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2011年9月 8日
第50回 エチュード、エクササイズ、フレーズ
こんにちは。 早くも9月です。 ミネソタは毎年スイッチを切り替えるように涼しくなりますが、皆さんいかがお過ごしですか? 今回はギターの練習材料についてちと持論を。
誰でも効率よく練習してうまくなりたいと思うでしょうが、練習してるのに今イチ『使える」うまさが身に付かない。 僕も長年そんな気がしていました。 もう弾き始めて20年以上になりますが、頭の中で聴こえるフレーズを(もちろん全部でないにしても)弾けるようになったのはここ1年くらいのことで、それまでは手癖になっているパターンをああやらこうやら当てはめてみるだけ、というのが僕の即興プレイでした。 でもこれって長い間やってたから次のレベルに卒業、ということではないような気がします。 これはどっちかというとアプローチの仕方の問題で、どんなに長いこと練習しても根本的な問題点を解決してくれないアプローチでひたすら労力を費やしてもやっぱり駄目ですから、やっぱり試行錯誤するということは大事かと思います。 さらに人それぞれ個人差がありますから、他の人のやり方を参考にするにしても、同じようにやったら自分もうまくなるというかというと必ずしもそうではないわけですから、やっぱり難しいというか、結構複雑なものだな、と思ってしまいます。 独学でやってるからということもあるんでしょうけど、先生についてもやっぱり相性のいい人でないと駄目ですから、最後は自分次第ですね。
とまあ哲学的な話になってしまいましたが、もっと具体的な方向に話を戻すと、僕は練習材料として「ギターを自由自在に弾いて自己表現する」という目標へ邁進するには、エチュードとエクササイズを効果的に取り入れて、フレーズ集っぽいものは敬遠する、という風なアプローチで効果を得るになりました。 これってトモ藤田先生の受け売り(僕はメール交換した程度でレッスン受けたことはないんですが)ですが、やってみるとなぜ効果が上がるのかより理解できたような気がします。 なぜかというと、ギターを弾く、それも即興でとなると、以下の能力が必要とされるからです。
1. 状況を把握する。
2. 状況に応じたプレイを選択する。
3. 実際に選択したプレイを実行する。
これは実はサッカーで世界的に有名なスペインのクラブ、バルセロナのコーチの人のインタビューから学んだんですが、ギターでもまったく同じだなと感じました。 で、実際にギターで実行するのは3番だけですし、練習してもそこしかしないということは非常に陥りやすいワナであるともいえると思います。 どんなに技術というかテクニックを身に着けても、状況を把握しそれに合う選択をとる能力が身につかなければ音楽的な演奏に結びつかないのです。
そう考えると、エチュードが最適なのは、一つの曲としてまとまっているので、ある特定のテクニック中心の曲想であっても、実は音楽性主体であるということ。 どういうコード進行の上にどういうバリエーションを当てはめて一つの曲として機能させるか。 1から3までを全て現実で実践する「音楽」に近い感覚で、テクニックを習得するだけでなくどういう状況で使うのかということを学ぶ例となってくれます。 理論とかこねくり回す以上に手っ取り早いのはやっぱり前例を耳と手に覚えさせておくことですから、それが理屈でどうなのかということよりも、感覚的に「ここでこういうことを弾くとああ聴こえる」という具合に、直感的な意味での方程式として頭と体にインプットできるような気がします。
エクササイズは僕は無機質なのが退屈で以前は敬遠していたのですが、どうしても3の部分が追いつかないときには実は音楽から切り離してただ手の運動という感じでアプローチするほうが効率いいという結論に達しました。 いくら頭の中で弾きたいフレーズが聴こえてもそれを実際に弾くテクニックがなければ駄目なわけなんですが、無機質で音楽性のあまりないエクササイズをすることにより、より指に「そういう動きをするんだ」と覚えさせる方に神経を集中させられるように感じます。
で、ギター雑誌から教則本まであるフレーズ集ですが、これを鵜呑みにするのは手癖を作るだけで音楽的には実践しにくいと思います。 なぜかというと音楽っぽいことを、でも本当の音楽から切り離して部分的に暗記してるような感じで、実際に音楽に当てはめようとすると実はしっくり合わない。 何故かというと、ブルースのようにかなりパターン限定でやってる音楽でもテンポ、キーなど微妙なバリエーションが無数にあって、そういうものも含めてある特定の状況に当てはまるフレーズを暗記してもそれをそのまま実際に使えることは少ないんですね。 フレーズ練習するなら毎回どこか即興で変えるとか、コード進行を少し違うものに変えるとか、テンポやキーを違うところに設定するとか、とにかく「その場で考える」状況を意図的に作って練習しないと実際に使える「応用力」に結びつきにくい、というのが僕の結論です。 となると手の運動としては中途半端だし、かといってエチュードのように音楽の全体像を見せてくれるわけでもないし、というわけでフレーズだけを繰り返し練習するのはなかなか向上に直結しにくいんですね。
楽器の演奏というのは言葉の習得と似ているところがあって、やっぱり実際に使われている状況にできるだけ近いところから感覚的に入った方が、フレーズ集とかを状況から切り離して丸覚えするよりも「使える度」が高いわけです。 僕の英語も割と早いうちから「ネイティブみたいな話しっぷり」という評判を受けていましたが、それもやっぱり本物のネイティブの話し方を聞いていて、「実は意味わからないんだけど正しそうに聞こえる」単語をや言い回しを振り回していたらそうなったというわけなんですね。
とまあ勝手な持論を展開しましたが、もちろん人それぞれですから皆さんどう当てはまるか、それともまったく当てはまらないのか、色々お互い考えながらギターに取り組みましょう。
ではまた次回。
投稿者 ari : 2011年9月 8日 03:02