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チューブアンプについて日米のエキスパートが語る!

ドクターMusic編 (1/2)

下記の3人の日米チューブアンプのエキスパート達に語って頂いてます。

第1回:RIVERA by Mr. Paul Rivera (USA)
第2回:Groove Tubes by Mr. Aspen Pittman (USA)
第3回:ドクターMusic by 藤原氏

第3回 「ドクターMusic by 藤原氏」のインタビュー、題して「ドクターMusicは雑談となる。」をお楽しみ下さい。


記念撮影。向かって左から、代表取締役 藤原暁也(としや)、店長 藤原義人(よしと)

(二人して今までの記事を読みながら、、、、)

Yoshito(店長)以下、Y:まずドクターMusicって、どんな店なの?って事なんだけど、、、

Toshiya(社長)以下、T:アンプだらけの店?ハンダの匂いがする店?まぁ、名前から言って「楽器の医者」ってところかな。

Y:じゃあ、社長は「先生」で、私は「看護婦」ですか?(笑)

T:ちょっと「キモイ」(爆笑)でも、商品知識は凄いものがあるんで「薬剤師」にしておきます。

Y:ヤッター!って、おいっ! 先代(現在は会長職に就いている二人の父親)も、社長も技術畑の人間なんで、その技術を生かして「修理も出来るアンプ専門店」に行き着いて今に至るって感じですか?

T:お陰で非常に偏った品物構成になっちゃったんだけどね(苦笑)

Y:でもその分、ギターやベースを弾いている人にとっては「魅力的」な、お店になってきてると思います。

T:修理についても全国から依頼を頂ける事を含め、改めて「間違った方向性じゃない」と。

Y:それはお互いに「ひとつひとつの仕事」に最善を尽くす事で、口コミ的に広まっていく信頼感あってだと実感するんだけど。

T:まだまだ若輩者ではありますが、日々努力していく所存でありますm(_ _)m

真空管について
Y:最近、GT社も真空管を始めたと聞いていますが、もっぱら生産は「ロシア」とか「ユーゴ」「スロバキア」辺りになっちゃってるよね?音質や品質面はどう思う?

T:コストの面を考えたら仕方ないんだろうけど、決して酷いって程でもないと思うよ。

Y:製品にバラつきは相変わらずあるけど、今に始まった事ではないよね。だってVintage管でも酷いのいっぱいあるし。その点では選別されているGT管は信頼度が高いよ。

T:あと、一般の楽器店さんの店頭で買うとしても安心出来るという意味でもね。でも真空管のパーツの質を改善して、もう少し生産技術が向上すればロシア製も良くなってくると思うよ。

Y:ロシア製に限らず、他の国の管にも言える。

T:ただ、真空管はアンプの増幅回路に必要なパーツではあるけど、ちゃんとした回路設計あってのパーツ。回路設計がイマイチのアンプにどれだけ良い音質の管を載せたとしても、飛躍的に良くなる事は無いね。

Y:最近は、ちょっぴり「ホビー」的な志向で真空管を交換される人が増えてますが、くれぐれも真空管を交換したとしても「Fender」は「Marshall」にはならないのです。「Marshallっぽく」もなりません。

T:根本的な設計時点から違うからね。こればっかりは個性だし。

Y:Vintage管の値段が高騰化してきてる今、真空管を生産しているメーカーに求めるものって?

T:そうだね、Vintageアンプには今生産されているポピュラーな機種(12AX7,12AT7,EL34,6L6など)とは違う特殊な管を使用しているものもあって、それらの管については正直Vintage管に頼らざる得ない状況だよね? 確かに爆発的には売れないのかもしれないけど、そんな特殊な管も少しでいいから生産してもらいたいと。

Y:実際、最近だとKT66なんかも生産され始めているし、期待出来そうだよね。個人的には6C10(Fender Super ChampやAmpegに使用)なんかも生産して欲しい。

T:更にはアメリカの代表的メーカー「RCA」や、イギリスの「Mullard」をシュミレートした真空管も発売されているので、Vintage管は高くて買えないけど、、、という方にも嬉しい状況になりつつあるね。

Y:それとは別に、アンプの回路的な部分から言って真空管の求めるものってあるよね?例えば「初段」と言われる入力段、それからトーン回路に使う管、フェイズインバーター管、パワー管、整流管などなど。

T:初段については「耐震性」「サウンドキャラクター」を求めます。ハイゲインなアンプは特に初段を過剰にBoostさせる傾向があって、下手にVintage管なんかを入れたら「ピーッ」てマイクロフォニック(発振)を起こしちゃうケースがある。音質についても初段は変化が著しい箇所なので、こだわる人はここだけお気に入りの管を入れてたりするんだよね。

Y:Boogieなんかもそうだけど、すぐ発振起こしちゃうアンプあるもん。確かに真空管アンプとしては、素晴らしい音質を持っているけど、真空管にとっては過酷な状況を強制されているという事になるね。

T:トーン回路の管は「周波数レンジの広い管」を。フェイズも同様がいいかな。パワー管については「しっかりマッチングが取れている管」であり「音質的にも平坦にならない立体的な音像を持つ管」が理想だね。

Y:GT社のAspenさんも言ってる「手作りが故のちょっとの差」が真空管のクオリティを左右するくらいだから、熟練の職人が作る当時の管の素晴らしさが音になって鮮明に出るみたい。やっぱり、それを含めて「真空管のクオリティ」を取ればロシア管よりもアメリカやヨーロッパの管のほうが良いね。

T:でも高価なのね(一同涙)これだけはしょうがない。ロシア管のこれからに期待するしかなさそうだね。

アンプについて
T:店長から見て、年代別のアンプの進化をどう見てるのかな?

Y:元々はエレクトリックギターの発明と同時期に出てきた「拡声器」的なものだったんだけど、その必要性は大所帯のバンドで弾くギターの音量が小さ過ぎて、行き着いた発明だと聞いた事があるよ。それは時代の流れによって、より音量を求め大出力なものへと進化して、それまではCLASS Aという増幅方法でしかアンプを作っていなかった各メーカーは、CLASS ABという「より効率が良く、大出力が得られる」増幅方法に移行して行くんだよね。これはロックというジャンルの幕開けと平行してると思うんだ。サーフミュージックが流行ればリバーブが付いて、ロックがより歪みを求めれば歪ませる回路を増設し、劇的に音質を切換したければch切換可能になったり、、、、それらは全てプレイヤーのニーズに応えるべく進化してきているのだと思うんだけと。

T:それじゃ、モデリングアンプもユーザーからのニーズだと?

Y:そうだね。自宅でスタジオで、様々なジャンルのギターを弾くプレイヤーにとって、アンプを何台も所有するのは大変な事だよね。それらをパソコン上で満たしてくれたのはLine6。それは直ぐにアンプとして発売され多くのプレイヤーに喜ばれ、一気にシェアを広げた。人気の理由として、例え擬似的な音質であったとしても今までのシュミレート物とは一線を期する高品位な音質だったから。

T:ただ、今も多くのプレイヤー、特にプロミュージシャンの間では真空管アンプを使用し続けている人がいるのには、どんな理由があると言えるのかな?実際、店長も真空管アンプを使用してるもんね?

Y:立体感と、弾き手のタッチに素直なレスポンスで応えてくれるからかなって思うんだけど?逆に言えば、下手にプレイすればそれがハッキリ出てしまう訳だけど、音に表情をつけられるという意味では明らかに真空管アンプは豊かだと思います。でもこれから何年先に、それらをクリア出来るモデリングアンプが発売されたら、、、近い将来、僕らはおまんま食い上げです(一同爆笑)

T:RIVERA社を始め、多くのメーカーが小型の真空管アンプを発売してきているんだけど、そのクオリティはどう?

Y:かなり良いんじゃない?多機能ものからVintageっぽいトーンも得られるものがドンドン発売されるといいね。あとは価格の問題とアフターの問題をクリアするだけかな?とにかく狭いスペースで充分真空管サウンドを得られる小型アンプには、これからも注目していきたいよね。

修理について
Y:当店は修理品が毎日のように来る、変わったお店だけど(笑)よくある修理は、どんなものかな?

T:一番多いのは、接触不良かな。特に外国製のアンプは接触不良が多いんです、、、。

Y:パーツのクオリティの問題とか?あと日本の気候の問題とか?

T:パーツのクオリティについては問題ない。っていうか、生産国の気候上では問題ないって言った方がいいかな?面白い話があるんだけど、僕が以前、イギリスにあるMarshall社の工場へ遊びに行った時の事なんだけど、そこの技術者と話をしてた時、Marshallの故障箇所についての話になって、僕は「日本ではプラグ関係の接触不良が結構あるんだけど、そっちでは問題になってる?」と、聞いたんだ。そしたら彼らは「いや、こっちにはそんな修理は稀だよ」って。そして話をしていくうちに判った事なんだけど湿度の変化が激しい日本にとって、海外パーツの金属腐食は大敵だって事。どんな高級パーツでも金属部分は酸化し易くて、それらよる接触不良が起きやすい気候なんだよね。勿論、真空管の足の部分も腐食しやすいから注意が必要。

Y:真空管だけじゃなく、ソケットも線材もやっぱり腐食するって事になるよね?

T:短期ではないけど、古い機種については交換も視野に入れておく必要があるよ。

Y:その他の修理として、どんなものが多い?

T:当然、真空管の不良とかはあるけれど、最近は電気的知識も無しで自分で改造したりパーツ交換する方が増えた事と、何でもフルアップにして使えば良い音質が得られると勘違いしてアンプを壊す方が多いかな。

Y:(爆笑)いわゆるハイエンドパーツに交換すれば「ふくよか」で「抜けの良い」至高のトーンが得られるって何処かで聞いた人とか、真空管アンプはフルアップが最高の音になるって聞いた人とか、、、、。

T:誰が言ったんだろう?僕は言ってないけど、、、。

Y:僕も言ってないよ(笑)ま、誰でもいいけど。決してハイエンドパーツは否定しないが、根拠無きパーツ交換は壊す原因なんで無闇にやらない事ですね。それから最近のアンプはフルアップで使用しなくてもポテンシャルは発揮出来るように設計されてるから。限られたアンプでのみ、こういう使い方もあるよって事です。

T:シールドやACコード、スピーカーケーブルなど、最近特に高級品が話題になってるけど、先程にも言った気候の問題もあって絶対的な信頼は無く、音質についても使ってみて自分で「好き」か「嫌い」か判断する事をオススメしますね。

Y:大して変わっていないのに「良くなった」と、思い込むのは「高い投資をしたから」という固定観念があるからですね。変わっていないと思ったら、自信を持って「変わらない」って言うのには勇気がいるんです(笑)

T:厳しいご意見ありがとうございました(一同爆笑)


兄弟で討論するのは苦手(店長)、ただ、エンジニアとプレイヤーとしては最強のコンビ(社長)

(次ページへ続く)