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2007年01月07日
第9回 : Gwen Stefani tour - ローマ、イタリア. part-2
イギリスから送られて来たグレッチのドラムセット。
テレビのアワード賞など朝入って夜本番などという一日がかりの仕事の時は、サウンドチェックの時間にもよるが、なるべく昼寝をするようにしている。この日は最悪の通しリハを終えて、ワインを呑みながらのランチを終え、プロダクションオフィスに行って自分のコンピューターを繋いで、メールをチェックした後、手、腕、肩などをマッサージをしてくれるブースを見つけたので、少しマッサージしてもらう。久々に気持ち良いーっ!!と感動。その後ヘアー、メイク、衣装の連中が、慌ただしく楽屋に入って来て本番。
実際この日ほど、どうなるか分からない不安を持ちながらの生放送本番は他には無かったと思う。一つ前のバンドが始まる頃にステージに向かう。コマーシャルに入りうす暗いステージ上で舞台転換。楽器などが、全てクルーによりセットアップされた後、ドラムライザー上の自分の位置に付く。インイヤーモニターを耳の中に押し込むと直ぐにモニターエンジニアのケビンが話しかけてくる。
"Hey Makoto, Do you hear me? If you hear me talk me back with your headset."
『ヘイ、マコト、聞こえてる? 聞こえたらヘッドセットマイクを使って返事してくれ。』
『ケビン、聞こえてるぜ。』
『Good!! 今からバッキングトラックが聞こえるかチェックする。エリック、準備はいいか?』
ここでマニュピレーターのエリックの声も加わってくる。ちなみにこの日は二人ともステージ裏の見えない場所に陣取っているため声のやりとりのみで、ハンドゼスチャーは使えない。
エリックが 『R u ready? 』と言ってトラックをスタートさせる。
『ケビン、バッキングトラックの音がまだまだ小さい。特にクリックトラックをもっと上げてくれ。』
『O.K. エリック!! そっちのDPのミキサー上でもクリックをもっと上げられるか?』
『O.K. やってみる』
『あとちょっと聞いた感じ自分のオーバーヘッドが結構返ってきてるみたいだけど、プレイが始まるとトラックがカバーされて聞こえなくなる可能性があるから少し下げてくれないか。』
『O.K. これでどうだ?』
『良くなってきてるが、まだまだクリックが足りない。』
ここで、『他のミュージシャンのモニターミックスも最終チェックし始める、その後で戻ってくる。』
(仕方無いな。)
ここまで20−30秒ほど。暗転したステージ上で他のメンバーの最終チェックが進んで行く。そしてコマーシャルブレイクも終わり、悲しく時間切れ。
『ケビン!、エリック!』と呼びかけても反応は無い、、、、、それでも
『ケビン、エリック、とにかくクリックを上げてくれ。』と直前まで指示を出し続ける。返事は何も無い、、、、
そしてとうとうライティングが明るくなり、司会者によってアナウンスがあり、ステージマネージャーからのキューが来る。エリックがトラックをスタートさせる。DPにプリントされた彼の声のカウントで、曲が始まる。『Waiting, two, 1, 2, 3, 4,』
自分の心臓の音がはっきりと分かる。
曲が始まる、オーディエンスも盛り上がっている。音は?バランスは?大丈夫だ。全て聞こえる。そして3分50秒のとても短い演奏が終わる。凄く良かった。この瞬間の為に大西洋渡ってはるばる来たかいがあった。あの短い時間でどうやったか知らないが、必要な物は全て聞こえたし、会場も盛り上がっていた。演奏が終わりステージの裏に回ると直ぐにインイヤーを回収しに来たケビンが抱き合いながら聞いてくる。 『どうだった?全部きこえたか?』 『心配したけど最高だった! お前凄い良い仕事したな。』 『だろ、たまには俺を信用しろって!!』 そんなやりとりだったと思う。最後の一言は、二人合わせて『今夜はとことん呑むぞ!!!』だったはずだ。とりあえずヨーロッパ中に放送事故を流すのは、なんとか免れたようだった。
楽屋に戻ると気の早い連中がシャンペンを開けている。メンバー、スタッフなと乾杯して、3、4杯呑んだだろうか? 楽屋に用意されていたワインも開けてそのまま持って帰る。そしてホテルへ。その内誰かが『あっちのホテルでアフターパーティーがあるらしいぞ、行こうぜ。』と言い出しタクシーで移動。何故かまだ人が集まってなく、キッドロックが、どう見てもフェイクテツのおねーちゃんと仲良く呑んでいた。『ココはまだいまいちだな。他の場所に移動だ。』その後3、4カ所、移動して最後に行き着いた ソニー主催のパーティー会場は凄かった。ウエイトレス、バーテンダー、全てのイタリア人のサーバーはトップレスで、服の代わりにシルバーのペイントが体に塗ってある。ドラムテックのTSが呑み過ぎで奇声を上げながらバランスを失って、3階から2階への階段で倒れて、踊り場にあるカクテルが並んでいるテーブルにあやうく突っ込み、全てを破壊しそうになった。ケビンもエリックもご機嫌で呑み続けている。自分も銀色トップレスのウエートレスと踊り狂った。その内3人がいなくなっているのに気付き、その場で知り合った連中とタクシーでホテルに戻る。翌日二日酔いと戦いながら空港へ移動中の車の中、TSは捨てられた粗大ゴミの様にピクリともしない。話を聞くとホテルに戻るタクシー内で吐いて、運転手にイタリア語で罵倒されその場でひきずり下ろさせられたそうだ。自分も気付くと顔、腕、服などにシルバーのペイントが沢山ついている。『お前、銀色トップのおねーちゃんと笑顔で踊ってたから置いて帰ったぞ。あれからどーなったんだ?』 とエリックが茶々を入れてくる。その話を聞いていた他の連中も、『えーっ、マコトが、トップレスといちゃいちゃしてったって!?』 『やかましいわお前ら!!』という風にまるで、小学校の遠足の様な感じで、バスは空港へ向かう。
この話には、ちょっとしたおまけがあって、ローマの空港カウンターでチェックインしようとすると、真顔で『予約が入ってません。』と言われる。自分だけではない。ミュージシャン、ダンサー、クルー全員の名前が、予約リストに入ってないというのだ。さすがイタリア!! もう何が起こっても早々驚かない。エアーイタリアの女性は、『うちのミスでは無いので文句を言われても困る!』 と逆切れの状態。その場で途方に暮れて座り込む十数人のグループ。出発40分前ぐらいになりキャンセル待ちの様な扱いでようやく搭乗。そしてパリ経由でロスアンジェルスへ。ここまで来れば、ハハハさすがイタリア中々楽しませてくれるよねー。ぐらいにしか思わなくなってくる。
L.A. に帰ったら直ぐに新しいスーツケースを買いに行かなければいけない。これからアメリカでラジオステーション主催の他のアーティストとのジョイントコンサートが直ぐに始まる予定なのだ。
続く。
自分はほとんど映ってませんが、その時の映像です。
Makoto Izumitani
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コロシアム
投稿者 makoto : 2007年01月07日 15:53