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2006年11月 3日

第8回 : Gwen Stefani tour - ローマ、イタリア part-1

 いやーさっさと書かないとどんどん忘れていってしまう。最近はミッシングパーソンズの仕事などをやりました。これは非常に楽しかった。もちろんそれなりに色々とチャレンジも沢山有り、パートも超難解でした。でも終わってみると、Dale もとても気に入ってくれて達成感も大きかったです。その話を後日テリーボジオに会った時にすると、『僕はあのバンドではドラムだけじゃなくて曲も書いたからね〜。』と言っておりました。

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Missing Persons 2006 左から右へ Tom Witt (Bass), Andy Abad (Guitar), Makoto Izumitani (Drums), Dale Bozzio (Vocal), Ed Roth (Keyboards)


 話は戻って、グウェンとのイタリアでのハプニング。

 ツアーに出るまえにクルー(スタッフ)達に『ヨーロッパでどこが一番好きか?』と聞いてみると、『イタリア』 という答えが断トツで一位。『ホワイ? 理由は?』 と聞くと、『いやー飯はうまいし、住んでる人達の人柄もとても良い。最高。』と言う。その直後にアランホールズワースのツアードラマー、ジョーテイラーと話していて、『ヨーロッパは国によって特にイタリアなどは、話通り事が進まない事が多々あるから気をつけた方がいいぞ。』という話も聞いた。そう、そのまさしくそれが、起こってしまったのだった。

 アメリカンミュージックアワードから2日後、ロスからフランスまでエールフランス航空、フランスからイタリアまでアリイタリア航空への乗り継ぎ、パリのシャルル ド ゴール空港では、『あれ、ここの空港先週来た所だね。!?』なんて話しながら、ラウンジで過ごす。皆旅に慣れて来たようだ。いやこれだけしょっちゅう移動してれば慣れ無い方がおかしいのかもしれない。イタリアの空港に着くとなんと出て来たスーツケースが破損している。こういう場合どうなるのだろう? LA-Paris のエールフランス航空の責任か、もしくはParis- Rome のアリイタリア航空の責任か? クレームに行くと長い事待たされ、気付くと誰もいなくなっていた。あやうく一人空港に取り残されそうになる。あぶない、危ない。

 その後ホテルにチェックインして直ぐに皆でディナーに出かける。さんざん『イタリアは飯がうまい、旨い!』と聞かされているため、期待が広がる。『誰が何と言おうと俺はこっちの店でピツァを食う。』と一人で言い張る頑固者プロダクションマネージャーのジミーを残して、全員一致でホテルから徒歩3分ぐらいにあるレストランへ。適当にワイン、サラダ、前菜、パスタなどをオーダーする。数分後、ワイン、ブレッド、前菜が出てくる。『ん?うまい!!なんだこりぁ!!』と叫びそうになった。確かに旨い。ただのトマトとかの味が全然違う。これは素材の違いも大きいのかもしれない。出てくるもの全てが満足のいくものばかりで、全員超ハッピーで店を後にする。その後立ち寄ったカフェでは、デザートも超美味だった。ホテルの部屋の趣味も良く自分の中でイタリアの株は上がっていく。

 そして翌日、キヤヌの顔が少し暗い。話を聞くと、ディナーの後、地元の友達とギャンブル場に行って身ぐるみ剥がされて帰って来たようだ。怖ーっ!! 少し可哀想、いや自業自得かも。そして会場へ。今回の仕事は、MTV ヨーロッパミュージックアワードというヨーロッパ全体に生中継されるアワード賞での演奏するというもの。この日は放送日前日で、自分達だけで1時間半サウンドチェックが出来るという話だった。会場に入って直ぐに楽器の様子を見にステージに行く。イギリスから送られて来たドラムセットは、既にセットされている。が、クルーの様子がおかしい。話を聞くとLA から空輸した機材が、なんとまだ会場に着いてないとの事。ギターのエフェクト、自分のシンバルやスネアは勿論、マニュピレーターのオーディオインターフェイス、スイッチャー関係、インイヤーなどのモニター関係が着いていないというのだ。これは凄くまずい。会場のPAや放送のブロードキャスト用に、そこに既にあるドラム、キーボードなどのサウンドチェックは進んでいくが、ミュージシャンに必要なモニターが無くては、この広い会場でバッキングトラックとシンクしながら演奏は出来ない。

 さらに都合悪いことにミュージシャン全員がインイヤーモニターを使っていたため、モニタースピーカーは1つも用意されていない。舞台関係の確認後、仕方なくサイドフィルから聞こえてくるトラックにあわせてやってみるのもの、会場が広いためディレイがかかった音に合わせた演奏になってしまい、全然サウンドチェックにならない。L.A.から同行したブロードキャストの為のエンジニアによるとバックビートのスネアが、本来より遅れた位置で鳴り続けていたとか。
悪夢とはこのこと。持ち時間最後の15分でようやく機材が到着!!。急いでセッティングを開始するが、セッティングが終わる頃には、1時間半の持ち時間も終了。残りの調節は明日午前中に行われる通しリハで行われることに。

仕方なく楽屋に戻り、会場で用意されているランチを食べに行く事に。ところが、どこの5つ星レストランが出前して来たのかとびっくりしてしまった。ワイン、サラダ、フィッシュ、ステーキ全てが素晴らしい。何なんだこの国は旨い物を食べているとさっき起きた事はどうでも良くなってくる。いや正確に言うと良くは無いが、確実に心配は薄れて行く。

 その翌日、生放送当日、会場に入り楽屋に荷物を置いてトイレに行くと中でオジーオズボーンと出くわす。そしてそこにキッドロックが偶然入って来て、『ヘイ、メーン!!!』 とかなんとか言いながら、人が用を足してる横せまいトイレの中で2人で無茶苦茶もりあがっている。何と Rock なトイレなんだとニヤニヤしながら、楽屋に戻り、通しリハへ。

 通しリハはまさにその言葉通りで、アメリカンミュージックアワードとは比べ物にならないスピードで進んで行く。計10分ほどの中、ここでのゴールは、昨日出来なかったモニターの調節をすることだ。もちろん素晴らしいバランスは最初から期待していない。最低限演奏出来るレベルまで持って行く事だ。コーラス用のヘッドセットマイクは、都合良くモニターエンジニアとのコミュニケーション用に使われた。

 しかし残念なことに、モニターエンジニアにとっては、シンガーのモニターミックスを完成させるのが、最優先だったのと、こういったアワード賞ではワイヤレス機器の混信を防ぐため、トランスミッターとレシーバーが各バンド使い回しだったため、正しくない受信機が、間違ったミュージシャンに直前に渡されてちょっとした混乱が起きたりして、短い時間の中最低限のモニターバランスをとる事は残念ながら出来なかった。

 ドラマーにとって一番重要なクリックトラックが十分に聞こえないまま、通しリハは終了。モニターのケビンも一生懸命やっていたが、現地イタリア人クルーと通訳を挟んでの作業、時間がなさすぎた。最悪の空気が楽屋を流れる。このまま完全にシンクされていない最悪の演奏がヨーロッパ中に流されるのだけはなんとか避けたい。とりあえずあと最終的にどうして欲しいかをケビンに伝えて生放送本番時に、その通りのミックスになる事を願うしかない。

 その後落ち込んでも仕方ないので、また会場のレストランへ。何故ココへくると少し落ち着くのだろう。
その後楽屋では既に様々なアーティストへのインタビューが始まり、緊張感が高まり始める。


 そして本番へ。


続く。


Web Site はこちら http://www.makoto-izumitani.com

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Roma, Italy


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Studio

投稿者 Makoto Izumitani : 12:56