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2008年12月28日
第45回;街角のクリスマスイヴ
http://www.myspace.com/hirosuzuki
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http://www.gashousegorillas.org/
http://www.myspace.com/thegashousegorillas
***最近ステージで使用している機材。
Arionのステレオコーラスをオルガン・シミュレーターとして使用している。
このGas House Gorillasというユニットでは
普段ステージで演奏する30~40曲の中でこのペダルは1曲だけ使用する。
今まで試したコーラスペダルの中で恐らくこのArionが
いろいろな点で最もオルガン・シミュレーターとして使い易いと思う。
この晩の演奏では歪み系のペダルは使用せず、
アンプの自然な歪みをコントロールした。
演奏を重ねれば重ねるほどエフェクト・ペダルの数は減る傾向にある。
アンプは最近はフェンダー系に戻りつつある。
ギターはグレッチ6120を多用する。
先を見始めてしまうときりがない。今夜良い演奏をする、それだけだ。
この先いつまで同じ事を続けるのか、そう疑問を持つことが良くある。
考えてしまうと同じところをぐるぐるめぐり、
ネガティヴになるばかりで何も解決しないから、
そんなときは本当に音楽が好きなのかどうか自分に問いかけてみる。
今のところその答えは「Yes」、だからまた今夜も、良い演奏をしようと思う。
早い話、不器用なのだ。
不器用なミュージシャンには不器用なミュージシャンなりの生き方があって良いと
信じているから、とりあえず気を取り直してアンプのスイッチをONにする。
***気がつくと今年もクリスマス、
つまり今年ももう残すところ1週間を切ったということだ。
いろんなことが起こったのに、今ここで思い出せるような良いことは
ほとんど何も無かった1年だった気がする。
それでも前を向いて、残りの1週間を精一杯音楽し、
そして来年こそは良かったことを思い出せる1年にしたいと思う。
...時々使うバス停が家から3ブロックほど先にある。
そのバス停の、通りを挟んだ向かい側には、
NYCなら何処にでもあるようなデリ(簡単な食品や日用雑貨を売るスーパー)があり、
そのデリの軒先には、随分前から一人のホームレスの男が住みついて(?)いる。
いつも右に行ったり左に行ったり、歩道に座り込んだと思えばごろりと横になったり、
何かをぶつくさ言ったり急に笑い出したり、まあNYCの何処にでもいそうなホームレス。
べつに周囲に危害や迷惑を加えるわけでもないようなので、
どうやら店や近所の住人たちは放っておいているらしい。
今朝このバス停に行くと、
一人のおばあさんがベンチに座ってバスを待っていた。
話すこともなく、ただバスを待つ時間の経過と共に、
お互いの視線は申し合わせたように道の向こう側で
例によって今日もうろうろしているあの男に注がれている。
3~4分して、おばあさんがつぶやくようにこう言った。
「とっても可愛い子だったのにねぇ...」
ハッとして彼女の顔を見つめると、彼女はこんな話をしてくれた...
...私はもう40年この界隈に住んでいる、
あの男は30代中頃で、両親は男が10代の頃に離婚し、
市バスの運転手をしていた父親に育てられ、
その父親は今から10年程前に亡くなった、
二、三歳年上の兄がいるはずだが、
兄は今何処で何をしているかわからない、
父親が亡くなった直後あたりからこの界隈であの男の姿が見えなくなり、
1年ほど前のある日、突然この街角に再び姿を現した時には、
既に酒とドラッグで完全にいかれてしまっており、
ご覧の通りのホームレス状態だった、
近所の住人の通報で何度か警察が彼を保護してはいるが、
すぐにここに戻ってきてしまう...
...そして最後におばあさんはこう言った、
「父親を待っているんだろうね、寒いのに。」...。
バスを降りる時、おばあさんに
"Nice talking to you, and happy Holidays."と声をかけると、
彼女はにっこり笑って
"Stay Warm.(暖かくしなさい。)"と一言、答えてくれた。
ここ数日、NYCは雪が降り、超寒い。
でも、今何処にいようと、みなさん、
Stay Warm and Happy Holidays!
投稿者 hirosuzuki1 : 2008年12月28日 05:20