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2008年9月20日
第21回 自分にしか書けない曲
前にもお話しましたが、songwritingについてのオンラインのコースを作ることをただ今見当中。 で、リサーチの一環として図書館から関連の書物を借りてきましたが、予想通りというかやっぱりというかsongwriterとしてのキャリアを築く、要するにヒット曲を書く、という方向での教本がほとんどですね。
要するにギターとかバンドなんかは「趣味で」とか「自己追求で」いくらでもやっていいものなんですけど、曲作りになるととたんに「職業で」という狭い視野からかしか見られていないわけなんですね。
僕は日本ではどういう経緯があるのか知りませんが、アメリカの音楽業界でソングライターという職業がどう変化しているのかとちょっと簡単に説明しますと、50年代くらいまで主流だった、要するに出版社がライターを雇って曲を書かせ、それをレコード会社に流してふさわしいアーティストに録音してもらうというビジネス形態はもうほとんど残っていません。 唯一例外はテネシー州ナシュビルを中心とした(NashvilleはNew YorkとLos Angelesにつぐ第三の音楽都市なんです)カントリーミュージックはまだ比較的この古い形態に近いやり方をとっていて、アーティストが自分の曲を書くことは珍しくはないにしても主流ではないんです。 他の分野、ロックとかポップではもう純粋にソングライターとしての需要はほぼ皆無なことも手伝って、今ではソングライターというとカントリー、もしくはフォーク系の曲を書いて他の人に録音、演奏して貰おうとしている人たちのことを指すことが多くなっています。
なのでsongwritingに関する教材や本などはこれを前提にしたものが多くなるわけですね。 要するにカントリー系の音楽でヒットを書くというもの。
自己表現としての曲作り、とか、アメリカでは評価されているはずの「独創性」と追求すべくのノウハウとか、そういう焦点での教材はほとんどないようなんですね。
ここに今僕が目をつけているわけなんです。
自分でいうのもなんですが、自分の一番の武器は楽曲の完成度、もしくは平均的な質の高さと独創性だと自負しています。 ま、メインでやっているのがそういうものを重視するロックだということもあるんですけど。
でも「独創性」ってそれこそ定義できないものにみえるわけなんで、「こうしたらあなたにしか書けない曲が書けるようになる」ということが教えられるものかどうか、その辺じっくり考えていたわけなんですね。
でも方向性が実は見えてきたんです。
「独創性」といっても全く前例のない、100%真新しいジャンルやスタイルがいきなり確立されるということははっきりいって皆無なわけですから、みんなそれぞれ自分が影響を受けたアーティストたちの傾向やテクニックをそれなりにもじりながら曲作りしてるわけなんです。
要するに、世界広しといえども、聴いて影響されたアーティストが全て同一だったということはありえないわけなんですね。 同じアーティストの同じ曲を聴いてもそこから得るものは皆違うわけなんですし。 ということは、自分の受けた影響というものは、これは実際には他の人がコピーしようとしてもできないところがあるんです。
そこに注意を払い、自分のやってることの中で他の人と違うところがどこなのか、そこに観点をおいてのその違いをより伸ばしてやるようにすると、独創性というものが見えてくるんです。
とするとこういう図式ができてくるんですね。
(1) 自分の好きなアーティスト、曲を徹底的に分析する。何がその曲を「よく」するのか理解する。
(2) 自分の持つ「理想的な曲」像を確立させる。 これはもちろん曲のタイプによって違うものがあるんですが、でも例えばジャズのように複雑なコード進行を用いたロックを書くとか、聴いて「ああ、その通りだ」と共感してしまう歌詞を書くことが理想だとか、抽象的なものでもとにかく自分なりの楽曲の完全形をある程度定義させることは可能だと思うんです。
(3) 自分が曲を書くときに、2の理想像と照らし合わせて、何がまだどう足りないのか分析する。そして、それを改善して自分で納得がいくような曲になるまで修正し続ける
というようなプロセスが大まかではありますが見えてくるような気がします。
要するに、いわゆる「やり方を教える」というタイプの教え方ではなくて「自分で自分の理想を定義してその実践の仕方を試行錯誤する。ガイドとか先輩とかと似ている立場からその過程に助言を与える」というやり方です。 ちょっと日本語でうまく表現できてないような気もしますが。
いつも思ってるんですが、例えばソングライティングのコンテストがあるとするでしょう、で入賞した曲を聴いてみるんですね。 で、傲慢に聞こえるのを覚悟で正直にいいますと、いつも「よくまとまってはいるけどいまいち個性ない」という印象を受けることが多いんですね。
なぜかというと、万民に受け入れられる音楽というのはえてして角の丸い、いかにも正攻法のものになりがちなんです。 だって個性が強すぎると嫌いになる人もでてきますからね。
でも面白いのはロックでヒットするのはその個性の強いアーティスト達がほとんどであるということ。NirvanaにしてもRadioheadにしても、強い個性が全曲に反映されているでしょ? 人によっては好き嫌いはっきり別れるはずなんですよ。 でもああいう強烈な個性を全面に押し出さないと人の心を深く打つことできないと僕は考えるんです。
どこで聞いた話だか覚えてないんですが、新しい商品を作るときに、マーケットリサーチだけを重度に繰り返し、世間の人たちの意見を素直に反映した商品を作ると、実は全くつまらない、売れない商品ができるんだそうです。 アップル社のiPodなんかそうですが、売れる商品というのは一般の人たちが「必要している事実を自分たちも知らなかった、考えてもみなかった」ものを生み出さなくてはいけないんですね。 これは要するに天才というかインスピレーションというか、要するに「ひらめき」の次元から出て来るものなんです。 多くの人に何がよいか聞いてつくっても駄目なんですね。
この「ひらめき」というやつは天武の才頼みのものと考える人は多いですが、でも僕はそれはその人がどれだけ「自分は創る人間」という信念と強く抱いているか、そこにつきると思います。 曲作りも実はひらめき頼りなだけでは一曲や二曲偶然ヒットする曲を書けても、それを持続させるということはできません。 何年も連日書き続けて、駄作を何百も作っていく中から「おっ」と思うものを見つけてくる。 そういう努力をしている人たちこそがこの「ひらめき」を掴みえる可能性を秘めてるわけなんです。
とまあ持論を長々と述べましたが、読者の皆さん、どう思いますか? 意見や反論などありましたら遠慮なくお聞かせ下さい。
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投稿者 ari : 2008年9月20日 18:45