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2018年9月 9日
PCI JAPANインタビュー#4(Jay Graydon)
Jay Graydon インタビュー
2000年10月27日 8PMより1時間(ドンロバーツの紹介でミーティングが可能となる。)
PCI:ご自宅にこんな立派なスタジオがあるのには驚きました。器材も豊富にありますね?
J:僕のウエッブサイトを見てくれたら、どんな器材を使っているのか詳細に判るよ。 http://www.umu.se/users/KEO/graytxt.htx
話は変わるけど、トシ・ナカダって知ってるかい? Jay Waveのディスクジョッキーだよ。彼は、世界中のポップミュージックの紹介する番組を持ってるんだ。 彼は、世界中のミュージシャンのことに詳しいから、一度話を聞いてみるといいよ。 OK。 じゃー、何でも聞いてくれ。
PCI:有り難う! じゃあまず、どんな仕事をしているかを教えてください。 実際今は何をやっているんですか?
J:この話はまだ誰にも話していないんだけど、実は今、自分の新しいアルバムを作ってるんだ。 本当のジャズだよ。 50年代、60年代の、本物のビーバップだぜッ! バンドは僕が自分でギターを弾き、ブランドン・フィールズがサックス、デイブ・ウィッケルがドラム、デイブ・カーペンターがベース、ビル・キャントスがピアノ。 ビル・キャントスは僕の昔からのポップミュージックのレコーディングにも参加してくれていたけど、ジャズも弾けるんだよ。 このメンバーは、ビーバップで生活してるヤツは一人もいないんだよ。 でも、ビーバップをやらせるとみんな上手いんだよね。 まだ、レコードをどうやってリリースするかは決めていない。インターネット経由で売るかもしれない。 でも、ビーバップのアルバムでは儲からないよね。 出来は絶対いいから、僕のファンは喜んでくれると思うんだけど、ジャズのアルバムはあんまり売れないんだよね。 これは、僕自身のためにやるみたいなもんだね。 今まで沢山のレコードを作ってきて、どれも一生懸命やってきてクオリティーは高いと思うけど、今回のレコードは自分がとにかく作りたいからやるんだ。 何年前か忘れたけど、僕は自分でジャズギターを弾いていた。 その後、ポップスやR&Bのレコーディングやプロデュースをやるのに手が一杯で、ジャズをやる時間がメッキリ減ってしまった。ポップスやR&Bを演奏するのは同じ音楽だから、確かに楽しいよ。 でも、僕が本当に自分らしく作れる音楽はやはりジャズしか考えられない。 今回、このアルバムを作ることでやっと、僕の本当の夢が叶えられる。 それがたまらなく嬉しいよ。いや~今までがんばってきたかいがあったよ! 本当のビーバップができるんだ。 それと、レコーディング技術の本を3年前から書いているんだよ。 12冊のシリーズになる予定で、最初はベースのレコーディングで、2冊目はギターのレコーディングに関する本だ。まだ、正式の本のタイトルは決めてないけどね。 最終的には全ての楽器のレコーディング技術を網羅する予定で、ものすごく内容は濃い物になるだろう。 多分あと半年くらいで完成すると思うよ。 これらの本は日本語にも翻訳される予定だ。 日本語に翻訳されると、本のページ数が増えるかもしれないね。 あんまり日本語の翻訳が使いにくいといけないので、英語のオリジナル版はWEBに載せて読む人にもっとよく理解してもらうことにしようとも思っている。 日本の出版社とも話してるけれども、本当にレコーディング技術に詳しい人が翻訳してくれるといいけどね。 それから、ポップミュージックのプロデュースもやりたいと思っている。 それと、ギターソロをまたやってみたいと思ってる。
PCI:それは、みんな日本のファンは待ち望んでると思いますよ。
J:日本のミュージシャンやプロデューサーがロスで録音する時に、僕のギターソロを使いたいと言うのなら、僕は喜んで引き受けますよ!
PCI:それは素晴らしい! 我々の知り合いの日本のミュージシャンによると、あなたのギタープレイ、作曲とプロデュースすべてが特に80年代の日本の音楽に大きな影響を与えたとのことです。 特に、アース・ウィンドアンドファイヤーの『アフターラヴイズゴーン』の美しいメロディー、エアープレイのプロデュース、マンハッタントランスファーの『エクステンションズ』、アルジャローの『ジャロー』、マークジョーダンの『私はカメラ』、それとスティーリー・ダンのエイジャの中の『PEG』のソロ。 あなたは弾いても弾かなくてもすごいんですよね。
J:ありがとう! それらはデビッドフォスターと一緒だからできたんだよ。 デビッドは音楽に関しては天才だ。 作曲家としては彼の方が僕の上を行ってると思うよ。 僕も沢山曲を書いたり、アイディアを出したりしたけれど、デビッドの方が、大きな影響を与えたと思うよ。 とにかく、デビッドと一緒に新しい音楽を作って、あの時代の音楽シーンに送り込んだんだ。
PCI:80年代には日本のミュージシャンの多くの人は、あなたのプレイをコピーし、プロデューサーはあなたの音作りを参考にしたと聞いています。
J:それは有り難い。 ギターソロとしても、あの頃はよくスタジオでプレイしたよ。 いい仕事としてよく覚えているのは、『PEG』、マーハッタントランスファーの『トワイライトゾーン』、それとエアプレイでのソロかな。 僕は、スタジオプレイヤーとして、プロデューサーとして、作曲家として、それぞれいい仕事をしてきたと思う。 でも、それぞれの仕事がほかの誰よりも、飛び抜けて上手いというわけではなかったと思うがね。 僕より優れたスタジオプレイヤーは沢山いるし、優れたプロデューサーも沢山いるし、また優れた作曲家も沢山いる。 そんな中で、その3つを僕はそれなりにやってきたと思うよ。
PCI:この3つの中で、あなたが一番気に入ってるのはどれでどの作品ですか?
J:それは選ぶのは難しいよ。 僕の作った作品は自分の子供の様に思っている。 自分の愛しい子供から一人を選ぶなんてことはできないよ。 僕の作った音楽をよく聞いて欲しい。 簡単に出来たように見えるかもしれないけど、ものすごく時間をかけて作ってるんだ。 沢山のテープとトラックが何度もやり直されて、ミックスされている。 僕は細かい性格だからねぇ~(笑)
その場のフィーリングも大切にするけど、録音された音が最高じゃないと気がすまないんだ。 そして、急いで作り上げるんじゃなくて、音作りの過程をじっくり楽しみたいんだ。 プロの音作りはこうあるべきだと思わないかい?
PCI:あなたの音楽は自然で、堅苦しくなく、かつ完成度が高いということですか?
J:堅苦しくないよ、決して。 いいフィーリングで作り、完成度も高く、そして演奏自体も楽しんで、本当に良い音を出しているんだ。 ただ、それは短時間ではできないんだよ。 シンガーやプレイヤーにはいい音が出るまで何度も何度もやり直させるので、嫌われてるのかもしれないけどね。 レコードはリアルタイムではない。 コンサートでも、セッションでもない。 レコードは永遠に残るので、全身全霊をかけて最高の音を作り上げたい。 レコードというのは今聞いても、これから何十年たっても、いい音はいい音として残る。 昔、デイビッドと作った音楽は何回聞いてもいい音楽だ。 きっと、これからも変わらないだろう。
PCI:レコードを買ってくれる人のことを考えて作ってるんですね?
J:もちろん、それと自分自身も納得する音でなくてはならないと思っている。 僕は完ぺきでないと気が済まないんだ。 いいフィーリングでレコーディングができ、なおかつ納得の行く音でないといけないんだ。
PCI:ここであなたの過去について聞かせてください。 いつどこで生まれて、いつから音楽を始めたんですか?
J:僕はこのサンフェルナンドバリーで生まれて、今までここから10マイル以上離れたところに住んだことがない。
PCI:じゃ~ あなたを紹介してくれたドンロバーツと一緒ですね?
J:そうだよ。 もうドンとは30年以上の付きあいで、同じ大学にも行った。 ドンは若いころサーフバンドでサックスを吹いていて、一緒にクラブで演奏したこともあるよ。 家も近いしね。 ドンは僕より4っつ年上だ。 ちなみに僕は51歳。 二人とも誕生日は10月なんだ。 ドンの奥さんは日本人で有子って言うんだよね。 大阪出身の頭のいい医者だってね。 僕は14歳のころにギターを始め、この辺でプレイをしていた。 実はその前はドラムをやっていたんだよ。 高校へ入ってからも、ギターを弾いていたんだけども、バンド仲間の大学生が、ビッグバンドで弾いてみないかと誘ってくれたんだ。 その時初めてジャズのリハーサルを経験して心底好きになったんだ。 だけどその時はジャズなんか全然弾けなかった。 それから一生懸命練習したよ。
PCI:じゃあ、本格的なあなたの演奏活動はジャズが最初だったんですね?
J:いや、ジャズなんてまだまだ全然弾けなかった。 だから、バンドでは、ロックンロールをやっていたよ。 ロックンロールバンドで小遣いを稼ぎ、大学へ行ってから、ビッグバンドでジャズを弾くようになったんだ。 ドンが仕事を見つけてくれたんだ。 この辺のたくさんのナイトクラブで演奏しまくった。 その時にデビッドフォスターの様なミュージシャンと出会うことになったんだ。 しばらくして、ディーンパークスがスタジオでプレーしてみないかと誘ってくれたんだ。
PCI :それがスタジオミュージシャンになるきっかけになったんですね?
J:そう、ディーンパークスが僕の人生を変えたんだ。 それから、雪だるまのように仕事が増えていった。 スタジオプレーヤーとしていい仕事をしたんで、どんどん仕事が来た。 来る仕事は何でもやった。 70年代後半からプロデューサーの仕事も始めた。 1979年にエアプレイのアルバムをデビッドフォスターと作った。 それからは本当に忙しい時代が続く。 そして1990年にはプロデューサーの仕事をストップした。 本当に長い間忙し過ぎた。 この10年は実際大きな仕事はほとんどしていない。 1993年にソロアルバムを作り、その後日本へツアーへ行って、94年95年にフォスターと少し仕事をしたくらい。 朝起きて自分のしたいことをするってのはいいもんだよ(笑)。 金も貯めたし、この屋敷のローンも残ってないし。 これまでの話はこんな所かな。 そして今新しいジャズアルバムを自分でプレイもして作るのを頑張っている訳。 そしてプロデューサーとしての仕事も再開する。 特に日本のアーティストのプロデュースに興味があるので、僕の話を日本で紹介するのなら皆に言ってほしい。 でも日本の大物アーティスト、プロデューサーだけだよ、聞いたことも無い人はダメ(笑)。 例えばTK(小室) とかね。
PCI:活動開始ですね。 TKはよくロスに来るんですか?
J:よく来るらしいよ。 でもいつもすれ違いでまだ会ったことは無いんだ。 日本の大物プロデューサー、アーティストとは是非会いたいね。
PCI:ところでバリーアーツのギターは使ってみえましたか?
J:何台か使っていたよ。 ストラトタイプのいいギターがあった。 修理しなくちゃいけないけど。 バリーアーツにいたダッドリーギップルが持ってきてくれたギターだ。 本当にいいギターだけどネックが曲がっちゃって彼に直してもらわなければならない。 彼はミュージックマンでギター作っているよね。
PCI:同じくバリーアーツに居たドングローシュという人のギターを知ってますか?
J:いや。知らない。 どんなギター?
PCI:バリーアーツスタイルのカスタムメイドでビンテージサウンドギターといったところです。 8年前に自分で会社をスタートして日本でも人気が出てきています。
J:一度是非試してみたいね。 僕の望むゲージを言っておくよ。9、11、14、22、34、44だよ。 それと、弦高の高いのがいい。 低いのはダメだよ。
PCI:了解しました。 今度気に入ってもらえそうなギターを持ってきます。 さて、次にスティーブルカサーとの関係を教えて頂けますか?
J:親友の一人だよ。 僕がプロデューサーとして仕事を始めた時に彼の起用を推薦したんだ。 彼はスタジオプレーヤーとしては、1年位 しか仕事しなかったね。 だってTOTOがすぐ爆発的に売れたからね。 僕の弟みたいなもんだよ。
PCI:あなたが彼をスタジオプレイヤーとして推薦したんですか?
J:そうだよ。でもしてもしなくても、素晴らしいプレイヤーだからいつかは成功したと思うよ。 僕が背中をちょっと押しただけさ。
PCI:彼をスタジオプレイヤーとして推薦された時、彼は何歳でした?
J:18歳だったと思うよ。 1977年か78年だったと思う。 素晴らしいギタリストだった。 彼の成功を少し早めることはできたかもしれないね。 売れるタイミングも良かったね。 スタジオプレイヤーとして仕事を本格的に始めると、実際のライブでのプレーがファンには見られなくなってしまうからね。 スタジオプレイヤーというのは野球選手みたいなもので、新しいプレイヤーとどんどん入れ替えるんだよ。
PCI:その他最近興味のある、あるいは注目されているアーティストはいますか?
J:ジャズのボーカリスト、ピアニストとしてダイアナクロル(Diana Krall)がいいねえ。 彼女のピアノは最高だよ。 ギターもたくさんいいプレイヤーがいるね。 マークホイットフィールドを始めとして名前思い出せないけどジャズギタリストには無名でもいいプレイヤーがたくさんいるね。 正直な話、ジャズプレーヤーで好きな人多いんだよ。 はっきり言ってポップのプレーヤーはどうでもいいんだ。 ジャズプレイヤーと一緒にプレイをして、本当に好きなジャズが今は楽しめるんだ。 生活のためにポップミュージックを聞く必要はもうなくなったんだよ。 ポップミュージックでは器材とプロデューサーが売れるための音を作るんだよ。
PCI:それで今回本当に自分の好きなジャズアルバムを作っているんですね?
J: そう、このアルバムは本当に自分の好きな音楽を追及したものなんだ。 時間はかなりかけているが、本当のギターの音で、アンプ、コンプレッサー、エフェクターを一切使わないんだ。 これは大変難しいことなんだ。 ポップミュージックをやっている人達にもたくさん友人はいるが、やっぱり今はジャズを聞いている。 たださっきも言った様にこれから有名アーティストと、仕事としてポップミュージックのプロデュースの仕事を再開したいとは思っている。
PCI:使用されている器材で最近お気に入りのもは何ですか?
J:リベラのアンプがいいね。 Lake HeadとJay コンボをいつも使うよ。 それとギターはBossaをまだ使っているよ。 どこがいいか教えてあげるよ。 僕はフェンダースケールよりギブソンのショートスケールが好きなんだ。 だからミュージックマンのダッドリーへ今持ってるバリーアーツのギターも直してもらうよ。
PCI:フロイドローズを気に入っているんですか?
J:トレモロバーを使わないけど気に入ってるよ。 このBossaギターはジャズのレコーディングに使うんだ。 色々なギターを試したけど、これほど僕にぴったりくるものは見つからなかった。 このギターにしても偶然にぴったりのができたのかもしれないね。 ネックがボディーに近い所までは真っすぐで、ボディーに近い所で徐々にスロープダウンしているんだ。 だから高いフレットの所でのプレイがやりやすいんだ。 この時フロイドローズのシステムがギターのチューニングを最もよい状態にロックして保ってくれるんだよ。
PCI:バジーフェイトンチューニングについてはどうですか?
J:ああ使えるよ。 ダッドリーに教えてもらった。 ただチューニングが面 倒だから僕のギターには使われてないけど。
PCI:バジーもスタジオプレイヤーとして仕事してましたよね?
J:そう。彼はいいギタリストだった。 でもあまり忙しくは無かった様だね。
PCI:スタジオプレイヤーと言えば、ディーンパークスはどうでした。 長い間プレイしてますよね?
J: 彼はすごいね。 今一番うまいアコースティックギタープレイヤーかもしれないね。 本当に味のあるプレイをするね。 才能あるし、また彼はサックス吹かせてもすごいんだよ。
PCI:Bossaのギターの話に戻りましょうか?
J:そうそう。 このピックアップを見てくれ。 ハンバッキングでストラトの様な音が出せるんだ。
これは素晴らしいよね。
PCI:その他コンプレッサーやエフェクターなんかは何を使ってるんですか?
J:スタジオでは通常僕はアンプのスピーカーを使わないんだ。 一切アンプのためにエフェクターは使わないんだ。 ギターの音は全てマイクから直接コンソールへ送られ、全てのエフェクトはコンソールでやるんだ。 アンプやスピーカーの性能にあまり影響されたくないから。
PCI:それでは、チューブダイレクトボックスなんかは要るんではないですか?
J:それは必要だね。 持っていたら是非テストさせてほしい。これは大至急ほしい。モノを2台用意できる? ここ数日後にあるレコーディングで是非試したい。
PCI:Demeterのモノチューブダイレクトボックスを2台至急手配しましょう。 それから今日はZ Vex, Robotalkなどのエフェクトペダルをいくつか持ってきました。これらはどうでしょう?
J:これらもおもしろうだね。 試してみるよ。 その他、チューブアンプ(Dr. Z)やチューブエフェクター(SIB)などでもおもしろいものを扱っている様だね。 是非一度試させてくれると有り難い。
PCI:了解しました。 これからも色々と情報交換を続けましょう。 今日は本当に有り難うございました。
投稿者 pcij : 2018年9月 9日 23:53