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チューブアンプについて日米のエキスパートが語る!

ドクター Music編 (2/2)

TUNE UPと改造



アンプの壁を背にして対談?雑談?

Y:うちの店だけかもしれないけど「改造したい」という相談が多いんです。いろいろと話を聞いていたら、無理難題も全て実現出来ると思い込んでいる人がいますが、、、。

T:確かに昔のアンプって、中の構造はシンプルなんで改造出来るスペースもいっぱいあります。ただ、改造すれば今までのサウンドは確実に失われる事になりますね。しかも改造にも限界はあるんです。極端に言えばFenderをMarshallにする事は不可能であり、個人的にはナンセンスな話だと思います。また近代的なアンプと同じスペックにする事は構造上、非常に困難である事を知って貰いたいですね。

Y:ただ、TUNE UP(改善)という観点では、まだいろいろと出来そうだよね。

T:内部配線も特別高級なものにしなければいけない訳ではないけれど、生産コストを考えてシート配線にソケットを使用したり、配線の引き回しが大雑把だったり、時には粗悪なパーツを使用しているものもあり。そこを少し換えたり修正したりするだけでもノイズの軽減や故障し難くなるんだよね。でも、ここら辺は価格に少なからず影響しているって事。また、そうであってもユーザーにとって「良い音」が出ていたら問題ないけど。

Y:まぁ、ユーザーもアンプに多くを望むようになったという意味では、嬉しい限りなんだけどね。ちょっとマニアックになりすぎてるんで、引き気味になる時あるよ(苦笑)

T:俺も。怖いよね、、、、相談話があまりにマニアック過ぎるもん(それにサラッと答える自分達は?)

CLASS Aについて
T:もう既に、前のお二方が説明している記事を読んだら解ると思うけど、いろいろと見解が違うが僕は「回路的観点から言えば、(1)フェイズインバーター管が無い、(2)パワー管のカソード側が直接アースに配線されていない、(3)バイアス電圧が掛けられていない、(4)音声を全波増幅(シングル動作)している。という条件を満たしているアンプ」が、CLASS A。確かにVOX AC30は、このうち(2),(3)は満たしているが、完全なCLASS Aではないと言えますね。

Y:でも、VOX AC30はCLASS Aの要素を持っているアンプだとも言えるよね

T:それと同時に、一般的にVintage調のサウンドになるように通常5極動作の増幅方法を3極動作に切り替えて、角の取れた甘めのサウンドを「CLASS A」と記すメーカーもあります。厳密には違うけど、これは「CLASS A SOUND」と言うのかな?これについては論議が尽きそうにありませんね(苦笑)

Y:あと、日本人特有なのかもしれないけれど、CLASS Aは、飛行機でいうFIRST CLASSと勘違いしている人がいますね(笑)あと、血液型のAとABとかと一緒じゃないって思ってる人。

T:だったらCLASS Aは「真面目」でCLASS ABは「二重人格」になるとでも?

Y:私、嘘をついてしまいました(一同爆笑)

(下記の写真をクリックしてください。大きくなります。)

  
 

サウンドについて
T:ハイエンドアンプやハンドメイドアンプを最近よく雑誌で見かけるんだけど、ぶっちゃけどう?店長サイドから見て。いや、聴いて。

Y:音質的に、Vintage志向ものと次世代志向のものと、二つに分かれてきているね。ひとつの背景にはVintageアンプが、ここまで高騰化してきたのと、老朽化してきたという現状から、昔のアンプを再現するメーカーも増えてきたと思う。最近、FenderやMarshallも発売してる「HAND WIRED」物とかも言える事かな。それだけニーズが高まってきている証拠だと思うけど。あと、さっきも言った個人のニーズに応えるべく改良を繰り返して出来上がったアンプもそう。soldanoやMatchlessを代表するメーカーはそう。でも、そうしたらある意味RIVERAもハイエンドメーカーだよね。

T:で、肝心の音の方は?

Y:そうだね、レスポンスもサウンドも素晴らしい物が結構あるよ。だけど、さっきCLASS Aだのハイエンドパーツをふんだんに使用しただのって触れ込みのアンプであっても音は「ショボイ」アンプもあったりする(笑)どちらかと言えば値段が高いので、店頭に並ぶケースは稀だしメーカーもそれ程生産能力がある訳じゃないから、どうしても情報先行になってくる。雑誌のコピーライターによっては、読者の脳内で「孤高」のサウンドを創りかねないよ。

T:「高かろう、良かろう」と一概には言えないと?って、その「ショボイ」アンプって、何処のメーカー?

Y:知ってるくせに〜(一同爆笑)

T:もし近くの楽器屋さんに置いていなかった場合は、メーカーに連絡してもらって、お店に貸し出し出来るか問い合わすのもいいかも?メーカーだって弾いて貰いたいし、買って貰いたい訳だから、それくらいはしてもらいたいよね。そして自分でチェックして「自分の求める音」であるか確かめてから買うのが理想的かな。

Y:だからドクターMusicは、アンプをいっぱい取り揃えて、その場ですぐ確かめられる環境を作ってる訳ですよ!

T:でも、爆音で試奏するから実は近所迷惑なんだけど、、、。

Y:そこは「田舎」の強みです(一同納得)

これを読んでくれている方へ
Y:かれこれ10年も前には、こんな話すら出なかったのですが(笑)これもアンプが注目されている証拠でして、これからも様々な選択種が増えていく事だと思います。でも、これだけは言わせてください。「良いプレイヤー+良い楽器+良きリペアマン=良い音質」であると。僕も正直、まだまだプレイは若輩者ではありますが、練習は欠かしません。どれだけ良い楽器で、どれだけ良いパーツを使っていようが、プレイヤーが使う道具に過ぎません。あとは貴方が巧く弾くかどうかです。私達は、そんな楽器を勧め、調子の悪い楽器を正確に治し、調整するのが仕事です。これを読んでいる皆様が、これからも素晴らしいサウンドに出遭えるよう願っています。これからもドクターMusicを宜しくお願いします。ありがとうございました。

T:リペアマンとして、はや18年が経とうとしていますが、未だに勉強しなければ解らないものもあります。しかし、日本にこれだけ海外からのアンプが輸入されている現在、正直言えば「アフターメンテナンス体制」はお世辞にも取れているとは言えません。どれだけ生産メーカーがアフターフォローに万全を期していたとしても、日本の輸入代理店のアフター体制が悪ければ、ユーザーにとって「良いイメージ」はありません。メーカーと代理店とのアンプに対する温度差がある事はこれからの代理店に課せられた重要な課題だと思います。当店は、だからこそ出来る限りユーザーと向き合って仕事をしていきたいと思っています。ユーザーの声を大切にして正確かつ敏速に対応出来る体制を持って、皆様をサポートさせて頂きたいと努力していきます。
最後に、RIVERA社のPaul Rivera氏と、GROOVE TUBE社のAspen Pittman氏、そしてP.C.Iの堀場様には、このコーナーを通じてまた勉強させて頂いたと感謝しております。残念ながら私達はアンプを生産したり、真空管を作ったりする会社ではありませんが、同じアンプに携わる者として大変光栄に思っております。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

PCI: こちらこそ本企画にご協力頂き有り難うございました。
ドクターMusicのインタビューはこちらへ。