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2008年3月 7日
第7回 レストランの例え
先日ミュージシャンの友達とミュージックビジネスの話をしていた時です。 相変わらず皆が音楽業界の衰退を憂いているという話。 彼がこんなことを言いました。
「ミュージシャンは昔から自力でビジネスとして成功した経験がないんだよ。 だから企業が傾いている今、いざ自分で何かやろうとしてもどうしていいんだかわからないんだ。」
その時は気にとまっただけだったんですが、考えているうちに彼の言っていることはどうも的を得ているぞ、という気がしてきました。
みんな誰も自分が「ミュージシャンになる」というと「そんな無理なことを」と言われた経験があると思います。
でもこの観念についてちょっと考えてみましょう。
例えば料理がとてもうまい知人がいるとしましょう。 料理が大好きで、いつも誰に頼まれなくても料理ばかりしている人。 この人が「将来レストランを開ける」といった場合、「そんな無理なことを」と考えますか?
レストランを起業し、運営するのにはまず第一においしい料理を作れるという大前提があると思います。
でもそれだけではやっていけないでしょう。 レストランといっても自営業ですから、それなりに営業や財務、宣伝などやらなくてはいけません。 料理がうまくても自営でやっていくビジネスのノウハウがないので、他で雇われて食べていく人も多いでしょう。
でもそういったビジネス関係の面も含めて自分の店を持つということに生きがいを感じ、成功する人も多いと思います。 それは決して不可能なことではありません。
ただ料理するだけでは駄目だ、ということに気付くことが肝心なだけです。
ミュージシャンについても同じことがいえると僕は思ってるんです。 今までは大企業に雇われて、いわゆるサラリーマンのように作品を会社に提供して会社の利益を分けてもらうというやり方がアーティストとしてやっていく唯一の方法のように思われてきました。
でも肝心の企業は大手は数社しかないし、応募する数も多く、その中から企業のバッキングを得てヒットする人は少数。 かなり運任せですし、宝くじをひくように頼りない夢であるといわざるをえません。
ならば思考を変えて、ミュージシャンもレストランのように自営で、こじんまりとでもいいから音楽企業を運営してみればいいんではないか、というのがここ数年英語圏では浸透している考えなんですね。 完全自営でなくても小さなインディーレーベルとアーティストが共同してビジネスを運営していくという形。
どっちにしてもミュージシャンに迫られているのはビジネスのノウハウ。 これまでミュージシャンが他力本願でやってきて、あまり前例のない自営という形での活動を展開させようとしているわけですから、成功例よりも失敗例の方が圧倒的に多いのも無理ないと思います。
例えばレストランの運営のための本とか教材はあるでしょうけど、ミュージシャンのためにそういうものがあるか、というと、「こうすれば食べていける」という形がまだはっきりしてないのでないわけです。 いや、そういう情報は英語圏にはごまんとありますけど、でもそれを実践できているミュージシャンはまだまだ少ないし、成功例が少ない分その情報もあてにならないように感じられているわけです。
でも英語圏ではだいぶ形が見えてきたというのが僕の持論です。 まだ僕自身もその途上なのではっきりいえないんですが、将来今のやり方が何か形になったらもちろんそのときは他の人にそのノウハウを伝えたいとは思っています。
勘違いしてほしくはないので念のため書いておきますが、僕はレーベルと契約することとかメジャーでヒットを飛ばすことが悪いやり方だといっているわけでは決してありません。
ただ他にも音楽を創って生きていくやり方はあるんじゃないか、といっているだけです。 料理が好きな人が自分でレストランを開業して食べていけるように。
希望をもってやりましょう。
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投稿者 ari : 2008年3月 7日 08:06