第3回 Elvin Bishop
Elvin Bishopは1942年10月21日にCalifornia州Glendaleで生まれました。彼が10歳の時、一家はOklahoma州の電気も水道も無い農場へ引越しました。そこは完全な白人地域だったので黒人音楽に接する機会など日常ありませんでした。しかし、ある日、彼は遥か彼方にあるラジオ局から流れてくるJimmy Reedのハーモニカを耳にした時、非常な衝撃を受けました。
Elvinは1959年に奨学金を得てChicago大学に入学したのですが、黒人音楽に興味を持っていた彼が真っ先にしたことはカフェテリアで働く黒人と親しくなることでした。彼らにクラブへ連れて行ってもらうようになってからのElvinは「ブルース・ミュージック浸け」の生活を送りました。その後、彼は2年で大学をやめて音楽一筋に。
ElvinはSmokey Smothersからブルース・ギターの基礎を学び1960年代の初めにPaul Butterfieldとthe Butterfield Blues Bandを結成しました。彼はブルース・ミュージックを心から愛していたので日夜ギターの練習に明け暮れ、バンドは大学のキャンパス、ホーム・パーティー、公園、クラブなどで演奏活動を続けました。彼らが有名になりだしたのは1963年にChicago北部の"Big John's"でthe Paul Butterfield Blues Bandと名乗り出演しだした頃からです。
1968年のアルバム"My Own Dream"を最後にElvinはバンドを離れ、活動の本拠地をSan
Franciscoへ移しました。ソロになってからは"Let it Flow" "Struttin' My Stuff"といった名作を発表し、彼の楽しいステージも大評判となり知名度、人気も上がりました。しかし、1979年に"Best
Of"を発表後は1988年に"Big Fun"が発表されるまで彼の名前を聞くことはあまりありませんでした。
1988年以降は偉大なブルースマンのClifton ChenierやJohn Lee Hookerのアルバムに参加したり、1995年にはB.B.Kingとツアーをするなどマイ・ペースで活動をしています。
Elvinの音楽はブルース、ゴスペル、R&B、カントリーをミックスしたようなものです。彼はそれをユーモアたっぷりに、独特のスライド・ギターで演奏します。
私が観たElvinのコンサートは「これぞエンターテイメント」と言えるアット・ホームな楽しさ一杯のもの。そこには演奏者と観客といった垣根などありませんでした。
Elvinはステージから観客席へ降りて行って女性の膝に座りながらギターを弾きまくったり、ギターの弾けない女の子をステージに上げてギターを弾かせたりしました。もし彼女達が知人に「Elvinが私の膝の上に座りながらギターを弾いたのよ」とか「ステージに上がってElvinのギターを弾いたんだから」と言っても誰も信じないかもしれません。しかし彼女達は自分が体験した事を生涯忘れないでしょう。
コンサート後半には、あのRobben Fordが飛び入りして演奏。ElvinはRobbenが上手くギターを弾けると「よくやった」と合図をしていました。その姿はまるで親が子供にギターを教えているようにも見えて微笑ましい光景でした。RobbenもElvinと一緒に演奏出来るのが嬉しくてしかたがないといった様子。最後にRobbenは"All time my hero"とElvinのことを観客に紹介しました。
「アメリカン・ロックの良心」とも言えるElvin Bishop。彼のCDが日本盤で発売されているかどうか分かりませんが、輸入盤でもけっこうですので是非聴いてみて下さい。こんなに素敵なアーティストを聴かないなんてあまりにも勿体ないです。音楽の楽しさをびしばし感じて下さい。
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