2008年6月27日
第16回 Derek Sivers
Derek Sivers(デレク·サイヴァース)氏はアメリカのインディー業界では超大物の有名人です。
彼がインディー最大のCDショップ、CDbaby.comの創始者なんですね。 日本からもあそこを通してCDを売り出しているアーティストがいます。(日本語の部分もあります)
彼は現在では経営から身を引いて、次なる活動のアイデアを練っているそうですが、そんな彼がPDFでe-bookを出しました。
How to Call Attention to Your Music (どうやってあなたの音楽に関心を持ってもらうか)という本です。 早い話がインディーミュージシャンへのプロモーションのノウハウを伝授する本なんですね。 リンクをクリックすると無料で直接ダウンロードできます。
簡潔に短く、大事なポイントだけに的を絞って書いてあるので、英語に自信がある人は読んでみることをお薦めします。
でもそうでない人のために、僕が感銘を受けたポイントを幾つか紹介しましょう。
If you don't say what you sound like, you won't make any fans.
(自分のサウンドを言葉で表現しないとファンはついてこない。)
万人に気に入ってもらおうと思ってはいけません。 「音楽なんて言葉
形容できない」と思ってたら誰にも相手にして貰えません。 簡単なことではないですが、一、二行の文で自分の音楽を正確に言い表せる表現を見つけましょう。 別にそれだけで全曲を正確に言い当てる必要はありません。 要するに相手に関心を持たせるキャッチフレーズとして使えばいいんです。
例えば「70年代のアメリカンポルノのBGMにファンクの味付け」とか「彼女に聴かせると必ずメロメロになる超ロマンティックなジャズ」とかです。 聴いてみたくなりませんか?
「どんな音楽やってるの」と聴かれたときに、パッと答えられる。 そんなフレーズを見つけましょう。
Well-Rounded Doesn't Cut
(丸い刃は切れない。)
情報過多の現在では、プロモーションは鋭利な刃のようでなくてはいけません。 焦点がしっかり絞れていないといけないんです。 何となく、では駄目なんです。
太郎という名前のアーティストがいたとします。 彼のCDのジャケットには顔写真を載っけて、タイトルは「僕の歌。」どんな音楽をやるのか、と訊かれると「いや、何でもやりますよ。」と答える。ライブでは普段着でアコギをかかえて、「こんばんは、太郎です。」で始める。
それか、
太郎という名前のアーティストがいたとします。 彼の歌詞は全部彼が生まれる前の時代のアニメの主人公についてで、曲名も彼らの名前がずらり。 アルバムのタイトルは「今のアニメはクソ。」 ジャケットの写真はコスプレで、それぞれの主人公に扮した自分の写真を豪勢で曲の数だけ並べたもの。 ライブも同様でう、毎曲その曲の題名の主人公のコスチュームにいちいち着替える。
どちらのアーティストがより印象に残ると思いますか?
If this is draining your energy, please stop!
(楽しくないことは、やめなさい)
世の中には百万ものアドバイスがあります。 あれをしろ、これはするな、などなど。
自分にあっている方法でやっているときは、楽しいし希望がわいてきます。 でも自分にあってない方法でやっていると、疲れてしまいます、楽しくなくなります。
例えば「毎週3人新しい人に会いましょう」というアドバイスがあります。 素晴らしいアドバイスです。 プロモーションとは人に情報を伝えること。人に会うのが一番手っとり早いです。
でも内気な人間が社交的に秋葉原かどっかで路上で人に話しかけようとしても駄目なんです。 楽しくないですし、明らかに不自然。 話しかけられる方も嫌な気分になります。
成功への道は一筋でなく、幾つもあります。 でもあなたに合っている方法はそんなに多くありません。 他の人がやってうまくいったことも、あなたがやってみたら駄目なこともあります。 自分に合っていて、やっていて楽しく、継続できる方法を選んでやりましょう。
とまあ、数多くなるレッスンのなかから3点選んでみました。 興味のある方は是非、本文にチャレンジしてみて下さい。
この記事に関するコメントはこちらへどうぞ。
- Aries9.com (英語)
- MySpace のAries9ページ (英語)
- CDやMP3の購入はこちら (日本からでもオーダーできます)
- iTunes
- MixiではAriで検索して下さい。 PCIの読者の方からのマイミクリクエストは大歓迎です。最近では日本のニュースをチェックするくらいしてないんですが(苦笑)
投稿者 ari : 19:31
2008年6月14日
第15回 練習の目標(2) 自己表現するためには
さて、前回の続き、練習することの目的の話です。
2 自由に自己表現できるようになること
これは楽器奏者にとっては本当の究極です。 自分が今感じている感情を楽器を通して表現し、お客さんにも感じてもらう。 これが理想です。
この域に達するのは何がいるのか。
高度な技術だ、といいたくなりますが、必ずしもそうではないんです。
日本語には「ヘタウマ」という言い方がありますね。 高度な技術がない、ごくごくシンプルなものを弾いているんだけど、なぜかツボをついていて聴いていてグッとくるものがある。 時には間違いだらけの演奏なんだけど、不思議に間違いも含めて引き入れられてしまう。
これができる人はこの第2のゴールに達しているといえますね。
自己表現ができる、ということはすなわち、自分の楽器を通して言いたいことがいえる、ということ。
これができるようになるには、その楽器の奏者としての自分に揺らぎない自信があるということが根本にあります。
「自信がある」というのはちょっと実は正確でないですね。 英語でいうとYou have to be comfortable with your instrumentといいますが、要するに自分の楽器を自分の一部として何の支障や障害もなく使えるようになるということです。
もちろん大抵の人はこの域に達するには技術がいります。 言葉の例をまた使うと、毎文毎文辞書を使って使うべき言葉をひいているようでは自己表現にはならないでしょう? 喋るという行為を通して感情まで伝えるということは無理です。 必要な知識が全て身に付いていて始めて本当に自己を表現できるようになるんです。
でも中には実は単語を間違えていても気合いと押しでとにかくそれらしい言葉をつなげてまくしたてて何とかコミュニケーションとってしまう人もいます。 こういう人たちは技術のなさを度胸とか器量でカバーして、自己表現の域へその合計で達してしまうんですね。
ポピュラーミュージックで面白いのはこれが可能なことにあるんです。
ブルースなんかその最たる例で、速弾きができたらいいブルースが弾けるかというとそんなことは全くありません。 (速くひいたらブルースでないと間違った考えを持ってる人もいますけど) 必要最低限の音数や技術で多いに表現することができますし、間違いだらけでも感情がビンビン伝わって来る演奏をすることは充分可能です。
Neil Youngなんかは(失礼ですが)ヘタウマの例としてあげられるかと思うんですが、彼なんかも技術でなくてどっちかというと気合いで(笑)自己表現する人ですね。 でも彼なんかはどんなハイテクニックの人との共演でもどこ吹く風で自分の演奏をすると思います。 フィーリングたっぷりの演奏を。
自己表現するためには、どこで誰と何のために演奏するんでも全く揺るぎない自信がいるんです。
ほとんどの人は高度の技術を極め、色々な演奏機会を体験し、長い練習を経てこの自信を得ますね。でもそれだけがその域への道ではないですし、それだけでは駄目なこともあります。
要するに自分に自信が持てない人はどんなに練習してもその域には達せないし、逆に自信いっぱいの人はあんまり練習しなくてもどんどん人の心を打つ演奏し始めてしまいます。
ですから練習も自信につながるという焦点からすること。 また楽器の練習以外のその他全面の人生も関わってるということを認識すること。 これが大事です。
これまた勘違いしないでほしいのですが、自信を持ってれば何でも弾けるとかそういう話ではないんです。 どんなに自信過剰な人でも一昼夜でSteve Vaiみたいに弾けるかというとそれは無理でしょう。 でも膨大な自信を武器にVaiと同じくらいインパクトのある演奏することは可能です。 その人なりの弾き方で。 Vaiが百音弾く時間に一音しか弾かないスタイルかもしれません。 でも自信が充分ある人はそれで自己表現できてしまいます。
演奏者としての自分に自信を持つということは練習も含めた人生の姿勢全てが関わってきます。 自分は自分のままでいいんだ、という風にありのままの自分を受け入れ、好きになる。 これができる人はいい音楽を創れるようになるまでの道もより短かくなるでしょう。 そう感じられるにはどうしたらいいのかというのはちょっと人それぞれですし、それだけで一冊の本になってしまいますからここでは言及しませんけど、とにかくこの目的を達成しないと、本当の意味でのいい演奏はできるようになりません、ということだけはわかってもらいたいと思います。
最後にまとめると、練習をいっくら精進しても、この2つの大きな目標を見失っているといい演奏家になり、それを継続させるのははっきりいって不可能です。 まず楽しくやること。 それから自己表現できること。 この2つを常にできるようになったら、技術レベルがどの程度であろうとも、今弾ける範囲のものを使っていい音楽を創れるようになるでしょう。
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投稿者 ari : 20:13
2008年6月13日
第14回 練習の目標(1) 楽しくやる
日本人は他の文化と比べると真面目によく練習するので一般的な技術レベルはは高いです。
でも何を目標に練習しているのか、というとそこはなかなか焦点が絞れてないことも多いです。 これは日米同じ。
練習することによって何を成し遂げたいのか。 これは人それぞれ、と言いたくなりますが、実は皆に共通する究極の目標というものはあります。
- 楽しく弾くこと
- 自由に自己表現できるようになること
この2つがそうです。
単純に聞こえますね。 でもよく考えてみると、これにそわない練習の仕方をしていることも多いということに気がつくと思います。 のでちょっとこの2つのテーマを掘り下げてみましょう。
1 楽しく弾くこと。
楽しくなかったらやってないよ、と言うかもしれません。 でも、弾いていて毎秒毎秒楽しいと本当に思いますか?
うまくなるために面白くもないエクササイズを繰り返してやったりしてませんか?
技術を向上させるには、物理的、機械的な練習をすることが効率いいかもしれません。 でも、やっていて楽しくない練習は即やめましょう。 そんなことをして技術を向上させても第2の目標にはつながりません。 その技術を使って本当に「音楽」をつくることに結びつかないでしょう。
ああ、でも「楽しい」という表現は正しくないかもしれません。 「充実感がある」という方が正確かな? やって達成感のあるものは、まあ正確には「これ楽しい!」と感じなくてもいい後味が残りますよね。 それはもちろんいいことです。
悪いのは例えば「プロになるにはこれくらいできないと」とかいう弾くことの本質から背いた目標を持っていて、それに合う基準(雑誌とか怪しげなとこからくるものが多いにも関わらず)に達するために自分にとって苦痛(精神的にも肉体的にも)な練習を強要すること。
で、やっていて「本当にうまくなってんのかよ」とか思って、しまいには向上が感じられず嫌になってしまうとか。
楽しくないことは続けられません。 無理して続けても必ずどこかでその無理がたたって持続できなくなります。 「プロになる」とか「あの人のように弾けないと」とかいう、いわゆる結果だけが目当ての目標は捨てましょう。
特にプロになることについていえば、プロになって続く人は、「プロになるほど好き」な人たちです。 要するに寝ても覚めてもギターきちがいで、金にならなくても有名にならなくても関係ない、ギターを弾いてられたらもうそれだけで幸せ、そういう人たち。
ヘタの横好き、といいますが、実は好きになることイコール上達することです。 好きでない音楽やエクササイズをやって上達しようとしてもできないんです。
練習本をやってフレーズを鵜呑みにしたりするのはこの最たる例。 どんなにたくさんフレーズを「記憶」したところで、楽しくやってなければ人の心を打つ音楽はできないです。
じゃあ逆にどうしたらいいのか。
あんまり考えすぎないで、とにかく弾いてて楽しいと思うことを弾いてればいいんです。 弱点を克服するとか、何ぞの基準に到達するとか、そんなことは気にせず、ひたすら弾いてて楽しいことを練習しましょう。
例えばスケール練習するにしても僕なんかはただのスケールは嫌いで、スケール練習を取り入れたエチュードというか、音楽として成り立つエクササイズが好きです。 ただスケールを上り下がりしているだけでは僕としてはその行為を音楽をつくるという行為の接点が見つけにくく、(もちろん頭ではわかってるんですが、感情レベルで)すぐ飽きてしまいます。 持続できませんし、うまくもなりません。 でも音楽として成り立つエチュードはいい曲を弾くという観点からみて面白いですし、やりがいがあります。
ただ勘違いしてもらいたくないのは持続しなくてもいいとか、行き当たりばったりでいいとか、気まぐれにその日その日の気分で弾いていいとかそういうことではありません。
肝心なのは、まず弾きたいと思うものをみつけて、それを弾くためにやってて楽しい練習の仕方をするということです。
例えばタッピングがしたかったら、どこかの教習本から見つけてきた無機質なエクササイズをするんでなくて、実際に曲の中で使われているフレーズを(理想的には耳コピで。でもこれもやっててイライラしたりとかするようだったら遠慮なく挫折して本を買ってみましょう)練習することをお薦めします。
英語や外国語を習うのとプロセスが似てるんです。 ここも一般の教育は機械的、というか本来自然な習得の仕方と逆なアプローチをすることが多いです。 すなわち、言葉を大量に覚えさせたら使えるようになるだろう、と勘違いしていること。
でも使い道もない単語を覚えるなんて、モチベーションを保つだけで膨大なエネルギーを使うんで、実際に身につけて使うというところまではほとんど到達しません。
逆に、言いたいことを見つけて、それに必要な単語を見つける。 これをやると一発で覚えられます。 何時間も参考書を見つめる必要ゼロ。
音楽も同じです。 弾きたいことを見つけて、それを練習する。 やってて楽しいことを弾く。 どこの偉い先生が勧めた練習法でも、やってて楽しくなかったら「これは自分には合ってない」と素直に認めて他のやり方を探しましょう。
うまくなるというのはプロセスですし、道が一本なわけでは決してないです。 大事なのは向上すること、持続させることで、結果全てではないです。 人生の目標全てについていえることですが、その目標を到達することがもたらす利益を目当てに目標選ぶんではなくて、その目標へ向かって邁進する、その過程が楽しくて充実している目標を選びましょう。 人生ってのは目的地で過ごすんではなくて、目的地へ向かう道で過ごすものですからね。 その道が楽しくなるようなアプローチをすると目を見張るほど前進しますよ。
日本人は「根性」とか「我慢」という美学があるので、苦しいこと、楽しくないことでもかなり許容できてしまいますし、社会の中にそれは人生にとって普遍的なものだという考えが浸透しています。 根性があり、我慢ができるということはいいことです。 (アメリカ人にもそう認識もらいたい思うことがしょっちゅうあります) でもこの考えが悪い方にも傾いてしまって、目標は到達が全てで道中は効率が第一とか、人生とは楽しいもんではない、とかいう結論に達している人も多いです。 これはでも歪んでいるばかりか、実は目標到達には全く逆効果なんですね。
これには練習時間も入ります。 どんなに楽しいことでもやりすぎると疲れてしまいます。 初心者は練習できる範囲が少ないので練習時間が短いのは当たり前。 誰それが何時間練習しているというから、とかいう理由で長時間の練習を強いるのはやめましょう。 楽しくなくなったらやめて、また次の日にすることにしましょう。 上達してきて、やってて楽しいことが増えたら、自然に練習時間も長くなります。 無理強いしないことです。
歯を食いしばって耐えなくてはいけないことはもちろんあります。 でもギターの練習はその一つであってはいけません。
楽しくないことは極力排除して、ひたすら楽しいことを弾きましょう。 ギターを弾いている時間の毎秒毎秒が充実感に溢れて満たされた体験であるように。 それが上達のコツでもあります。
これを読んで肩の荷が下りたと感じられる人も多いんではないですか? 要するに難しく考えすぎずに楽しく弾いてればいいんです。 プロになるとか、ロックスターになるとか、そういう結果は置いておいて、純粋に弾いてて楽しいことをやりましょう。
そうするとすぐにうまくなりますよ。
では次回はこの続きを。
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最後に、先日の秋葉原での悲劇についてちょっと。
ああ、日本でもおこっちゃったか、という気分ですね。
例のコロンバイン無差別殺人のような事件が。
全く残念、というか本当にやりきれない気分になりました。
悪循環に陥ってるようですからね。 悲劇がおきて、マスコミがあおればあおるほど、人々の頭の中にその恐怖心が植え付き、また不安定な人にはこういうことができるという可能性が芽生える。 そしてまた似たような事件が起こるというように。
加害者を正当化する気は毛頭ありませんが、しかし未来の加害者を未然に察知して癒してあげないとこれからももっと病んだ心は増えて、溜まった痛みの爆発が起きてしまいます。
社会問題とは、皆の身近な問題。 静かな人ほど内に秘めている感情は激しいということもあります。
あなたの周りにいる人に温かい声をかけてあげることが、亡くなった人々への弔い、また家族や友人を失った人々への励ましになるのでは、と思います。
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投稿者 ari : 14:06