「ベン・ハーパーとラップ・スティール・ギターについて」
PCI:
来年ですか? (笑) 興味深いです。ところで、ベン・ハーパーとはどの様に知り合ったのですか?
Bill: ベンとは確か1997年後期か、1998年に知り合った。まだGuitar Traditionがあった頃で、ベンは彼のラップスティールギターのデザインについて話せる人間がロスにいないか聞き回っていた。ベンは楽器店で育っていて、クレアモントにある彼の両親のフォーク・ミュージック・センターでギターのリペアもしていた。僕の事はリペアマンとして聞いて、ギターのデザインと製作を手がけている事は知らなかったそうだ。でも何人かが「そうだよ。彼は凄く良い仕事をする。彼の製作したギターもいくつか見た事がある。連絡してみるべきだ。」と彼に言ってくれた。それである日突然、ショップの者が彼からの電話を受けて、ベンが僕を探していると知った。彼と電話でたっぷり1時間程、彼のワイゼンボーン・アコースティック・ハワイアン・ギターと、その新しいエレクトリック・バージョンのデザインをしたい事について語った。彼はこのコンセプトについてかなりの人数と話しをしたが、僕は本当に、彼がそのギターに何を求めているかを理解していると感じたそうだ。そしてその一週間後にショップを訪ねて来てくれた。僕達はコア材を前に座り、僕がいくつかのデザイン画を見せた所、彼は「私が探していたのは君だ!
これだ!興奮するよ! このギターは素晴らしい出来になる!」そして、「製作してくれ!」と言われた。

PCI: そうですか。
Bill: 「これが頭金だ。そのギターが欲しい!」と。
PCI: そうして1998年に最初のベン・ハーパー・モデルが製作されたのですね?
Bill: その通り。
PCI: そして今年新しい、スペシャル・エディションを製作した訳ですね。
Bill: 最初のオリジナル・ベン・ハーパー・モデルは70本製作した。ホンジュラス産マホガニー材とコア材で僕のカスタム・ピックアップが乗っていた。でも音質が少しアコースティック過ぎで、暖かく、多少ダーク過ぎるという事になった。彼はもっと明るく、もっとクラシックなエレクトリック・ギターの音に近いものを求めていた。そもそもラップスティールは独自のユニークな音を持っている。それに大抵のヴィンテージ・ラップスティールは、ブリッジ・ポジションのシングル・ピックアップに限定される。そこで僕はワイゼンボーン・ギターを元に、よりロング・スケール、25インチ・スケールのラップスティールのデザインを始めた。彼のアイディアは、よりクラシックなレスポールのトーンを持った物を作り出す事だった。それで僕は彼に「ベン、僕たちの造ったオリジナル・モデルのボディー・スタイルは完璧だ。変える必要があるのはトップの木材をコア材ではなく、カーリー・メープル材にする事だけだ。それで僕が59ハムバッカーを乗せるスィート・スポットを探し出すよ。」と言った。僕とベンは、共にセイモア・ダンカン氏(Seymour
Duncan)と懇意にしているが、ベンはセイモア・ダンカンの59ハムバッカーの音をとても気に入っていた。そうして僕はレスポールの様な、新しいシリーズ「ベン・ハーパー・モデル2」をデザインした。より幅広にして、スタンダードなレスポールより弦の間を広く取れるよう、フェンダー・タイプのスペーシングをした。ラップスティールの演奏上、右手の弦のスペーシングは非常に大切な要素だからだ。
PCI: なるほど。
Bill: そしてベンに言った「どうせなら出来る限りクラシックにしよう。レスポール同様に、古いスタイルのチューノマティック・スタッド・マウンテッド(tun-o-matic
stud-mounted )テイル・ピースを使おう。それにレスポール同様のボリューム/トーン、ボリューム/トーンのセットアップにしよう。ピックアップ・セレクターもラップスティール用に、レスポール同様になるようデザインし直そう。」そうして3つのプロトタイプを4ヶ月程前に製作し終えた。ベンはそれをリハーサルで手にしたが、僕が彼のギターテクから聞いた所によると、まずそのギターを自宅で8−10時間程弾いたそうだ。彼は3つのプロトタイプをそれぞれ試して、その内の2つに惚れ込んだ。彼は僕に電話で
「今までで、ラップスティール・ギターから得る事が出来たトーンでは最高だ! これまで聞いた事のあるギターのトーンでは最高だ! 文句なしだ!」と言った。僕は彼に限定版をやる事に興味がないか聞いた所、彼は「もちろん。100本やろう。」と言った。
PCI: それは素晴らしい! 他にあなたのラップスティールを演奏しているアーティストでは誰がいますか?
Bill: そうだな。グラミー受賞者のグレック・ライツ(Greg Leisz)がいる。彼はボブ・ディラン(Bob Dylan)のアルバムでの演奏や、ジョニー・ミッチェル(Joni
Mitchell)のツアーに参加している。Wall Flowerのアルバムでもスティール・ギターを演奏している。彼は非常に幅の広いスタジオ・ミュージシャンで、ギター、ペダル・スティールとラップスティールを演奏するが、僕のラップスティールを2本持っている。他にもビル・フリセル(Bill
Frisell)とのレコーディンで僕のラップスティールを使っている。その他には、テキサス州オースティン出身のシンディー・キャッシュダラー(Cindy
Cashdollar)がいる。彼女は“Sleep with the Wheel Tourモ にも参加し、多くのウェスタン・スウィング・ミュージックを演奏している。彼女は、オースティンにいるボニー・レイエット(Bonnie
Raitt)や彼女自身の地元もバンドも含めて、数多くのアーティストと演奏しているスティーブン・ブルーテン(Steven Bruten)から、最近僕のラップスティールについて聞いたそうだ。彼も一本持っているが、それを彼女に弾かせた所、感激して「絶対に欲しい!」という事で僕に連絡があった。彼女の為には、最初のベン・ハーパー・モデルを元にしたスタンダードのエレクトロ・ハワイアン・モデルのラップスティールを製作した。彼女はそれをライアン・アダムス(Ryan
Adams)のツアーで演奏している。(ブライアン・アダムスではなく、新しいアーティストのライアン・アダムスだ。)彼の新しいアルバム "Cold
Roses" の全面で、そのラップスティールを演奏している。

PCI: これらのプレーヤーはラップスティールをメインとして演奏しているのですか?それともエレクトリック・ギターをメインとして、ラップスティールは代わりとして使っているのですか?
Bill: いや、彼等はメインの楽器として使っている。でもMen at Workのコリン・ヘイ(Colin Hay)等は僕のラップスティールを一本買っているが、スタジオでのスライド等の演奏で、アルターナティブ・トーンとして使っている。それとヌーノ・ベッテンコート(Nuno
Bettencourt)もそうだ。彼も素晴らしいギタープレーヤーだ。
PCI: はい。彼はスティーブ・ルカサーと一緒に来日して大好評でした。
Bill: 彼は僕を訪ねて来てくれた事があって、彼のギターのリペアやフレット・ワーク等をやった事がある。僕のラップスティールを凄く気に入ってくれて、シングル・ピックアップのエレクトロ・ハワイアン・ジュニアを買ってくれた。彼もギターのアルターナティブ・トーンとして買っている。他に誰の為に製作をしたか考えているが、もう何百本も出しているな。既に日本にも
僕のエレクトロ・ハワイアンが何本かあるはずだ。欧州各地、スペインやフランス等にも沢山送った。
PCI: このラップスティールの市場は、非常にニッチですが成功されていますね? 今はその市場を独占しているのでは?
競争相手はいないのではないですか?
Bill: そうだね。確かに僕のやっているレベルでの製作をしている人は誰もいない。他のラップスティール・ビルダーで、チャンドラーなどはちゃんとした初心者レベルのラップスティールを造っている。ゴールドストーンなども手頃なラップスティールを造っているが、僕の知る限りでは、誰も「よし、非常に高級なラップスティールを造るぞ。」という勇気と大胆さを持っていないと思う。ラップスティールを演奏するミュージシャン達は、それが素晴らしい楽器である事を知っているけど、今まで2,000ドル以上の値段でラップスティールを製作し、売ったのは誰もいないと思う。今までには無かった事なんだ。ヴィンテージ・ラップスティールでも、それ程の値段では売れないが、僕のギターのスケールの長さとデザインはギター・プレーヤーにも親しみやすい。良いミュージシャンで、良いピッチを持っていて、ギターを演奏できれば、ラップスティールはそれほど使いこなしにくい物ではない。今育って来ている若手の、これからギターを覚えたいと思っているミュージシャンにとっては素晴らしいアルターナティブの楽器だと思う。とにかく甘いトーンと、素晴らしいサステインを持った楽器だ。
PCI: そうですね。先日のアンプ・ショウで音を聞かせてもらいました。素晴らしかったです!
一年で何本くらいラップスティール・ギターを製作しているのですか?
Bill: 平均して月に10本は製作するよう頑張っている。一年でだいたい120本位が上限だ。
PCI: 上限ですか?
Bill: 過去数年間では、実際それほど製作できなかったが、それが僕達の目標だ。一年で120本位のラップスティールと、同じ位のスタンダード・エレクトリック・ギターを製作したい。それから先はどうなるか見てみたい。
PCI: 新しい商品を加える予定は近い将来ありますか?
Bill: もう数年間製作している、僕が最初に持ったフェンダーのストラトキャスターを元に造ったウルトラ・トーン・ギターがある。ストラトの使い易さとスタイルを取り込んだ物を造りたかったし、それに僕は前からモズライトとジャガーのオフセットなボディーが好きだった。そこでボルト・オン・ギターのウルトラ・トーンを造った。良く出来たハイブリッドで、ダブル・カッタウェイ・ギターだ。でもラップスティールのトーンとサステインに魅了された多くのギターリストから、同じ構造デザイン、ピックアップ配置で、ラップスティールと同じトーンとサステインを持ったラウンド・ネックのエレクトリック・ギターをデザインして欲しいと頼まれている。それはセット・イン・ネックのギターで、同じトーン・チェンバーのデザインだが、カットアウェイになる。このギターは可能な限りベンに造ったラップスティールと、エレクトリック・ハワイアンに近くして、エレクトリック・ギターからでも、大きなサステインとトーンを得られるようデザインしている。何年に亘っていっしょにギター・ワークをしているお客さんの中にライ・クーダー(Ry
Cooder)がいるが、彼は素晴らしいスライド プレーヤーだ。彼も僕のエレクトリック・ラップスティールのトーンに惚れているが、彼はラウンドネック・スライドを演奏する事から、彼も「このラップスティールと同じ様なエレクトリック・ギターを絶対デザインしなければ駄目だ。」と言う中の一人だ。それで今はそれにも取り組んでいる。
PCI: これで質問したかった事はだいたいカバーできました。最後に聞きたいのですが、ロサンゼルスで生まれですか?
Bill: そう。生まれも育ちもロサンゼルスだ。1964年に生まれた。
PCI: 1964年という事は。。。
Bill: だた「そうですか。」と答えてくれれば良いよ。(笑い)
PCI: ギターを演奏し始めたのはいつ頃ですか?
Bill: 高校の時にギターを演奏し始めた。15才位の時だ。友達とガレージバンドをやっていた。いつも集まってジャムしていた。
PCI: どの様なタイプの音楽を演奏していたのですか?
Bill: たいていはACDC、Led Zeppelin やJimmy Hendrixの曲をカバーしていた。僕がギターとロックンロールに惚れ込むきっかけとなったバンドだ。そこから始まり、18才の時に見習いとして、ギター・リペアや製作を学ぶようになり、とにかくそれを極めたくなった。今はギターの演奏は趣味
で、僕にとってのメインはギターの製作と楽器のリペアの仕事だ。
PCI: では最近ではどの様な音楽を聞いているのですか?
Bill: 最近でもまだクラシック・ロックが好きだ。Led Zeppelinは大好きで、どんなに聞いても聞き足りない。新しいバンドでは
Stone Temple Pilots とRed Hot Chili Peppersが好きだ。ベン・ハーパーの音楽も大好きだ。彼のギターを手がけているからだけではなく、とにかく彼は、歌詞も曲も素晴らしい曲を書く人だ。
PCI: 素晴らしい! 最後に、我々のウェブサイトの読者にメッセージはありませんか?7万人近い読者がいます!
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Bill: ラップスティールを経験する時だ! 僕は2001年に日本を訪ねた事が有る。ベン・ハーパーが日本公演をした時に誘われて同行したんだ!
東京に行き、ベンはキャットクラブと他にも4つの会場で演奏し、その他3都市を回った。彼が演奏したのは東京、大阪と名古屋だ。どれも素晴らしい都市だった!
日本への旅は非常に楽しかった! 誰もが素晴らしくて、実は僕の妻の祖父母も日本出身なんだ。日本食も前から大好きだ!是非又戻りたいな。
PCI: 有り難うございました!(7/8/2005)
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