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Don Randi インタビュー (2/3)

 

「Baked Potatoを開店してからのDon」

PCI:それで、なぜBaked Potatoを開店しようと思われたのですか?

Don:私は、1000以上のレコーディングに参加し、その中の300から400くらいがナンバー1になってるんです。 レコーディングやセッションがその頃忙し過ぎて、クラブでの演奏に出られないことが多くなり、ジャズクラブをクビになってしまったんです。だから自分の店が必要になったんですよ。

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)


PCI:なるほど。 場所は今と同じNorth Hollywoodで最初のBaked Potatoを開店したんですか?

Don:まったく同じこの場所です。 最初はこの半分の広さで、リッカーライセンスが無かったのでアルコールは出せませんでした。 Baked Potatoを料理として出すというアイディアだけで開店しました。 

PCI:それが1970年だったんですね?

Don:そうです。 

PCI:今ではたいへん有名になったこのBaked Potatoを料理として出すというアイディアはどこから来たんですか?

Don:私のワイフはイギリス人で、彼女と一緒にロンドンへ行った時の事です。 あるスタンドで小さなBaked Potatoが売られてたんです。 小さいけれど大変おいしかったんです。 そこで彼女とロサンゼルスに戻ってから、おいしくて大きなBaked Potatoを出そうとレシピを研究しました。 彼女も料理が得意だったんでね。 最初は18種類だったBaked Potatoを21種類までに増やしました。 この料理はとても喜ばれました。

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)

PCI:本当においしいですよね。Baked Potatoの料理と同時に最初からライブハウスとしてもスタートしたんですか?

Don:そうです。 そして、音楽を聴きに来てくれるお客さんにBaked Potatoを出すことが出来たのがたいへん良かったんです。 最初は酒が出せなかったので料理で楽しんでもらうことが出来ました。 その頃、他にいいジャズクラブが無かったので、多くのスタジオミュージシャンが私の店で演奏してくれました。 そして私のバンドも自分のスケジュールが合う時に演奏できる様になりました。 そして何年か経つにつれて多くの若いミュージシャンがバンド活動をここからスタートする様になりました。 ある日、若い子供の様な顔をしたギタリストがやってきました。 彼の名前はリー・リトナーでした。彼はここから活動を開始しました。 またある時、別の若いギタリストがここで演奏したいと売り込みにやって来ました。 彼の名前はラリー・カールトンでした。 ジョー・サンプルも来ました。 それからアル・ジャローも。 その頃は皆全く無名のしろうとでした。(笑)

PCI:驚くべきことですね。 みんなここからはばたいて行ったんですね。 それからBaked Potatoではライブレコーディングもよくやってますね。 スティーブ・ルカサーのライブなどは日本でも有名ですが、ほかにはどんなミュージシャンのライブがあるんですか?

Don:去年は12のアルバムをレコーディングしました。 全部ボブ・ブラッドショーがやったんですよ。 マイケル・ランドーや、私の新しいアルバムや、デビッド・ガーフィールドなどをレコーディングしてくれました。 今はちょっと全部の名前を覚えていませんが。

PCI:そうですか。 全部彼がやってたんですね。 ボブ・ブラッドショーにも以前インタビューをさせて頂きました。 大変ユニークで気さくないい人でした。 ここに出演するミュージシャンはフュージョン系やジャズ系が多いと思うのですが、これはあなたの好みですか?

Don:別にジャンルや名前には捕らわれず、いい音楽を紹介するというポリシーです。 一ヶ月半程前ニューヨークからWayne Krantzトリオがやってきました。 今までにないすばらしい演奏でした。 ロサンゼルスの観客も堪能しました。 また戻って来てくれるのを楽しみにしています。 フェンダーのアンプとエフェクターを3つ使うだけで、マイクロフォン、PAは一切使いませんでした。 マイケル・ランドーの様な大音量のバンドが多かったんで余計新鮮だったのかもしれません。 ランドーといえば、ある晩スティーブ・ルカサーとマイケル・ランドーとエディー・ヴァンヘイレンともう一人名前忘れましたが4人の有名ギタリストが同時にプレイしたことがありました。 予期せぬ出来事にお客もビックリでした。(笑)

Photo by Hiroshi Mochizuki (Copyright 2002 Hiroshi Mochizuki)

PCI:それだけのギタリストが同時にプレイするなんてBaked Potatoならではですね。 それは今年のことですか?

Don:いや、数年前だったと思います。 

PCI:Baked Potatoも大変有名になったので多くのミュージシャンから出演依頼が殺到していると思いますが、出演できるミュージシャンはどの様に決めているんですか?

Don:大体はCDと評判を聞いて決めています。

PCI:この30年間のLAでの音楽シーンの変化を見られてきた訳ですが、Baked Potatoではやはりジャズが中心に演奏されてきましたね?

Don:そうですね。ラテンジャズ、ストレートアヘッドジャズ、そしてフュージョンなどが多かったです。 フュージョンと言う言葉は、私にとっては比較的新しい言葉です。 実は 63年から64年にかけて、「ラバーソウル・ジャズ」というアルバムを制作しました。 ビートルズのアルバム「ラバーソウル」をジャズバージョンでやったんです。 アルバムの内容、出来は大変良かったんですが、その当時の批評はよくありませんでした。その頃ロックをジャズにするなんてとんでもない事だったんです。実際これが世に出た最初のフュージョンアルバムでした。 後に大変評判となりフュージョンの先駆けとなったんです。 その後、「リボルバー・ジャズ」というのも出したんですよ。 これも大変良いアルバムでした。 そして、その次の年から皆がこぞってビートルズソングのジャズアルバムを出し始めました。

PCI:フュージョンジャズの先駆けだったんですね。 その後、長い間にずいぶん音楽の流行も変わったと思いますが、最近はどの様な音楽が主流になっているんでしょうか? また今後こういった方向に流行が流れて行きそうだというのがあれば教えて下さい。

Don:多分今後はアコースティックミュージックに戻っていくというトレンドを感じます。 ロックンロールでも多くのミュージシャンがアコースティックサウンドを取り入れています。

PCI:そうですか。 ここから巣立って行ったミュージシャンもたくさんいると思いますが、あなたの印象深いミュージシャンとそのエピソードを教えて下さい。

Don:何百とありますからね。 そうですね。 ある日ここのコーナーに座っていたら、オスカー・ピーターソンがやって来た時のエピソードを話しましょう。 日曜日の晩でした。 ジャズの良い演奏で店も満員でした。 そこへオスカーピーターソンが客として来てたんです。 そこで私からお願いしたんです。 「ここに置いてあるスタインウェイのピアノはあなたのピアノに憧れて買ったんです。 ちょっとどんな音がするかだけでもいいから試してくれませんか?」って。 そしたら、1曲だけだよと言って、ピアノに向かって歩いて行ったんです。 観客の皆が彼の一挙一動に注目していました。  彼が弾き始めたら一斉にシーンと静まりかえったんです。 そしてオスカーのピアノソロが始まりました。 そうしたら、バーの隅っこに何とサラ・ボーンが偶然いたんです。 サラがステージまで静かに歩いて来て、オスカーのピアノで45分間歌ったんです。 信じられないマジックの様な瞬間でした。 そのうちオスカーも歌い出したんです。 彼が歌うとは信じられませんでした。 ナットキングコールの様な声でした。 テープレコーダーに録ってなかったのが本当に残念です。

PCI:Baked Potatoならではのエピソードですね。それはいつの事でしたか?

Don:1974年か75年だったと思います。 他にも数々の素晴らしいライブがここで繰り広げられてきました。 語り尽くせないほどのエピソードがあります。 トム・スコットとLA Expressのライブも素晴らしかったです。 デイブ・グルーシンがピアノを弾いていた頃ですから随分前のことですね。

PCI:現在ビッグネームのアーティストの多くの人達がここから活動をスタートしているんですね。

Don:そうですね。 今でもエイブラハム・ラボリエルが最初にプレイした日を良く覚えていますよ。 ジョー・サンプルが電話をしてきて、エイブを紹介してくれたんです。ビニー・カリウタもそうでした。その頃はみんなまだ無名の若者でしたが、素晴らしいミュージシャンがたくさん集まってくれました。

PCI:エイブラハム・ラボリエルにはインタビューさせて頂き、彼もBaked Potatoとの関わり合いを語ってくれました。

Don:エイブは本当にナイスガイです。 今では息子のエイブラハム・ラボリエル・ジュニアがドラマーとして有名になってしまいましたね。 ジュニアをいつもおぶって、エイブのショーを一緒に見てたのが昨日のことの様なんですが。 あの小さな子が今やビッグガイですね。(笑)

PCI:本当ですね。(笑) 最近の若いミュージシャンで注目している人はいませんか?

Don:若いピアニストで好きなのがいます。 ジェフ・バブコです。 素晴らしいプレイヤーです。

PCI:ジェフ・バブコは確かに凄いですね。 私たちも親しくさせて頂いています。 インタビューもうちのサイトに掲載しています。 ギタリストはどうですか?

Don:ギタリストは変人が多いのであまり好きじゃないんです。 冗談ですよ。(笑) そうですね、若いギタリストで、Jimmy Mahlisという人がいるんですが、素晴らしいですよ。 実力の割にはまだあまり評価されていないので今後が楽しみです。