以前、御大エルヴィン ビショップに、過去に使用したアンプで、最高に良かったのは何か、訪ねた事がある。彼はしばらく考えた後、「ヴァイヴロラックス。」と答えた。 我がソウルシスター、デボラ コールマンが「パーフェクト アンプ。」と絶賛していたのはボーグナー30w 。残念ながら盗難に遭ってしまった。 今年のサマーフェスティヴァルで至高のプレーを聴かせてくれたスウィングブルースの勇、リトル チャーリーは、「つなぐ順番を間違えちゃ駄目だ。これはジミー ヴォーンが教えてくれたんだ。」と言いながらオールドのスーパーリヴァーヴとホットロッド デ ヴィルを直列に繋いでいた。 今まで経験した最高のアンプ サウンドは、と聞かれれば、俺はためらわずに「マーシャル JCM800 ノンリヴァーヴ 50wでキャビネットは4x12のクローズド 、エフェクトペダル無しのギター直結。」と答える。 それは、約10年前、マンハッタンのイーストヴィレッジにあったクラブの、ぼろぼろのハウスアンプだった。トレブル、ミッド、ベースのトーン バランスは最高、ギターのヴォリュームを下げてもクリーンにこそなれ決して音痩せせず、逆にヴォリュームを上げればナチュラルにオーヴァードライヴが掛かり(アンプの「沸騰点」、とでも呼ぼうかな。)、フルアップ状態でアンプ全体が激しく震えあがる。このアンプとケーブル(シールド)と俺のギブソンとピックさえあれば、他は何も要らない、「無敵だ!」と思った。 なぜそんなに良かったのか?、 それぞれのアンプにそれぞれのベストヴォリュームがある。ベストトーンを出したければ、それ以下でも、それ以上でも駄目だ。つまりJCM800のベスト
ヴォリュームは、かなりデカい。 音量を計る単位は確かデシべルだったろうか。30ワットアンプの100デシベルの音と、 ギタリストが病的にアンプにこだわり続け、複数の違ったアンプを所有したがる理由がここにある。(余談だが、日本でライヴやジャムセッションに行くといつも感じる事がある。素晴らしいギターやアンプを持ち、豊富な知識やテクニックを持ちながら、アンプを鳴らし切れていない、アンプを使いこなせていないギタリストがとても多い。これは日本が、基本的に「ライヴ演奏」という文化が根付きにくい国である事を遠回しに象徴しているように思えてならない。) こういった、ギタリスト達の涙ぐましい努力を少しでも軽減してくれるのがエフェクター。 ソロを取る時やツインリードの場面ではBOSSのOD-3をオンにして、いかにも「オーヴァー
ドライヴだっつ!!!」な音を創り、スイング シャッフルやスローなロックブルース等で、特にコードバッキングで音の表面をほんの少しだけ潰したい時、XoticのRC
Boosterをオンにしている。 ごたごたと言ってみたが、結局は音の出所、アンプではないだろうか。思うに、ギターは、身体に馴染んだ信頼出来る一本があれば、まず事が足りる。しかし、アンプとの格闘はギタリストのライフワークと言っても言い過ぎだとは思わない。それが消耗の激しい真空管アンプなら話はもっと込み入って来る。プレーヤーの心を乗せて、聴く側にストレートに伝わる音の出るアンプを俺は今でも探し続けている。 ヒロ鈴木はデボラ・コールマン(Deborah
Coleman)バンドのリズムギタリスト。 今までのコラムはこちら。
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