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Paul Jacson Jr. インタビュー (1/2)

 Photo by Taro Yoshida (Copyright 2003 Taro Yoshida)

Paul Jackson Jr. のご自宅にお邪魔しました。現在最も全米の音楽シーンで活躍されているスーパー・ギタリストと言っても過言では無いでしょう。数多くのレコーディングセッションで活躍するギタリストで、特にマイケル・ジャクソン(Michael Jackson) のアルバムでのプレイは高く評価されています。ジャズよりのトーンとフレーズを武器に、ロック、ファンクもこなします。絶妙なカッティングは、彼のトレードマーク! 5月にリリースされる新CDのレコーディングで超多忙だったそうですが、満足の行く物が出来たということでとてもリラックスされていました。 新CDのサウンドを聴きながらの和やかなインタビューとなりました。

Paulの素晴らしいカッティングのライヴ映像がこちらでで見られます。)

「あのリズム・カッティングの秘密」

PCI:今日は日本の読者からもすでにいくつかの質問を頂いています。 今までに名作と言われる多くのミュージシャンのアルバムにレコーディング参加されているスーパーギタリストにも関わらず、案外日本では貴方の情報は少ない様です。 まず、いつどこで生まれて、いつからギターを始められたか教えてください。

Paul:何でも聞いて下さい。 1959年にロサンゼルスのサウス・セントラルで生まれました。 12歳の時にギターを始めました。 そんなに練習した訳ではないのですが、まぁまぁ良く弾けた子供だったと思います。 15歳の時に神の啓示の様な物があり、僕はミュージシャンになるんだと決心したんです。 それから一日に6時間から10時間みっちりギターの練習をする様になりました。 その3年後の18歳の頃から色んなミュージシャンのレコーディングに参加する様になったんです。 本当に色んな人と演りました。 そして1988年に初めてのソロアルバム“I came to play”をリリースしました。 これが可能になったのも、一緒に仕事をさせて頂いた全ての人々のおかげです。 たいへん感謝しています。 

PCI:本日は日本の読者からの質問を用意して来ましたので、それに答えて頂くという形でインタビューを進めて行きたいと思います。 まず最初の方の質問ですが、彼は最近ロスに来られてカーク・ウェイラム(Kirk Whalum)のDVDを購入されたそうです。 貴方のギターが炸裂しててすごく良いライブビデオだったとのことです。(The Gospel According To Jazz Chapter 2)彼によると貴方のブルージーなソロ、アコギプレイ、そしてもちろん歯切れの良いリズムカットも披露していて貴方の魅力が満載とのことです。 

Paul:それはたいへん嬉しいコメントです。 

PCI:特にDVDの後半でクワイヤー(聖歌隊)とジャムる所は圧巻とのことです。 クワイヤーと合わせた上で難しかった点などはありましたか?

Paul:難しかった点は音楽的にではなく、とにかく大勢の人が居たということでした。 

PCI:何人集まったんですか?

Paul:クワイヤーは60人でした。 

PCI:60人も一緒にレコーディング、撮影ですか!?

Paul:最初は120人の予定だったんですよ。(笑) でも半分に減らしたんです。 60人の人たちが並んで一緒に何かをするというのは結構時間のかかるものです。 でも最終的にはたいへん上手く行きました。

PCI:撮影、レコーディングにはどれくらい時間がかかったんですか?

Paul:リハーサルに丸4日間かかりました。 でもたいへん楽しく良い物が出来たと思います。 

PCI:今度是非聴いてみたいと思います。 アンプはRiveraアンプを使って見えるんですか?

Paul:この時は使っていましたが、今はギブソンのゴールド・トーンをメインに使っています。 GA-15というステレオアンプでFender Twinの小さいタイプの様な物です。

PCI:今はほとんどそのギブソンのアンプを使ってみえるんですね。 ピックアップはバルトリーニ(Bartolini)を使ってみえますが、日本ではベースのピックアップとしては有名ですが、あまりギターでは使う人は少ないんです。 バルトリーニを使う理由は何でしょうか?

Paul:1981年にマイク・マクガイヤーと出会ったんです。 彼はギブソンのカスタムショップを管理している人です。 そういえばギブソンはバリー・アーツ・ギターをまた再スタートするそうですね。 マイクは昔バリー・アーツでリー・リトナー、ラリー・カールトンやジェイ・グレイドンにギターを作っていたんですよ。 僕はマイクにストラトタイプのギターで一番いい物を作ってくれと頼んだんです。 ちょうどその時バルトリーニがノイズをキャンセルするピックアップの試作品を作ったんです。 それを最初のマイクが作ったギターにつけてみた所、たいへん良かったのでそれからバルトリーニとの付きあいも始まったんですよ。 ベース用ピックアップでは有名なのは知っていますけど、ギター用のピックアップも良い物ですよ。

(PCI: 1981年に製作されたValley Art's Guitarは下記です。)

PCI:バルトリーニのプリアンプもピックアップと一緒に使ってるんですか? 

Paul:そうです。 

PCI:ギブソンのシグネチャーモデルはマイク・マクガイヤーが作ったんですね?

Paul:そうです。 Paul Jackson Jr. Model #ES-347というものです。 マイクが設計して全て僕の望み通りアレンジしてくれたんです。 大変弾き易いギターですよ。 今でも彼とは親しい付き合うをしています。 もう一度、彼に25年前に作ってもらったバリー・アーツ・ギターの製作を再現してもらおうと思ってます。 

PCI:それは楽しみですね。 では、80年代に一世を風靡した「あの」カッティング・サウンドのメイキングのアンプを教えてください。

Paul:最初はずっとブギのプリアンプとブギのアンプを使ってました。 それからパワーアンプはリベラのステレオ120ワットを使っていました。 その後は先程言いましたギブソンのゴールド・トーンをメインで使っています。

PCI:ピックはどんなのを使ってるんですか?

Paul:エクストラ・ヘビーを使ってます。 小さいピックだと指から離れてしまうので、大きめなエクストラ・ヘビーを使ってるんです。 特にリズムカッターの場合は十分なスペースと堅さが僕には必要なんです。 

PCI:特注のピックなんですか? 

Paul:僕の名前は入っていますが、ピック自体は標準品ですよ。 ジム・ダンロップのエクストラ・ヘビーです。 

PCI:読者からの次の質問ですが、ボスのペダル型マルチ・エフェクター(GT-3)を使ってると聞いたことがありますが、エンドース契約されてたんでしょうか?

Paul:ライブではGT-5を使っていました。 別にエンドース契約していた訳ではないんですが、ライブの場合たくさんの機材を持ち込めない時にはとても便利なんです。 簡単にセットアップ出来ますし、いくつかのよく使う音はプリセットされているので。 ただ、気に入らなかったのはやはりデジタルのサウンドであることですね。 便利さを取るか、アナログの音を取るか、ケースバイケースで使っていたんです。

PCI:それから、David Foster、Jay Graydon、Tommy LiPuma など数々の大物プロデューサーとの仕事に携わって来られましたが、ご自身から見て彼らからあなたを必要とされる理由は何だったと思われますか? たとえば貴方にしか出せない音があるとか? 

Paul:真実を言います。 大きな神のご加護、啓示が人間には人生のある時、ある場所で起こります。 僕や彼ら大物プロデューサーにとって、我々の仕事が神からの大きな思し召しだったのです。 確かに彼らは僕のプレイは気に入ってくれたのでしょうが、あの時あの場所で僕が一緒に仕事をすることが出来たというのは神の思し召しとしか思えません。 

PCI:なるほど。 では、その当時貴方のギターのスタイルは、他の人達に比べてどんな特徴があったと思われますか? 

Paul:リズム・プレイへのアプローチの仕方が他のギタリストとは少し異なっていたと思います。 リズムの中にハーモニーを入れ込むという僕のアプローチはユニークだったのかもしれません。 

PCI:日本のある読者は、貴方を以前青山ブルー・ノートで見たそうです。 Michael White(DS)やGerald Albright(SAX)とのライブで大変感動されたそうです。 またあの様なスタジオ・ミュージシャンでプロッジェクト組んで来日する様な計画は無いんでしょうか?

Paul:5月に新しいCDがリリースされるので、今年の夏以降はそういう計画を皆で話し合い実現したいと思います。 日本へはまた是非行きたいです。 

PCI:楽しみにしています。 日本には貴方のファンが多いんですよ。 特にスタジオ・ミュージシャン系の音が好きなギタリストはほとんど貴方のプレイをチェックしているはずです。 そういう日本のギタリストやファンの皆さんに、リズムカッティングで大切なこと、コツなんかをアドバイス頂けますでしょうか?

Paul:リズムカッティングで最も大事なことはリードプレイと同じなんです。それはサウンドその物です。 そしてそのサウンドの根源は指から来るのではありません。 貴方の頭、心から来るんです。 もし貴方が僕とスティーブ・ルカサー、レイ・パーカーJr.、ジェイ・グレイドン、マイケル・ランドー、ラリー・カールトン、ティム・ピアース、スティーブ・バイを選んでまったく同じアンプと同じギターを全員に渡したとしましょう。 一人一人全員がまったく違うサウンドを奏でるでしょう。 それがリズムカッティングだとしても。サウンドは頭から発せられるからです。 もちろんテクニックや指使いは頭に描いたサウンドを実現するために大切な物ですが、まず最初に頭の中でどんなサウンドが聴こえるのか、それが一番重要なことなんです。 

PCI:まずギタリストは頭の中でどんなサウンドを作るのかというコンセプトを持つことが大切だということですね。 

Paul:その通りです。