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2008年2月 7日

第5回 焦点を絞る

こちらの音楽業界でよく言われることに、自分の音楽の名称をはっきりさせなさい、ということがあります。

短くて簡潔であればあるほどいいんですが、とにかく一文で自分の音楽をはっきり言い表せるようにしておくこと。

これが意外と難しいんです。 また日本ではどうだか知りませんが、こちらではそうやって自分の音楽を定義してしまうことを嫌うミュージシャンもいっぱい。

「音楽に名前やレッテルなんてつけないのさ」とかいうんですよね。 確かにそれが格好よくきこえるのもよくわかります。

でも何でそうしなければいけないのか、僕の自分の経歴を例えに考えてみましょう。

僕は大学を出てからここ10年間、音楽でできる活動は何でも手当たり次第やってきました。 大学はクラシック専攻で、その後はギターの先生をやり、採譜の仕事をやり、音楽用のコンピューターをセットアップしたり使い方を教えることをやり、シンガーソングライターとしてアコギ抱えてソロのギグやってみたり、雇われギタリストやキーボード奏者としてサポートやったり、最後はレコーディングのプロデュースや映画作曲も。

幅が広くやってると評価されると思っていたという点もありますけど、要するはどれをやってもすぐ行き詰まっていたんで方向転換していったらこういう経歴になってしまったというのも本音。 

で、自分のことを一概に作曲家だとかギタリストだとか呼べないので、自分のことを総じて「ミュージシャン」だと言ってきました。 

でもそうすると必ず聞かれるんですよ。 「いったいどんなミュージシャンなの? 楽器は何を弾くの?」と。

聞かれる度に幅広く活動しているんだと説明するんですが、しかし今イチ伝わらないというか理解してもらえてないなというのは僕も感じていました。

従来にない形の活動だと理解してもらえないというのもわかります。 でもこちらのことわざで、"Jack of all trades, master of none"という言い回しがありますが、要するに広く浅くやる人は何もちゃんと身に付かないという意味合い。 活動を展開させるにしても、実は焦点というか基盤がどこにあるのかしっかりさせないと何も実にならないということなんですね。

自分の音楽を簡潔に言い表せるようになれ、というのも理解しやすくコミュニケーションするという意味合いもありますが、それ以上に大事なのは自分の独創性、個性をはっきり確立させろということなんだと考えるようになりました。

ただの「ロック」では幅が広すぎて掴みようがないんです。 創ってる人にとっても、聴いている人にとっても。 広く浅くではなくて、自分で一番思い入れがあるところを見つけて、そこに全てを賭ける。 それで成功したらその後少し視野を広げてもいいわけなんです。

僕もこれは意図的な変化ではないんですが、昔と比べると実は書きたいと思う曲のスタイルがだいぶ狭くなってきました。 前はアコギベースのフォークもあり、ブルースみたいのもあり、と色んなスタイルの曲を書いていたんですが、最近はやっぱりヘビーでアップテンポでなおかつちょっと複雑なロック。 メタルというジャンルには入らないんですが、そこからの影響も多大にとりいれた攻撃的な音楽が自分の一番やりたい音楽なんだという結論に達してきたわけです。 ギターもアコギとエレキ両方ではなくて、メインはあくまでもエレキ。 

今イギリスで売り出し中のバンドで、Pocupine Treeというのがいますが、彼らはいわゆるプログレシッブロックで、複雑な楽曲と多彩な影響をとりいれた音楽をやっています。 僕もわりとひねりのきいている楽曲が好きなものですから、これから書く曲達は彼らと似たような路線にいきそうだな、と考えて、彼らがどういう活動をしているのか興味津々に観察しています。 他にはDream Theater, In Flames, System of a Down, Smashing Pumpkins などを聴いています。 物語性の濃い音楽にも多いに興味がありますし、ファーストアルバムは比較的短い曲中心なのでまだ使えないレッテルなんですが、自分の音楽をモダンプログロックとか、ネオプログロックとか呼ぼうかな、なんて考えています。 

とにかく音楽的に焦点が絞れたので今後の活動もより積み上げの効くものになりそうだ、と期待しています。

PCIの読者の皆さんはどんな音楽を極めたいと思っていますか? 自分のスタイルを誰かに説明しろ、と言われたら数語でできますか? 一度考えてみると面白いかもしれませんね。

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投稿者 ari : 2008年2月 7日 19:07