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2008年07月12日
第13回 : スティーブジョーダン
とても好きなミュージシャンの一人に、スティーブジョーダンという人がいる。僕が個人的に好きなのは、ディビッドサンボーンのアルバムや、ドングロルニックのアルバムでのドラムのプレイなのだが、エリッククラプトンのツアーに参加したり、キースリチャーズのアルバムでは、ベースを弾いたりプロデューサーとしてもクレジットされていて、ジョンメイヤーのアルバムでは、とうとうプロデューサーとしてグラミー賞を受賞してしまった。
そんな彼が、エンジニアで元ルームメートの村川順一氏が一緒に仕事をしている事を知ったのは、10日程前の事だっただろうか? 彼のミクシーの日記を読んでみると、長時間に渡る作業後、さんざん迷ったあげく、彼が滞在している ビバリーヒルズ にある、 ブルーススプリングスティーン 所有の別荘まで送って行った事などが書いてあった。
そこでとってもミーハーな自分は、だめもとで一日の最後にスティーブを滞在先まで送って行くのと引き換えにスタジオに遊びに行っても良いかをジュン氏に聞いてみた。
ジュン氏から電話が有ったのは、それからしばらくたってしてから。『オーイ、マコト、何やってる? スティーブにお前の事を話したら、Come on in (来ても良いぞ)とおっしゃている。どうする?』 『マジで? 今丁度 ギグが終わった所だから、速攻で行かして貰います。』『場所は住宅地の中にあるスタジオでアドレスはこれこれで。』『オッケー有り難う。じゃあ後で。』
言われた通りのアドレスにたどり着くも、外からはスタジオがある様には全然見えない場所。『着きましたよ。』と電話すると直ぐにわざわざ外まで出迎えに来てくれた。『ここは、ストーンズのテックとかをやってる人の家で、中に入ると信じられない様な状態になってるから。』 その言葉を裏切らないビンテージの機材の数々。まずミックスエンジニアのドンスミス、そして、プロデューサーのスティーブジョーダンにも紹介してもらい、最初少し緊張したが、直ぐに打ち解けて、色々話が出来る様になっていった。
今回彼は奥さんとのユニット Verb のミックスに来ていたのだが、最初の3日程は色々と機材トラブルなどがあり、中々作業が進めれなかったとの事。実際ビンテージの機材は、機嫌が悪いと色々ノイズが出たりして大変そうだった。それらを時には活を入れ、ぶっ叩きながら作業を続行させていたのを目撃した時は、思わず爆笑してしまった。
カッコイイ帽子を被り、凄い勢いで頭を振りながら曲に没頭して作業をすすめるドンスミス(キースリチャーズのアルバムのエンジニアはこの人です)。しばらくしてスティーブから OK が出て、細かい修正は、アシスタントエンジニアのジュン氏に任せ『じゃあ明日。』と言い残し立ち去って行く 。ちなみに ドン & ジュン のコンビでの仕事は、今までかなり一緒にやっていて、ジョンメレンキャンプの最新作もこの二人でインディアナまで行って録ってきたそうです。このセッションもスティーブが直接スタジオオーナーに頼んで、ジュン氏に付いてもらったとの事。
細かい部分を数カ所修正し、いくつかのバージョンをハーフインチに落として終了かと思ったのもつかの間、次の日にやる曲を立ち上げバランスを取り始める。しかも爆音で。『このトラックはここの横のフェーダーに立ち上げたいんだけど。あっでもここのチャンネルは NG なんだっけ? じゃあこっちに持ってこよう。』 『これは民生が弾いたギターのトラックなんだぜ。』 『で、こっちのリバースギターのトラックはエコープレックスか何かかけたいな、ここのスタジオにあったけ?』 てな感じで作業はどんどん進んで行き、数時間後 『後は、明日ドンにやってもらおう。今日やった分を CD に焼いてくれ。』これでスティーブは終了。『じゃあスティーブ送って行くぜ。』とスタジオを後にする。
車に乗るなり、『CD 聞きたいんだけど良いかなあ。』『勿論。』 で即、今日落とした物を聞き直している。これは気持ちが良く解る。とりあえずカーステレオなりホームステレオなりとにかく色んなシステムで聞いてみたいものなのだ。だがスティーブ全部聞き終わらない内に、うたた寝を仕始めた。運転している自分の右肩に頭を乗せて超気持ち良さそうに。しかし非常に残念ながら、この方はおっさんであり、全然ドキドキしない。可愛い女の子なら良かったのに。。(笑)
翌日、車の中で ボブマレーを爆音で掛けながらご機嫌なスティーブ。『これ、どのアルバム?凄いね』『だろ、これは1976年にアポロシアターで行われたライブ盤だ。』(たぶんブートレッグでしょう。) しばし聞き入る二人。『これ聞くと人生変わるぜ。』とスティーブ。『鞄の中にラップトップ入ってるんだけど、もしよかったらコピーさせてもらえない?』『だめだ。』『えっ?』『これはだめなんだ。』 『OK.』
その翌日は、スライアンドファミリーストーンズのMix をばらしたものを聞く。これはもちろん普通の人は持っていてはいけない代物なので、勿論コーピーさせてくれとは頼めない。『ほらこれはオリジナルのキー&テンポなんだぜ。』どういうことか聞いてみると、この当時はラジオのDJ が、レコードをかける時に回転を速める事がよくあって、その流れで、ミックスダウンの時に、レコーディング時よりテープの回転を速めてミックスする事があったそうなのだ。この曲は結局ミックスの時に半音キーが上がったんだ。成る程。そういえばアナログレコーダーには、回転スピードを変えられる機能がついていた事を思い出すも、そんな技を使っていた事はこの話を聞くまで知らなかった。
ラジオを聞いていた時、たまたま ジェフポーカロが叩いた曲が流れて、スティーブが、『オー、マイブラザー、ジェフ!』と叫んだ時、偶然ジェフが通っていたハイスクールの目の前を車で通っていた事もあった。
以前にグラミー賞で演奏した事があって、その時スティーブもピノパラディーノと、ジョンメイヤーのトリオで出てた時の事を思い出し 『そーいえばさ、あの時凄い不思議な形のドラムセット使ってたじゃん?』 『trixon drum の事だな。あれはロスガーフィールドに借りたんだ。奴のコレクションは半端じゃないぜ。レコーディングでも良く彼の所から色々借りてる。』 『じゃあ自分では、trixon は持ってないんだ?』 『そう、買いたいんだけど、あれ以来値段がかなり上がったから買えないんだよ。しかも Trixon のコレクターのサイトではあのときの写真も勝手に使われててよー。まったく冗談じゃないぜ。』 ハハハそれは、まさに自分で自分の首を絞めてしまったという事? でもあの時あのキットで登場してかなりインパクトあったから良かったのではないか?
それをきっかけにドラム機材についても少し話をするようになった。『ビンテージの グレッチ か リーディー のジャズキットが、欲しいんだけどニューヨークではもの凄く高い。』とか、『ジョンメイヤーの Gravity という曲では、ブレイディー の10インチでプライウッドのスネアを使ったんだぜ。』や、『グレックエリコと友達になってからは、スライの名曲の録音で使われた、ものすごく古いハイハットを貰ったんだ。』など色々言ってました。
ランチもコーヒーもプロデューサー自ら買いに行く。『あそこのメキシカンは最高だぜ。』じゃあこれとこれと5人分。でもって 『よーし、ランチタイムだ。ほらジュンも一日中スタジオに閉じこもってないで、たまには外に出て来い。』 スタジオの庭にあるテーブルに陣取る。スティーブ、ドン、スタジオオーナーのデイブ、ジュン氏、そして自分。で 『イヤー、あんときはどうのこうの。で、あいつがどうのこうの。』『わははは。』 またまた機材話で『なんでみんなあれとかこれとか使うんだろうな?』 『あんなのくそだぜ。』『がははは。』 とか異常に盛り上がっている。(ゴメンなさい。個人や会社の名誉に関わるので、ここではこれ以上詳しくは書けません。)(笑)
肝心のミックスの方はその翌日、突然ドンスミスが吐血して病院送りになった為、皆一瞬凍りつき、結局 ジュン氏がメインを引き継いでやってましたが、色々大変そうでした。スティーブは、『ジュン、このトラックは EMI (ビートルズなどが使っていた EMI に卓のストリップバージョン)じゃなくて EMT(プレートリバーブ) をかますんだぜ。』 『このベースには、ラングのEQ を使ってくれ。』 『この曲は、ステレオバスのコンプはフェアチャイルドの代わりに、ニーブだ。』 などとリクエストを数々上げて行く、その度一歩も引かず正直な自分の意見をぶつけるジュン氏。
ドンがまだいたときも機材トラブルで作業が何回か停止したり。でもドンは外で読書にふけり 『だめなときは、何やってもだめ。』 『時にはロックの神が降りて来るのを待たないと、良いミックスは出来ないんだ。』 などと全く焦る事なく意味深で不思議な発言をしてました。
また、ドンは盲目の小さな愛犬をスタジオに連れてきていて、凄く可愛かったです。
そんなこんなで自分にとっては非常に楽しい時間を過ごさせてもらいました。また何か面白い事があれば、その時にまたレポートしたいと思います。その時まで、皆様お元気で。
See you next time!!
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投稿者 makoto : 2008年07月12日 18:42