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2007年02月11日

第10回 : Gwen Stefani tour - アナハイム、カリフォルニア

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Anaheim Pond


 L.A. に戻り直ぐにスーツケースを修理可能かエアーライン指定の店に持って行く。出来ない事は無いが時間は掛かると言う。待っているひまは無い。仕方無く直ぐに新しい物を買う。

 最初の Radio show は、L.A. から南へ1時間程行ったグエェンの地元アナハイムにあるアナハイムポンドという会場。この Radio show という物は、ラジオステーションに行って局の小さなスタジオで演奏するという物ではなく、かなり大きめのアリーナ、スタジアムなどで、他のアーティストと共に出演するラジオ局主催の普通のコンサートだと思って欲しい。
この日は KISS-FM のイベントで、自分達の前は、スヌープ、自分達の後は、スティービーワンダーという顔ぶれだった。他のミュージシァン、ダンサーなど共にL.A.から Anaheim へ車で移動、午後三時頃アナハイムヒルトンへ到着、チェックイン。
 移動中に気付いたのだがラジオでセカンドシングルが馬鹿の様に掛かり始める。90分程の車内のラジオで3−4回はかかった。もういいやめて欲しい。せめてリラックスしていたい移動中まで演奏しなければいけない曲を何回も何回もFMラジオから聞かなくてはいけないのは苦痛だ。

 アナハイムヒルトンホテルは、毎年1月に行われる Winter NAMM に来た事のある人には直ぐに解ってもらえると思うが、コンベンションセンターの直ぐ横にある。何故かエレベーターから一番遠い部屋があてがわれる。何か言えばすぐに変えてもらえるだろうが、正直部屋などどうでもいい。直ぐに会場入りして楽器をチェックするの方が先だ。
 このころから、グエェンはサウンドチェック嫌いで同じ様なショウが続く場合めったに行われない事。飛行機移動が多く、全てを機材を空輸出来ず、ドラムセットは、現地レンタルが多い事。テックのTS は、毎回違うドラムセットを同じ様にセットアップ出来ない事。などが解ってくる。
 はっきりいって、正しくセットされてない物を本番前、前の出演者が演奏する中そのステージ裏もしくは、脇で暗闇の中、数多く既にセットアップされたマイクスタンドなどと戦いながら自分にとって正しい場所にセットし直す事ほど、苦痛な作業は無い。
 
 この日は運良く LA から運転してくれたショファーは、ホテルで待機していたので、自分一人だけ先に会場まで連れて行ってもらい機材をチェックする。既に朝から搬入、セットアップ、サウンドチェックを終えたクルーの姿は無い。パスをもらいドラムセットに向かう。(TS そうじゃないだろう、タムはもっと傾けて、手前に来る様に、シンバルもそんなに水平じゃなくて、少し角度つけようぜ。)と一人ぶつぶつ言いながら、一つ一つ直して行く。正しく組まれてない物を直すのは、非常にめんどくさい作業なのだ。ドラム、シンバルが、定位置についたら、マイクの位置も直さなくてはいけない。この時に平行作業でドラムのチューニングも進めて行く。
 
 ちなみに自分には、一つ一つのドラムに対して好みのピッチが有り、ドラムとドラム間の音程差も好みのインターバルがある。更に各ドラムのディケイ、キャラクターなどが揃い、完璧にチューンされたものを、上から下まで叩いてみると、本当に気持ち良いレゾナンスが得られる事が出来る。ここまでを限られた時間内で行うのは、本当に難しい。

 全て終わると待機してくれた車を呼び、ホテルへ戻る。疲れる作業だが、ここでやっておいた方が、本番直前に時間も十分なライトが無い中、林列するスタンドの狭間で、DW 5000 裏のマジックテープ VS カーペット達の格闘をして疲れるよりましだ。(解るかなー?)そしてなによりセッティング、チューニングの事で心配する事無く、演奏に集中する事が出来る。
 ホテルに戻ると少しリラックスして軽食をとり、集合時間にロビーへ。ダンサー達は既に、ヘアー、メイクアップ、スタイリスト達の部屋で、仕事がなされている。こういう時は本当に自分は男でラッキーだったと思う。
 再び車で10分程の会場へ。楽屋口から入るのだが、思ってたよりセキュリーティーが厳しい。ただ自分は既に一回来ていてパスなどはその時に貰っていたので、比較的すんなり入れてくれた。楽屋に入ると 直ぐにドラムテックのTS が、『Hey, Makoto. Do you want to check out set up? (ヘイ マコト、セットアップ、チェックしに来るかい?)』 と聞きにくる。そこで一言。『I already did it man!!(既に済んでるぜ!!)』  『O.K.----そっか先に来て既にやったんだ? てっきり今日は自分がすごく仕事をパーフェクトに出来てるのかと勘違いしてた。』と無茶苦茶笑える事を言う。

 楽屋の廊下で リッキーローソン に会った。『今度ベイビーフェイスと日本に行くんだ。』 と言っていた。今日はスティービーワンダーのバンドで出るらしい。電話番号を交換する。スヌープの演奏を少しだけステージ脇から見に行く。小柄な黒人ダンサーが二人、凄い勢いで踊りまくっている。あの動きにはグウェンのダンサー達もびっくりしていた。
 楽屋に戻りしばらくするとステージマネージャーのジミーが呼びにくる。『時間だぞ、Are you guys ready?』 ステージに向かう通路の向こう側から、ショーを終えたばかりスヌープが、3−4人のもの凄い面構えのボディーガード達に囲まれながら、こちらに向かってくる。奴らの威圧力は半端ではない。普通ならすれ違って終わりだが、『そこ全員動くな!!』 とこちら側を完全に壁際に追いやって、自分達は通路のど真ん中を幅を利かせて通って行く。これには、こちら側がもっとごついボディーガードを5−6人雇わない限り勝ち目は無いだろう。

 ショー自体はとてもうまく行った。生放送も無かったからか、皆リラックスして楽しめていたと思う。グウェンの地元だけあって客席は盛り上がりに盛り上がった。さすがだなと思った。自分達の出番が終わると、一度楽屋に戻りスティービーワンダーのセットをステージ脇から少し見た。バンドメンバーは、リッキーローソン、アレックスアル、フィルアップチャーチなどそうそうたるメンバーだった。途中フィルアップチャーチのアンプの調子が悪かったらしく、楽器と戦っているのが、はっきりと解った。あれは見てる方も辛いが、演奏してる方はもっと辛いはずだ。フィルには悪いけど(あー自分は事前に全てチェックしておいて良かった。)と思ってしまう。
 会場からホテルに帰る車を待っていると、懐かしい顔を見かける。昔スラム街のJam session で知り合ったある若手サックスプレーヤーで、『何やってんだよ、こんなとこで?』 と声をかけると、『今日はスヌープのバンドのステージだったんだ。』 と言う。『Oh Really? That's great man!』 なんだかちょっと嬉しくなってしまう。

 ヒルトンに戻りホテルのバーで、今回の Radio show から加わったベルギー出身で新しいツアーマネージャーのフィッツジョイ、バンドメンバー、クルー達と軽く呑む。翌日は、カリフォルニア州、サクラメントでのショウだ。冗談で、『俺もクルーと一緒に移動しようかな?そうすればわざわざ前もって一人会場にチェックしに行かなくても済むだろ?』 と冗談まじりに言うと 『それだけは、やめといた方がいいぞ。今 1:30am だよな? 3時間後の 4:30 am には、ここを出発して、オンタリオ空港からから 6:30 am の飛行機に乗らなければいけないし、サクラメントに着いたらホテルに行かずに会場に直行して、8:30 am からの搬入、セットアップ、ラインチェックをしてから、ようやくホテルにチェックインして仮眠、数時間寝たら本番の為に会場入り、という強行スケジュール。それでも良いなら一緒に来るかい?』 本気かそれ?可哀想に。それは確かにそれは辛い。やはりもう少し寝て、午後の飛行機で移動する事にしよう。(続く、次回はサクラメントです。)


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投稿者 makoto : 2007年02月11日 20:03

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