« 第65回 アコースティックなミニアルバム | メイン | 第67回 アコギのギグ、ロゴ、AC Booster Comp »
2014年7月 6日
第66回 日本、ワールドカップ、近況
PCIの皆様、夏をどうお過ごしですか? どうもご無沙汰してしまいました。 僕は4月に3年半ぶりに日本へ一時帰国してきたんですが、その時の雑感をまとめようと思ってもなかなかまとまらないうちにもう3ヶ月もたってしまいました。 この投稿も5月上旬に始めたんですが、今回はその時の内容に付け加える形にしようと思いますので、かなり支離滅裂な文章になりますがご容赦下さい。
さて、今年はミネソタは例年にもまして長く寒い冬で、5月に入っても気温が10度以下という気候でしたので4月に3週間一時帰国したのは絶好のタイミングでした。 久しぶりに桜も見れましたし、3年半ぶりの日本はやっぱり新鮮で、良い気分転換になりました。 今回は家族関係の行動だけで音楽関係のことは全く何もしなかったのが残念ですが、久しぶりの日本の印象を幾つか綴ります。
まず、日本は景色からきめ細かいということ。 着いて数日後に伊豆へ小旅行する(実家は現在湘南にあります)機会があったんですが、僕は日本は関東以外行ったことないので列車から見る伊豆の海岸の景観に感動してしまいました。 海、砂浜、森、山、町と一見できる範囲に色々な要素がいっぱい入っています。 アメリカでは(地方にもよりますが)都市の外へ出ると平らな大草原をダーッと一直線に高速が走っているだけ。 これももちろん開放的で壮大という見方もできますが、しかしそれを何時間も車で走っていると飽きるというのも事実です。 日本はその点山あり谷ありで起伏が激しく、近いようでいて目的地に到着するのに時間がかかりますが、見ている景色の濃度の高さというものは人の意識というのに実は大きなインパクトがあるんだな、と感じました。 海外育ちの自分には残念ながら日本のロックはせわしなく聴こえてしまうんですが、こういう環境にいるといったいどういう音楽を創りたくなるのかな、と考えてしまいました。 もっと叙情的なクラシック、もしくは映画音楽みたいな感じに結構傾いてしまうかもしれません。
帰った時期が春先だったせいもあるかもしれませんが、以前よりはるかにマスクをしている人たちがいるように見えました。 というか、マスクをしていても咳をしていたとか、風邪気味だという気配が全くない。 これはどういう風潮なんでしょう? 口臭とか唾が飛んでしまうということから他人を守ってあげているということ? というか深読みしすぎかもしれませんが、人々が自分の顔を隠しているような印象を受けました。 不細工だから、とかいうんではないんですけど、でもあなたとちょっと距離が欲しいというか、赤の他人に自分をさらけ出したくない、というか。 かくいう自分も子供の頃からサングラスが好きで何より相手に自分の目を見られない、というか視線が見えないほどのものをかけると何か自分が守られているような気がして好きなんですが、そんな人間がこのマスク過剰の状態を見るとそんな憶測をしてしまうのかもしれません。
そもそも日本というのは本当に人と人との距離が狭い空間ですから、世間というか社会というか他人への配慮というものへの気配りの深さは広大なアメリカとではギャップの激しい点の一つです。 アメリカはいいにも悪いにもまず自分ありき。 自分が自分らしく生きることが最優先で、その分他の人は信用しないというか、家族単位での団結力は日本のそれよりもはるかに強いですが、社会や他人への信頼というものは非常に低く、何でも自分でやらないといけないような風潮があります。 そして時にはそれが重荷であることも。 気をつけていないとお金をふんだくられる(犯罪という意味ではなくて、普通の買い物なので高いものを売られてしまうとか)とか、プロを雇っても仕事をサボったとか、とにかく何をするにも自分次第という見方ですね。 日本はその分協調性をまず重んじるところなので、サービスの良さなど本当にこれは世界一なんではないかと思ってしまいますが、でもその分やっぱり抑圧されているものや建前のその分厚さというものが強く感じられてしまうところもあります。 インターネットでもSNSやニュースのコメントなど、匿名となるととたんに本音が出るというか、英語圏のそれよりもさらにひねくれて悪意に満ちた投稿も多々あり、読むと強い不快感に満たされることも多いです。 感情を出す、自己表現をする、気分を発散させる、といったことが苦手な文化なのかも、と思ってしまいますね。
ーーー
さて、話は飛びますが今回のワールドカップ。結果も悪かったですがそれにも増して残念な内容で、自分もひどく落胆したんですが、皆さんはどう感じましたか? 僕はブラジル育ちなのでやはりサッカーというものに対しての思い入れは強いですし、国を代表して競うワールドカップに期待するものも大きいです。 で我らが日本代表ですが、色々議論されていますが自分にとってやっぱりショックだったのが闘志をむき出しにしてというか必死になってというか、「何が何でも勝ちたい」という気持ちが伝わってこなかったことですね。 前回の代表からはその闘志が感じられただけに、あれはどこへ行ってしまったんだろうと思いながら観ていました。 前回から同じメンバーもいるのに、です。
サッカーでも何でもメンタルというのは最重要だと僕は思っていますが、しかし今回の日本を観て勝負強さというか「本番で力を発揮する」のにはどういう訓練が必要なんだろうか、と考えてしまいました。 もちろんこれは我々ミュージシャンでも大事なことですし。
あまり目新しい結論ではないんですが、本番で力を発揮するメンタルというのはやっぱり経験というか修羅場をくぐって来た体験が大きいのかなと思います。 どんなにたくさん練習しても、どんなに強敵と何度も練習試合しても、あの本番のプレッシャーというのは体験しづらいものがあります。 空想力や何かを使って疑似体験することは可能だと思いますが、個人個人でそれがある程度できてもチーム、グループとしてそれを共同体験するのは難しいのでは。 僕は以前テレビの生放送で演奏したことがあるんですが、あれは緊張しました。 応援してくれている観客という存在なしの無機質なスタジオ内で、でも冷徹なカメラだけはしっかりと自分の演奏を一音一音とらえている。 正直いってビビってしまって本当に無難な演奏をした記憶があります。 日本代表も初戦で先制した後、守りに入ってしまったというか、腰が引けて無難に収めようとしていたような印象があります。 その上日本人は周りに合わせるのが得意な人種ですから、グループがそういう風潮に傾いてしまうとそれを鼓舞して引き戻すという強烈なリーダー、個性がある人がいない。 キャプテンの長谷部選手とゴールキーパーの川島選手にそういう気概があったと思いますが、長谷部選手は交代させられてしまいましたし、ゴールキーパーはやっぱり後ろからそういう影響力を発揮するのは難しいんではないでしょうか。(他のチームのゴールキーパー達のように数あるピンチに好セーブを連発して味方を勇気づけるということはできるとは思いますが、あまりそういう機会はなかったですね) 他の選手はみんな口々に守勢に流れてしまったことを自覚しているようですが、誰も「オレがガンと行ってみんなを引っ張るべきだった」ということは言わない。 というか、そこまでの主体性は自分に求められていないと思っているようですね。
感情を表に出すには出すだけの強い感情がまずなくていけない。 スポーツの場合はそれはやっぱり勝つためには何でもやる、という決意というか覚悟なものがその根源にあるんではないでしょうか。 音楽の場合ちょっと同じように明確に定義しにくいかもしれませんけど、大舞台で最高の演奏をしてやる、そのためには何でもやる、という具合でしょうか?
しかし僕も、例えば子供の時にピアノ習っていた時期、リサイタルなんかだと普段の演奏ができない子でしたし、プレッシャーというのに敏感に反応して縮こまってしまう傾向のある人間です。 だからこれは非難して言っているわけではなくて、こういう性格の人間を生み易い文化を土壌としている自分たちが、いかに「毎回本番で実力を発揮する」能力を身につけるのか、そういうテーマについて今回考えさせられました、と言っているわけです。 もちろん性格的それが自然とできる人はいるんでしょうけど、でもこれも他のことと同じく「習得可能な能力」だと僕は思っています。 天賦の才を持っている人ほどにはなれないとしても、です。 こういうメンタル面での能力というのはフィジカルと比べて掴みにくいのでなかなか明確にするのが難しいテーマだとは思いますが、でもやれる人、特に「元々持ってないけど習得した」人を探し出して話を聞いてみれば、案外明快にコツを教授してくれることもあります。 この点について何か思い当たることや感じることがあったら教えて下さい。
ーーー
さて、日本から帰ってきた後は自分も心機一転、以前よりもさらに踏み込んでいい習慣を付けようと励んでいます。 時差を直す時に意図的に早寝早起きするようにして、朝起きてまず最初の30分はギターの練習、その後最低一時間は自分の音楽に費やすパターンにしました。 維持するのが難しいですが付いて来ている結果には自信を持てるものがあり、いかにこれを数週間ではなくて、半年、一年、二年と継続させるか、ということを今考えています。
今取り組んでいるのは次の5曲入りのミニアルバムで、今回はエレキギターを復活、またチェロも大きくフィーチャーして、かねてからのビジョンであったクラシック要素を取り入れたモダンロックというサウンドを目指しています。 現状としてはアレンジとリズム隊はほぼ終わったところで、去年仕事したチェロ奏者に楽譜を送り、来月録音します。 後はギターとヴォーカルですが、ギターの方は今回割とシンプルなので問題ないと思います。 選んだ曲は自分の古い方の曲なので、最近書いているのよりは構成なんかも単純でまとめ易い内容なのです。 これを作って、その経験を踏み台として来年はもっと規模の大きいプログレッシブロックのフルアルバムの取り組もうというプランです。
が、もうずっと録音ばかりしているので気分転換に近所のコーヒーハウスのオープンマイクに相棒と行って来たんですが、久しぶりに人前で演奏するのはやっぱり楽しくて、そこからトントンと話が進んで今月末と来月の2回、そこでアコースティックのギグをすることになりました。 相棒と二人で楽器は僕のアコギだけ、という形ははっきりいってこのエレキ弾きの人間にとってこれ以上ない厳しい試練ではないかと思ってしまいます。(笑) でもこの形でいい演奏できるようになれば、他のどんな状況でも大丈夫になるだろう、とも思います。 大げさな言い方になりますが、自ら修羅場(?)に自分を追い込むことによって自分を鍛えようと思うと、結構燃えてくるものがあります。 早くも相棒が提案したSimon & Garfunkel のカバーが難しくて必死になって練習してますが、この必死にならなくてはいけないという状況、やっぱりいいものですよね。 やりがいがあります。
では次回はギグがどういったかご報告できると思います。 皆さん、よい夏を!
ーーー
Facebook やTwitterもやってますのでお気軽に絡んで下さい。 また、今春リリースしたアコースティックのミニアルバム、ここで全曲試聴できるほか、ダウンロードも無料ですので是非聴いて下さい。 ダウンロードするには下のプレーヤーからBandCampにいって、値段は0、あとはメルアドを入れるだけでOKです。
投稿者 ari : 2014年7月 6日 04:11