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2005年12月19日
第7回:Altamont(アルタモント)" The Monkees' Uncle " 続編
ツアーに行って来ました。 アメリカ西海岸だけの2週間足らずの小さいものですが、行って来ました。 人生初めてのツアーがアメリカでの事とは、正直甘やかされているような... しかもJello Biafra with the Melvinsの前座と来た時には、会場を埋める心配がありません。 完全に甘やかされました。 が、所詮はアンダーグラウンド、飛行機での移動もなければグッズの販売も自分達でやらなければいけません。 それほど楽なツアーではありませんでした。 しかも全日程風邪気味で挑んだステージ、 鼻をたらしながらやっておりました。 暗がりのステージで本当に良かったです。 まぁツアーの事はこれくらいにしまして、前回の続き、 アルバムの種明かしをしたいと思います。
痛快なロックナンバー、6曲目の”Pedigree”はDanがギター、Daleがベース、ドラムを弾いています。 ギターはギターアンプを使わずに直接コンソール(ミキサー)に入れてファジーな音を作っています。The Beatles(ビートルズ)の”Revolution(”Hey Jude”のB面またはPast Masters, Vol. 2のヴァージョン)”も同じやり方でファズサウンドを作ったと言われています。 エンディング3分10秒と2分11秒から始まるちょっと遠くに聴こえるドラムはJoeyの演奏によるもので、メインのDaleと同じドラムセットを使ったため、その音と喧嘩しないようフェイズ(位相)を使ってちょっとした工夫をしています(かなり専門的になってきたので、何を書いているか分からないと思っている人が多いと思うのでこの辺にしておきます)。
奇妙な声で始まる7曲目がタイトル曲、”Monkees' Uncle"。 始まりの声はDanの娘が残したメッセージのスピードを変えたものです。 その後にSashaがドラムを弾きノイズが加わります。 31秒に左から聴こえるものはFender Rhodesに最新版のDigitechのWhammyをつなげ、右手でRhodesを弾き、左手でWhammyのプログラムを変えたりペダルを操作して出しているノイズです。 34秒に右側に加わる音は先のものにSnarling DogsのMold Sporeを加え、それを足で操作しています。 その後、39秒あたりで出てくるノイズはDaleがお気に入りのGibson ‘57 Les Paul Goldtop(リ・イシュー)をフィードバックさせたりしています。 ちなみにこの曲はDaleが子供の時観たElvisに対する思いを歌ったもので、ライブでは自分がウクレレ(エレクトッリク/アコースティック)を弾いています。
'80年代のヘビーメタルを思い浮かばせるギターサウンドを持った8曲目が"Bloodenling"です。 この曲も中間から後半はかなり遊んでいます。 1分13秒にあるギターソロはDanが購入したLine6のベースPODに、Daleの所有するHagstromギターを通したものでアンプは使っていません。 その後1分30秒から出て来る高音のカネのような音は、先と同じセッティングでギターの1、2弦をひねって、それをピックしている音です(写真↓*ちょっと分かりづらいかもしれません)。 それをミックスでパンをばらばらに行っています。 同じ1分30秒のタイミングで聴こえてくる声は、Daleが色々なフェクターを通したギターアンプに歌って、それをマイクで拾ったものです。
7分に及ぶエピック、9曲の"Easter Sunday"ではDaleがギターをめちゃくちゃに弾きたいがために収録された曲と言ってもいいでしょう。 Daleの弾くアコースティックギターで始まり、その後、 一本のエレキギター、ノイズギター、ベース、ドラム、そして自分の弾くHammond B3オルガンによる至って簡単な編成です。 勿論、遊び心は中盤からドンと出てきます。 1分14秒から聴こえるサステーンのかかったギターはDaleが弾き、アナログ・ディレイのフィードバックを自分が操作しながら録音されています。 3分30秒前後からドラムの音が変わっているのに気付くと思います。 それはSONYのM-529V(写真↓)と言うマイクロカセットをドラムキットの近くにおいて録音して、それをコンピューターの中で編集したものです。 なぜ編集が必要かというと、アナログで音楽用に再生、録音スピードが精密に作られているわけでもなく、シンクロナイズ機能が付いている訳でもありません。 なのでプロ録音用のアナログテープマシーンやコンピューターとは再生スピードが合いません。 なので緻密な編集が必要となってきます。 3分55秒からまたドラムの音が変わる事に気付くと思います。 これはバケツをひっくり返し、その中にマイクを入れ、バケツの底が上になっているその上に多数のペーパークリップをのせて、振動が来るたびに雑音が出るようにしています。 これをテープの1トラックを使って録音しています。 それらをミックスの時にオートメーションを使ってフェードイン/アウトしているのです。
”Bull Ramus”はDanとDaleがDaleの自宅で取ったもので、ドラムにテラミン等のノイズを入れています。 かなり酔っ払った時にDanがドラムを叩き、Daleがノイズを作って基盤を作りました。 人のうめき声のように聴こえてくるのはDaleが昔飼っていた愛犬”ピンク”の鳴き声で、それを自分がコンピューターの中で再生の速さを換えたり色々他のエフェクトを使って作ったものです。 ちょっとした遊び曲です。 (*お詫び: 前回のコラムの曲順の9曲目と10曲目が入れ替わっておりました。 アルバムが発売される前にDaleから直接メールされたものを載せたのですけど...)
1). FRANK BANK
2). BATHROOM CREEP
3). DUM DUM FEVER
4). EL STUPIDO
5). LAUGHING BOY
6). PEDIGREE
7). MONKEES UNCLE
8). THE BLOODENING
9). EASTER SUNDAY
10). BULL RAMUS
11). IN A BETTER WORLD
最後を閉めるのが、'70年代後半から'80年代頭にかけてLos Angelsを中心に活躍した、幻のシンセパンクバンド、Screamersのカバー曲、"In A Better World"です。 この曲はこのアルバムで最もストレートな曲であまり効果的なエフェクトやトリックは使っていません。 かなりオリジナルに近く演奏されていますが、編成が大きく異なります。 まずScreamersはボーカル、ドラムに2人のキーボードプレーヤーからなっています。 つまりベースもギターもいません。 Altamontのヴァージョンはボーカル/ギター、ベース、ドラムに自分がFender Rhodesに歪をかけて(これはScreamersと一緒)弾いたものとB3オルガンを重ねています。 オリジナルよりはるかに"重く"出来ていると思います。 ちなみにこの曲がライブでも閉めをくくり、 評判も良く、「Screamersのカバーは渋いね!」と言うお客さんの声もよく聞かれました。
と、こう言った感じで作られているのですが、お分かりになったでしょうか? 「別にこんな事を知っても飯にありつけない!」と思う人がいらっしゃると思いますが、自分はそれで食っています。 こういうことが好きな人には面白いと思いますが、そうでない方も興味を示していただければ嬉しいです。 ちなみに最近mixiを始めました(Altamontで検索していただければ、たどり着くと思います)。 そこに日記としてツアーの模様を書いています。 是非読んでやってください。 mixiに入っていない方はhttp://toshimanaki.blogspot.com/の自分のブログの方にも書くつもりなのでチェックしてみてください。 もう一つついでに最近Myspaceと言うところでAltamontのサイトを作りました。 こっちは会員でない方もみられますし、 4曲のまるごと聴く事が出来ます。 是非お試しください。 www.myspace.com/altamontband
トシ・カサイさんのプロフィールはこちら。
トシ・カサイさんのJINAでのインタビューはこちら。
トシ・カサイさんは下記↓のミュージシャン達と仕事をしてきました。
Toshi Kasai: Audio Engineer / Producer / Song Writer
Worked with or Credit on Albums of:
Altamont, Eddie Ashwroth, Jello Biafra, The Black Watch, Bloodhound Gang, The Boneshakers, Capitol Eye, Crush Radio, Danzig, Gavin DeGraw, Phill Driscoll, Eastern Youth, Mark Endert, The Exies, Robben Ford, Foo Fighters, Robert Fripp, Hangface, Dan Hicks & His Hot Licks, Adam Jones, Rickie Lee Jones, Kool Kieth, Eddie Kramer, John Kurzweg, Randy Jacobs, Less Than Jake, Lustmord, Dave Matthews Band, Maroon 5, Melvins, Bette Middler, Nehemiah, Willie Nelson, Ours, Mike Patton, Pimpinela, Puddle of Mudd, Willian Reid, The Road Kings, Sepultura, Matt Serletic, Son Y Clave, Splender, Sprung Monkey, Sugar Bomb, T-Square, Taxiride, That's What You Get, Tool, VAST, The Ventures, Mike Ward, Sound Tracks: Dude, Where is My Car?, Gran Turismo 2, Polar Express.
投稿者 admin : 09:14