほとんどいないだろ? 

PCI:Doves of Fireはそういう意味では若いミュージシャンに刺激となるでしょうね。 

LUKE:オレ達はそういう音楽をやる最後のジェネレーションかもしれない。 ジェフ・ベックやビリー・コブハムなどの素晴らしい音楽を生きたまま伝えたいね。 オレの息子なんかこう言うよ。 「Dad. It's heavy, man! What is that?」 オレは「彼らはこれを30年前にやってたんだ。」って言うんだ。 今の子供たちはこんな音楽聴いた事ないからね。 

PCI:最近の若いミュージシャンで気になるバンドはありますか?

LUKE:レディオヘッド(Radio Head)はいいバンドだね。 そうそう、若いミュージシャンについての質問はオレにとっても大変大事な話題だ。 だってオレの息子は若いミュージシャンだからね。 だから興味なくても若いミュージシャンの音楽は聴かざるを得ないんだよ。 車の中で息子に、「このバンドいいだろ?」ってよく聞かされるしね。 たくさんいいバンドあるけど、オレにしてみると何ていうか、音楽ではないような気がするんだ。 誰かがただ叫んでいるだけの歌が多いね。