FULL-UP TONE POTを発売してしばらくすると,やはり「VOLUME用はないの?」という声が出始めました。回路的に見ると,VOLUMEはTONEに比べてロスが大きくないように思えたし,何しろポットの3個の端子を全部使うVOLUME回路では,"FULL-UP"状態を作り出すことが簡単ではなかったので,はじめは断っていました。しかしある日ひらめいて,FULL-UP VOLUMEを作る方法を見つけたのです。そこで早速試作品を作ってテストしてみました。すると予想以上に効果が大きく,「お〜っ,ボリュームもトーンもはずして直結で使うやつの気持ちが分かったぜ!」という感じでした。ギターのピックアップのようなハイ・インピーダンスの回路に並列に入っている抵抗ってのは,やはり結構ロスを生むもんなんですね。そして製品化を試みたのですが,FULL-UP VOLUMEを作るために必要な1軸2連のポットの入手が難しく,最初は500KΩだけでスタートしました。それも回転トルクの重いポットしか無かったので,ちょっと不評でした。でも今では250KΩもあるし,トルクも軽くなったのでご心配なく。 しかしやはり1軸2連のポットは特殊なパーツです。FULL-UP TONEのように多くのバリエーションが作れないのも事実です。基本的には「取付穴径7ミリの日本製ポット」しかありません。これに8ミリ用,3/8インチ用のアダプターを付けたものを含め,250KΩ,500KΩ各3種類のラインナップになっています。ヒストリック系以外のレス・ポール用のロング・シャフトやスイッチ付きなどは残念ながらありません。値段はアダプターなしが¥2,500,アダプター付きが¥2,700で,トーンよりちょっと高めですが,これも元になるパーツが特殊であることが主な理由です。 FULL-UP VOLUMEは他では見たことがない,わが社だけのオリジナル商品です。開発に至るアイディアはFULL-UP TONEからの流れですが,フル・ボリュームの時に回路をバイパスするボリューム・ポットってのは,たぶん世界にこれしかないと思います。えっへん。でもまぁこんなポットが必要になるのはギターの世界くらいでしょうけどね…。 そう言えば,上に出てきたアダプターもわが社だけのオリジナル商品です。POT ADAPTOR RINGっていうんですけど,これだけでも売ってます。ギターの修理や改造の仕事で,ポットと取付穴のサイズが合わないことって結構あります。穴が小さい場合は広げればいいんですが,大きい場合はポットを穴のまんなかにきれいに収めるのはかなり大変です。そんな時のために作ったのがこれなんです。内径7ミリ外径8ミリ,内径7ミリ外径3/8インチ,内径8ミリ外径3/8インチの3種類があります。これはほんとに便利な商品なんですが,そういう仕事をしている人にしかその便利さが分からないという悲しさがありますね。ポリプロピレンの成型なんで,型代が高かったんだよなぁ…。もっと売れると思ったんだがなぁ…。
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