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2008年5月30日

第13回 最近聴いている音楽

今回は趣向を変えて僕が最近聴いている音楽の話をしましょう。 日本では多分聞き慣れない名前もあるかと思うので。

Porcupine Treeはイギリスのプログレッシブ·ロックバンド。 リーダーのSteve Wilsonは僕の新しい「手本」とも言うべき人で、とにかくこのバンドだけでなく幅広く活動しています。 プロデューサー、ミキサーとしての手腕も高く評価されている他、Blackfieldといってイスラエルのミュージシャンとコラボしたプロジェクトだとか、とにかく多才な人です。 Porcupine Treeもソフトなボーカルとヘビーなリフとサイケデリックな雰囲気が色々とり混ざっていて聴いていて飽きないです。Porcupine Treeも始めてもう15年以上たっているんですが、最近国際シーンでブレークした感じですね。

In Flamesはスウェーデンのメロディック·デス·メタルの大御所。 彼らも15年以上やってます。 デス·メタルといってもシャウトだけでなくコーラスなどではメロディックなものが多く(特に近年の曲は)とっつき安いです。 そのヘビーなリフワークとエネルギッシュなドラムが支える曲がどれもこれもスピード感にあふれ、また悲壮的な雰囲気と内向的な歌詞も相まって、僕の好みに本当にピッタリなんですね。 

日本でも有名なDream Theaterですが、僕は最近発見しました。 どうも10年以上やってるバンドでないと好きにならないみたいで。(笑) 最新アルバムはいまいちですが、中期、現在のキーボーディストであるJordan Reudessが参加した後が好きですね。 ちょっと音数多すぎてだらけている感じがするところもありますが、全体としてはテクニックに振り回されることが比較的少なく、いい意味でスケールの大きい曲を書くことに専念しているという姿勢がとても共感できます。

こっちでは有名になってしまったバンドですが、Death Cab for Cutieも最近ようやく発掘しました。 彼らの一番の持ち味はあの痛いところついてくる切ない歌詞と雰囲気ですね。 僕は作詞家として尊敬しているソングライターは決して多くないですが、この人はすごいです。 この人の歌詞読んでいると僕も歌詞書きたくなります。

最後に、ちょっと暴露してしまうと、僕は音楽大好きなんですけど好きになる音楽は決して多くないんです。 聴く音楽90%以上は自分で持って何度も聴きたいと思わないですね。 これがミュージシャン業やってるとちょっとネックになってるんですが。 ミュージシャンと友達になっても、相手がやってる音楽を好きになることがほとんどないんですね。 なんでコラボとかお互いの音楽を宣伝するのに協力しよう、なんて話になっても嘘がつけないんです。 CDも聴かなくなったものはどんどん処分してしまうので持ってる数も100枚以下ですね、常に。 

他の人はもっとたくさん色々な音楽を好きになれるようで、自分もああだったらもっと便利だし、聴いてて楽しい音楽が簡単に見つけられていいのにな、と思うことがあります。

あ、もちろん「これはいいけど自分の好みではない」という音楽はたくさんあります。 自分の嫌いな音楽が全て悪いといってるわけでは決してないです。 才能やクオリティーを見極める能力と、自分の好みにあうかどうかという判断とは全く別ものだということです。

皆さんは最近何を聴いていますか?

ではまた次回。


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投稿者 ari : 19:12

2008年5月16日

第12回 群衆の中で

最近地元のラジオ局がいらないCDをただで配っているイベントがあったので参加してきました。

このラジオ局はかなり色々なジャンルの音楽をかけるので有名だったので、アーティストやプロモーター達から送られて来るCDもバライエティーに富んでいました。 しかしその数の多いこと! 数千枚のCD、それもほとんどが全く聴いたことのないアーティストばかりです。 ジャケットの好みで選ぶほかはありません。 幸いなことに3日間のイベントで、持って帰って聴いてみて、気に入らかったら返せばいいというので、試聴しまくった結果けっこう掘り出し物を見つけました。 

そんな中から得た教訓を今回は幾つか。

まず第一に、これだけの大量の音楽が氾濫している現代では、ジャケットやバンド名、アルバムの題名などだけで客の注意を惹こうというのはちょっと無理な話です。 相当に奇抜なものなら話は別ですが、でも奇抜であるということをアピールするとそういうものに興味があるお客しか聴いてくれませんし、見かけ倒れになる可能性もあります。 

それよりジャケットやデザインは、アーティストの音楽性のジャンル、個性を的確に反映したものであるべきだと考えます。 

例えばブルースのレコードだったらビンテージっぽいギターを抱えたアーティストの写真をジャケットに使うとか。 フォークだったら自然をモチーフに静かな感じのデザインにするとか。 テクノ系だったら無機質で機械的な印象、というような感じですか? 

アーティストが勝負するのは音楽ですから、ジャケットであんまり「形」から外れて、見ただけではどんな音楽か全く想像もつかないというのはどうかと思います。 デザインやイメージなどはマーケティングの一角ですから、ここで独創性を追求するのは「すでに確立されたジャンルの形式内で」ということにする方がいいと思います。

ただ思ったのは、ブルース、カントリー、フォークなどはかなり明確にどんなイメージやジャケットが期待されているのかわかるんですが、いわゆるアートロックはそれが非常に不明確だということ。 Nirvanaのジャケットなんかももしこれが聴いたこともないバンドだったらジャケットを見ただけではどんな音楽なのか見当もつかないと思います。 僕のCDもそうで、自分の音楽を視覚的に表現し、なおかつ独特のスタイルをつくるという点では成功したほうだな、と自己満足してるんですが、この「ジャケットを見ただけでは音楽性がわからない」というジャンル独特の弱点にも見事にはまってしまったような気がします。

あともう一つは、視覚的にこのアーティストはすでに「成功している」という雰囲気をかもしだすこと。 これはかけられるお金によるので自分のできる範囲でやるしかないんですが、それでも自主出版でもしっかりレコード会社としての名前をつくって、ロゴもつくって、意味がなくても商品に番号なんかつけたりして、情報の範囲だけではメジャーのCDと同じようにするといいと思います。 いかにも低予算で個人でやっているという感じがしてはそれだけで客の興味を失ってしまいます。 僕のポリシーとしては「嘘は駄目。 でもハッタリはOK」と考えています。 何でもかんでもバカ正直にやる必要はありません。 自分の商品もメジャーのものにひけをとらないと信じて、見かけも同じレベルの情報量でできるだけ「これはすでに成功しているアーティストの作品」というメッセージを世界に投影するべきだと思います。 

最後に思うのは、これだけ大量の音楽に面すると、どうしてもついつい「こんなたくさんある中から自分の音楽が頭角を表すのはとても無理だ」と考えてしまうこと。 

確かにCD屋さんなんかでごまんとあるCDの中から一枚、自分の音楽を見つけてもらうというのは無理な期待でしょう。

でも音楽の素晴らしいのは人によって好みが本当に多様化しているということ。 音楽ほど人それぞれ好みが違う芸術もないと思います。 「これはひどい」と自分で思っても隣の人は大好きであるということなんですね。 

音楽を追求するので大事なのはできるだけ多くの人、万人に好いてもらうことではなくて、自分の音楽を好きで好きでたまらないコアのファン層を、自分の活動を継続させていけるだけの数を見つければいいということなんですね。 独創性をしっかり煮詰めて、世界中で自分にしかできないという音楽がつくれるようになったら、後は一人一人ファンを見つけていけばいいんです。 

ですから現代の音楽のマーケティングへのアプローチは、Mass(全体)よりNiche(少数)へ焦点を絞った方向へと動きつつあります。 全国大ヒットを探すんではなくて、もっとマニアックなリスナーに訴えるわけですね。 

例えば略語でRIYLという言葉があります。Recommended If You Like の略で、要するに新人を売り込むときに「このアーティストが好きな人にお勧め」という風に伝えるわけですね。 で、このRIYLにはかなり有名なアーティストの名前を使うことが以前は多かったんですが、最近ではこの項に載っているアーティストの名前もマニアックすぎて聞いたことがない連中ばかり、ということが多いです。 でもあえてそうすることによって、多くのカジュアルな(熱心でない)ファンより少数の熱心なファンを獲得することができるわけですね。

やっぱり最終的に大事なのは、世界で唯一無二の音楽をつくること。それができたら、絶対この広い世界のどこかにはそれを好きになってくれる人々がいますから、そういう人たちを探し当てればいいんです。 簡単なことではないですけど、不可能でもないです。 現にそうやって活動を反映させているアーティストがいっぱいいるわけですからね。

機材の安価化により、これからより多くの音楽が世間に氾濫するようになるでしょう。 しかし、本当に独特の個性を確立しているアーティストは決して多くありません。 自分の信じている音楽を楽しく創りながら、じっくりとやっていけばきっと道は開けるもの、と僕は信じてやっています。

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投稿者 ari : 08:20

2008年5月 2日

第11回 自分に合った道

音楽を職業とすることの難しさは、学校や何かと違って到達する道がはっきりとひかれているわけではないこと。

「ミュージシャンになるコツ」みたいな本や成功の秘訣があればもっと多くの人がそれをやっているでしょうね。 でもそんなものありません。

日本みたいに学校が若者の成長を圧倒的に支配している社会では、この「自分の道を切り開く」という能力が育たないどころか、あっても潰されてしまうんですね。 人から与えられた基準を満たすよう努力し、人から与えられたスケジュールに自分を合わせる。

要するにいつも自分を外部に合わせて行動することが癖になってしまうんです。 ので、いざ自分で何かしなければいけないということになっても、何をしていいんだかわからない。 しかれたレールを走ることは得意なんですけど、自由がありすぎたり、選択肢が多すぎるとわからなくなってしまうんです。

でも難しく考えることはないんです。 考えすぎると見えなくなることもあります。 キーワードは「好きなことをやる。」

例えば、僕はパーティーが苦手なんですね。 でもロック業界にパーティーはつきもの。 業界のパーティーなんかでの出会いを元に人脈をつくっていくっていうのはいわゆる古典的なキャリアの築き方なんで、僕も最初の頃はこぞってパーティーに参加していました。 

でもやっていて楽しいわけではないし、人に会って話をしようとしてもやっぱりどこか無理があるんですね。 僕みたいに堅物で優等生タイプの人間がお酒とタバコをつまみに大物マネージャーとお近づきになってやろうなんてことできないんです。 そういう状況で会った人と何か仕事になった試しがありません。

逆に僕はコンピューターとインターネットが得意なんで、もう10年近く前からいつも自分のウェブサイトを持ってました。 メールの返事もしっかり丁寧にするし(こういうマメなケアはアメリカ人苦手ですね)。 なんで、これまでありついた仕事のほとんどは自分がきちんとしたウェブサイトを持っていたから、といっても過言ではありません。ので最近ではもうパーティーにいったりバーで知らない人に話しかけたり、ということはもうやってません。 もっぱらオンラインでの活動の集中してます。

ストレスになることを無理してやっても長続きしないし、いいことにつながることにはなりにくいんです。 ので、ミュージシャンになる道も、人それぞれ独特の道があるわけなんで、自分に合った道を見つけてそこに集中しましょう。 誰がどんなに「これやると効くぞ」といった手段を試してみても、合ってないことは結果につながりませんから。

色々試してみて、自分に合ったやり方を見つけましょう。 その積み重ねが、キャリアにつながりますから。

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投稿者 ari : 06:52