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2001年11月 7日
第2回『私とベース』
先日、ワタクシ中條36歳ベイス男は、PCIさんも出展なさりました楽器フェアなるものに行って参りました。 やはり楽器フェアと言うけありまして、其処かしこに陳列鎮座まします楽器様達の数々、「俺はいいよ~」「私イイ音でるわよん」と己を主張しまくってます。
また、各ブースのメーカー関係者さん達はやはり自らが関わる楽器君、楽器ちゃん達を盛り立てようと様々な工夫を凝らし、「お客さんこいつぁよく働きますよ」「お兄さんイイ娘いまっせ」と言ったとか言わないとか(そんな品の無い現場ではありません)。 もとい、「ここはですね、こうしてこうするとこうなんですよ」「どうですか?やっぱりイイでしょう」「ちょっと試してみませんか?」と親切丁寧にお客様と接していたのでした。
そんな現場にちょっとしたベイスマンのワタクシもお邪魔してみたのですが、普段、楽器店に頻繁に足を運ぶ方ではないので、あまりのツールの多さに眩暈すら覚える有様。 よろめきつつ、ふと「そうだ、今度のコラムは私をクラクラさせる楽器様について書こう」とこの楽器フェアには関係あるんだか無いんだか分かりませんが、とにかく思いついたのでした。
さて、そんな訳で楽器の話ですが。
演奏家の皆さんは大抵の場合、その各自の専門楽器なるものがあるわけでして、その楽器を相方(身体の一部と化した方も多いと思いますが)とするには様々なきっかけがあったと思われます。
そして、それはワタクシの場合、ベイスマンにありがちな『ギターをやるはずだったのに...』的なものでした。 この場合、大抵の『ギターをやるはずだったのに...』の人達は『ジャンケンで負けたから』あるいは『ギターをやるつもりだったんだけどさぁ、ベイスは弦の数が少ないので楽かなと思って』という理由が2000年度の統計の87%を占めていたそうです。(嘘)
不肖中條におきましてはこの『ベイスと付き合うことになった』理由がこの上記の2パターンとは異なっておりまして、思い起こすことウン年前の中学3年の春、友人である同級生の井上君、奥川君と共に「Bandヤロウゼ」と発作的に意気投合した際の約束「僕はギターね」「僕はベースがいいなぁ」「僕は歌を歌うよ、ギターも買いたいけど」が揺れ動く思春期の性によって守られなかった...という事に起因しているのです。
つまり、当初予定されていた『井上君はベース』という事が何故か、ある日の井上君宅への訪問で覆ってしまったのです。 その日、井上君宅を訪れた僕と奥川君のクソがき連は、何やらニヤケながら井上君が取り出した物体を見て唖然としたのです。 「いやぁ、ベース買いに行ったんだけどさぁ、この黒いヤツがカッコ良くってさぁ」 僕は平静を装いながら、その明らかにベースとは異なる細い弦が6本張ってある物体を見て「そっ、そうなんだ」「やっぱレスポール、カッコイイよな」と言い、でも心の中で「じゃぁベースはどうすんだよ?」と思っていたのです。
当時、我らの同級生にはまだドラムをやるというガッツのある子がいなかったので(自宅にセットを置いて叩けるという状況は、なかなか親御さんの理解を得られません)、とりあえずはギター、ベース、歌という組み合わせでスタートする筈でした。 そして、悪い事は重なる物で、井上君は大してギターを弾けるとは思っていなかったのに、その手にあるレスポールからは、流暢なフレーズが流れ出ているではありませんか。 つい先日までの打倒Fコードが嘘のようです。当然ながらギターフレーズ定番の『スモーク・オン・ザ・ワラー』もお手の物のごとく習得してしまっています。 しかし、井上君はそんな空気を察したのか「僕はギター買っちゃったけど、いいじゃない」「そうだ、僕、リズムギターやるから、中條君、リードギターで良いんじゃないの」と良く分からん言い訳をぶち上げていました。 あまり納得できない言葉を胸に家路につく僕は、その時はまだ数週間後に訪れる転機をまだ知る由も無かったのです。
その日、我々3人馬鹿トリオは市内の映画館で上映されたある一本の映画を観に行ったのです。 タイトルは『ラスト・ワルツ』。 そうです、往年の名バンド、ザ・バンドの最後を描いた映画です。 ザ・バンドと彼らに関わった様々なアーティストがご出演なさられているのですが、この映画で何故かワタクシの目と耳を惹きつけたのは、R・ロバートソンでもE・クラプトンでもなく誰あろうザ・バンドのベイスマン、『リック・ダンコ』氏(合掌)であったのです。 それまで、ギターリストになる事こそが私の生涯の目標と固く決意していた心の中の何かが壊れたのです。 「ベイスってイカス」。 ギター>ベイスがいつのまにかギター=ベイス、そして映画が終わる頃にはすっかりギター<ベイスに変わってしまっていたのでした。 そして映画館から空ろな目つきで出てきたワタクシは、同じく空ろな目をしている井上君と奥川君に、こうのたまったのでした「僕、ベイスをやってみようかと思ってしまったんだよ」。
そして、それから暫くしてワタクシは幼少時から天体望遠鏡を買うために貯金していた大枚7萬円を握り締め、当時のエレキの聖地であった御茶ノ水(電車で1時間30分)に向かうことになったのでした。 つづく
次回、予告
ジャズ・ベースを買うことになった中條君はどのような経緯で其処に至ったか。
投稿者 admin : 08:27