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2013年6月 6日
第59回 クラシックのミュージシャンとスタジオで
PCIの皆さん、お元気ですか? 日本は梅雨時ですね。 こちらミネソタも今年は雨が多くジメジメとしています。
さて、前回の続きになりますが、4月後半にフルートとチェロを録音へスタジオへ行ってきました。 今回の音楽は全てアコースティックな楽器で、クラシック風な音で録るということで、従来の「バンド」形態にこの二つの楽器を入れることでよりクラシックとアジア風なテイストを織り込もうというのが僕の意図でした。 が、両方ともよい人を見つけるのが意外と難しかったです。 ロックなどと違ってクラシックのミュージシャンは基本的にあまり録音という体験が少ないだろうというのは事前予想していましたが、ミネアポリス周辺にはプロのオーケストラが二つ(ミネソタオーケストラの他にセイントポールチェンバーオーケストラも)、それ意外にもコミュニティオーケストラがごまんとあり、アメリカでも有数のクラシック都市なんではと僕は個人的に思っていたんですが、いかんせん僕も個人的にそういうグループと関わりがあるわけではないので、オンラインの求人などにもなかなか返事が来ず、少しやきもきしました。 フルートは結果的にフルート専攻で修士課程までいったMelissaという方にお願いしましたが、チェロの方は本当にうんともすんともいいません。 でも僕の知り合い全員に個人的にメールして色々聞いたあげく、薦めてもらった人がまた別の人を薦めるという形で若くして経験豊富なDanielというチェロ奏者に巡り会いました。 Danielの方は地元でかねてから僕が気に入っていたCloud Cultというバンドのメンバー、このバンドは全国ツアーするほどのレベルですからこの人なら素晴らしい仕事をしてくれるだろうと確信しました。
プロセスとしてはこの二つのパートに関してはやはりクラシック風にちゃんと楽譜にパートを書いて事前に渡し、練習しておいてもらってからスタジオで録音するという形にしました。 このアプローチは間違ってなかったですが、レコーディングの方は予想以上に難航することに。
楽器二つ、曲は4曲とあと数十秒ずつの非常に短いのが幾つか。 数週間前に楽譜を渡しておいたので一晩で全部録れるだろうと思っていたら、これがちょっと考えが甘かったようです。 というのも、パート自体はそんなに難しくないと思っていましたが、でも意外に完璧な演奏を録音するというのが難しい要求であることが判明。 例えばフルートの長い音の後半の方が音程がずれてしまったりとか、音の切り方が雑とか、チェロの音程が少しずれていたとか、そういう細部まで完璧に突き詰めるのに予想以上に何テイクも時間を費やさなければなりませんでした。 特にフルートのMelissa はこれが本格的なレコーディングをするのが初めてで(それは僕も前もって知っていましたが)、例えばヘッドホンから聞こえるフルートの音質が悪いのでつい力んで吹いてしまったりとか経験不足が露見することに。 1回弾いてみたあとちょっと解釈の違いを直してあと2テイクくらいでいけるだろうと考えていた僕の見積もりは現実的ではなかったようです。 僕はSt. Olaf Collegeといってこの地方ではクラシックで有名な大学で音楽を専攻しましたので、それこそ当時はプロ級だと見えたミュージシャンに囲まれていた経験があるので、クラシックでならしているミュージシャンはみなすごいのだろうと考えがちなのですが、実際録音するとなるとパッと聴いただけでは気づかないディテールまで全部丸裸にしてしまいますから、シンプルなパートでもそういうところまで完璧に弾きこなすというのはやはり難しいのだということを実感しました。
それはでも二人の奏者のせいではなく、僕のプロデューサー、アレンジャーとしての経験不足からくるわけです。 二人とも真面目に、精一杯弾いてくれましたが、予定の一晩では終わらず一週間後にもう一晩セッションすることに。 予算オーバーになってしまいました。 でも最終的には良いテイクを録れましたし、雑なところもデジタル編集でカバーできる範囲のものなので、セッション自体は成功と考えられるものでした。
で、6月現在はのろのろとヴォーカル録りとミックスが進行中ですが、夏が終わるには4曲、シンガーBobの母国語Hmong版と英語版をリリースしたいと予定しております。
僕も今回のプロジェクトをきっかけにクラシックとロックの融合、特にチェロをとり入れた音楽への興味が増して、最近はもっぱらチェロばかり聴くようになりました。 下に僕が発見した厳密なクラシックではない、でもチェロ中心の音楽を幾つか紹介しますね。
http://listen.takenobumusic.com/album/momotaro
http://music.juliakent.com/album/character
http://music.zoekeating.com/album/into-the-trees
上記はどれもチェロ主体の音楽ですが、僕は今ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムの上にチェロを入れた構成のバンドの音楽を探しています。 何か面白いアーティストを知っていましたら教えて下さいね。 Facebookで Ari Koinumaか、 メールでは ari @ arikoinuma ドットコムです。
あ、あまりよくない写真ですが、スタジオで撮った写真を一枚。 大きなSSLの卓の前で聴き入ってるのが自分です。
投稿者 ari : 2013年6月 6日 03:38