クラスA回路に関する説明

よく「このアンプはクラスA回路か?」と聞かれることがあります。 クラスA回路については多くの誤解がある様です。今回Dr.Zにその説明をしてもらいましたので参考にしてください。


PCI:「日本のお客さんよりMAZ-38はクラスA回路かどうかという問い合わせが来ていますが、説明して下さい。」
Dr.Z:「これはシンプルな質問ですが答えはシンプルには行きません。 VOXは回路のクラスについて自分自身で発表やアナウンスをしたことは無いのに、長い間VOX AC-30はクラスAとして信じられて来ました。 VOX AC-30のトーンはクラスAとして論評されてきました。 でも実際はクラスA回路ではありません。 MAZ-38も他のどのEL-84管使用のアンプも”クラスA トーン”の音としてユーザーには知られていますが、技術的にはクラスA回路ではあり得ません。 簡単に言うと、MAZ-38は陰極バイアスされた、VOXと同じネガティブ・フィードバックの無いアウトプットとご理解下さい。 4つのEL-84管から約40watt得る為、物理的にクラスA回路にすることは不可能なのです。 MATCHLESSも同様にクラスAオペレーションとして知られていますが、間違いです。 クラスA回路ではありません。 呼称に惑わされずに、実際に音がどうかで製品を選んで下さい。」
PCI:「それでは、VOX AC-30やMATCHLESSは、クラス何という回路なんですか? クラスABですか?」
Dr.Z:「VOX AC-30もMATCHLESS DC-30もMAZ-38も全て同様なアウトプットチューブの設計になっており、ネガティブフィードバックの無い、陰極バイアスのクラスA/Bです。」
PCI:「同様な設計の中で、MAZ-38とVOXやMATCHLESSとの違い、特徴は何でしょうか?」
Dr.Z:「オリジナルのVOXの設計がMATCHLESS やMAZ-38のベースになっています。 もともとMATCHLESSはVOXの再現を目指したアンプですから当然ですね。 MAZ-38は、プリアンプの設計に違いがあります。 MAZ-38はローをタイトにしながらもっとウォームなトーンになる様に設計しました。  また、豊かなクリーントーンのためにリバーブを加えました。 そして広い範囲、用途で使用できる様にマスターボリュームも付けました。」
PCI:「あなたの説明によると、クラスA回路というアンプは存在しないかの様ですが?」
Dr.Z:「ちゃんとありますよ。 一つのアウトプット・チューブしかないものであればクラスA回路にできます。 例えばFender Champ。 本当のクラスA回路のアンプというのは、全て小さいパワーのアンプになります。」
PCI:「MAZ-38も40 Wattでなくてもっと小さな出力になればクラスA回路にできるということですか?」
Dr.Z:「そうですね。 どのクラスの回路でどの様にアンプを設計するかとなると、色々計算が必要です。 まず、使用するチューブのプレートカーブを確認します。 それから、影響されるインピーダンスのラインから負荷曲線を導きだします。 この曲線はバイアス電流やプレート電圧の交差しているところを通じ反射波信号などにも影響されます。 ある選択されたプレート電圧で、負荷曲線はプレート消費カーブに接触しなければなりません。 このポイントに対応する電流がクラスA回路のアンプをバイアスするのに要求されるのです。 これは簡単に言うと、低いプレート電圧で高いプレート電流が要求されるということなんです。 例えば、200Vで100mA。 この条件では事実上ハイボルテージが必要なプリアンプやリバーブ回路などは設計できないんです。 EL-84を4本使ってクラスA回路アンプを設計するのなら、出力は20watt以下でないと本当の意味でのクラスA回路アンプを作ることは不可能なんです。 クラスA回路のアンプというのは、クラスAの様なトーンの出るアンプという意味の場合がほとんどです。」