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2004年12月15日

第1回:"A Night At The Opera" by Queen

自分は日本語での文章が得意ではありません。 かと言って英語が得意な訳でもありません。ただ音楽は大好きなのでこの企画をPCIさんに持たしてもらいました。PCIの読者の皆さんに聴いていただきたいアルバムを紹介するのとともに, 自分の友人のミュージシャン等が影響された, または彼らが皆さんにお勧めしたいアルバムをこれから紹介していきたいと思ってます。

第一回と言う事で今回は自分の一番好きなバンドのお勧めのアルバムを紹介したいと思います。 決めるのに時間はかかりませんでした。

Queenの"A Night At The Opera", 邦題が"オペラ座の夜"。 1975年に発売されたアルバムです。

queen.jpg


1). Death on Two Legs (Dedicated to...)
2). Lazing on a Sunday Afternoon
3). I'm in Love With My Car
4). You're My Best Frien
5). '39
6). Sweet Lady
7). Seaside Rendezvous
8). Prophet's Song
9). Love of My Life
10). Good Company
11). Bohemian Rhapsody


自分が学生の頃, 友人の薦めで聴いてみたのですが、 初めはピンと来なかったのが正直な感想です。アルバム全体にまとまりがないと思っていたのか、直ぐには好きになれなかった覚えがあります。 でも今はその"まとまりの無さ"、よく言えばバラエティーに富んでいるところが何ともいえません。 最近のバンドのアルバムではまずありえない事ですよね。 最近のバンド, グループはジャンル分けされる事を強いられ、アルバム全体が似たような曲でまとめられているのが常識(?)ですよね。 その点この"A Nihgt..."はBeatlesのThe Beatles(ホワイトアルバム)にも共通して, The WhoやKinksがやったロックオペラとはまた違った"オペラ"アルバムです。

もし全12曲を一言ずつで表すのならこうなるのではないでしょうか:ハード、 楽しい、ハード、楽しい、楽しい、ハード、楽しい、ヘヴィー、可愛らしい、楽しい、ワケワカンナイ、そして愛国心。 本当に激しい曲から静かな曲まであります。 2)、7)はイギリスのフォークソング、トラディショナルソングを思い浮かべさせるし、12)に関してはイギリスの国歌のカバーです。 しかも歌詞の内容もまちまちで、1)は彼らの元マネージャーのことを皮肉っていたり、4)と9)がラブソングで、5)、8)、11)のそれぞれが物語にもなっています。 11)に関しては言わずと知られた彼らの代表曲で、 人を銃殺した死刑囚が死刑台に行くまでを語っています。 このように曲調、歌詞もそれぞれ異なりながらもアルバム全体に違和感を作らずに仕上げているところがすばらしい。 例えばコンサートでも通用するような流れを持つ1)、2)、3)の曲間、激しい曲からスローなラブバラードに展開する8)と9)のトランジションはQueenならでは。ベスト盤では絶対に聴く事のできない楽しさだと思います。

プロデューサーのRoy Thomas Bakerはこのアルバムを機に70年後半から80年代にかけて、 The Cars, Cheap Trick, Devo, Foreigner, Journeyのアルバムにプロデューサーとして大忙し。ただこのアルバム以上の出来を持つアルバムに彼は参加していないと思えるのは自分だけでしょうか。音作りの面でも色々な楽器を使ったり、オートメイション(音量操作等の自動操作)、パニング(ステレオ音源での左右操作)を生かしていたミックス、と聞き手を曲自体以外でも楽しませようという作り手の気持ちが伝わってきます。例えば、このアルバムからのもう一つの代表曲でもある4)は、ベースのJohn Deaconがエレキピアノを弾いたり、7)ではカズー等のおもちゃの楽器を使ったり、ピアノを二重に録音していたり、10)に関してはギターの Brian Mayがウクレレ、バンジョーの生音とクラリネットに似せた彼のギターと1曲1曲に違いをみせようとする工夫が見られます。 2), 10), 11), そして12)で聴けるBrainのギターハーモニーはQueenの音作りでもっとも重要なものの一つです。

そしてQueenのもう一つの持ち味と言うべきパニングを生かしたボーカルハーモニーは、他のバンドが真似する事のできないQueenの"特許"とも言うべき物になっています。 メインヴォーカルのFreddie Mercuryはもちろんの事、ドラマーのRoger Taylarのヴォーカルも3)でのメインボーカル、そして他の曲でのバッキングボーカルとして際立っています。 5)に関してはBrianによるメインボーカルを中心として、Rogerの高音のバックヴォーカル、Freddieを加えたその3人による幻想的なハーモニー。 8)と11)についてはFreddieを中心とした重圧のあるボーカルハーモニーには彼らの音楽性の豊かさを感じさせられます。

でもやはり曲が良くなければいくら録音、ミックスに凝っていても聴いている方は面白くないですよね。 このアルバムに関してはその心配をする必要がありません。 4人のメンバーそれぞれが曲を提供していて、それぞれの異なった個性が出ていています。 ロック好きのRogerが書いて歌い, そしてQueenのライブでは欠かせなくなった3)。 Johnが書いて大ヒットしたラブソングの4)。
Brianは5)、6)、8)、10)を提供し、彼のソングライターとしての存在感をアピールしたと共に、彼の色々な音楽へ対する尊敬さえもうかがえます。そしてFreddieが天才または奇才といわれるのは、名曲11)を聞くだけでも分かりますが、Brian同様、彼が音楽好きである事を証明出来るアルバムでもあります。ハードロックの好き、ポップの好き、フォーク好きな人と色々なリスナーが楽しめるアルバムでもあります。

CDは東芝EMI盤をお勧めします。 アメリカのHollywood Recordの輸入盤には2曲のボーナストラックが入っていますが、意味のないリミックスになっているのとともにアルバムの流れ無視して、後味の悪い終わり方になっています。 ちなみに5.1サラウンド盤も出ています。
1973年から1991年の11月24日のFreddieの死去まで、Queenは14枚のスタジオアルバムを作りました。 この"A Night..."はその中の4作目です。 この他にも"Sheer Heart Attack", "News of the World", "Jazz"と, お勧めしたいアルバムがあります。 正直なところどれについてに書こうか迷いました。 Queenをご存知の方は多いと思いますが、ベスト版しか持っていない方も多いと思います。 是非お試し下さい。

このようにこれからどんどんアルバムを紹介していきたいと思います。 リクエスト質問等ありましたら、toshimanaki@hotmail.com まで。

トシ・カサイさんのプロフィールはこちら

トシ・カサイさんは下記のミュージシャン達と仕事をしてきました。

Toshi Kasai: Audio Engineer / Producer / Song Writer
Worked with or Credit on Albums of:

Altamont, Eddie Ashwroth, Jello Biafra, The Black Watch, Bloodhound Gang, The Boneshakers, Capitol Eye, Crush Radio, Danzig, Gavin DeGraw, Phill Driscoll, Eastern Youth, Mark Endert, The Exies, Robben Ford, Foo Fighters, Robert Fripp, Hangface, Dan Hicks & His Hot Licks, Adam Jones, Rickie Lee Jones, Kool Kieth, Eddie Kramer, John Kurzweg, Randy Jacobs, Less Than Jake, Lustmord, Dave Matthews Band, Maroon 5, Melvins, Bette Middler, Nehemiah, Willie Nelson, Ours, Mike Patton, Pimpinela, Puddle of Mudd, Willian Reid, The Road Kings, Sepultura, Matt Serletic, Son Y Clave, Splender, Sprung Monkey, Sugar Bomb, T-Square, Taxiride, That's What You Get, Tool, VAST, The Ventures, Mike Ward, Sound Tracks: Dude, Where is My Car?, Gran Turismo 2, Polar Express.

投稿者 admin : 2004年12月15日 15:43